小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

2023-01-01から1年間の記事一覧

ニルセビマブの有望な効果: RSV関連下気道感染からの入院を減少させる

" data-en-clipboard="true"> 今週号のNEJMに、ニルセビマブの臨床試験の結果が掲載されました。ニルセビマブは、次世代のRSウイルスに対するモノクローナル抗体です。 " data-en-clipboard="true"> これまで、RSウイルスのモノクローナル抗体は、パリビズマ…

非結核性抗酸菌でコッホ現象が起きるのか?

日本の結核有病率の低下とともに、乳幼児の結核は激減しています。個人的にも、乳幼児の活動性結核は2例くらいしか見たことありません。 一方で、BCG接種後1週間以内に、接種部位が発赤したり化膿したりする現象を、コッホ現象といい、結核感染を示唆する所…

群馬大学での新生児のメトヘモグロビン血症集団発生の報告

2021年に群馬大学で起きた新生児のメトヘモグロビン血症集団発生の報告がNEJMで発表されました。厚生労働省などのHPでは公開されていますが、このように世界に向けて発信されたのは、素晴らしいです。筆頭著者の先生もよく存じ上げていますが、おめでとうご…

K. oxytocaによる抗菌薬関連下痢にも便移植(FMT)が有効

Klebsiella oxytocaは、腸管内の常在菌ですが、抗菌薬関連下痢症を起こすことがあります。抗菌薬関連下痢といえば、C. difficileが有名ですが、K. oxytocaもあります。C. difficileについては、難治例では、便移植療法(FMT)が確立してきているが、K. oxytoc…

Gram陽性連鎖球菌ごとの感染性心内膜炎(IE)リスク

感染症科をやっていると、血液培養から、いろいろな菌種が出てきた患者さんを見ます。しかし、血培陽性になった日に、菌の名前は分からないので、分からないなりに菌を推定して、治療を考えます。 Gram陽性ブドウ球菌→黄色ブドウ球菌かCNS、バンコマイシン追…

ピペラシリン・タゾバクタムの腸内細菌科細菌へのbreakpointが厳しくなりました

抗菌薬が、検出された細菌に有効かどうかの判定には、S(感性)、I(中間)、R(耐性)で行われます。最小発育阻止濃度(MIC)を測定する事で、そのMICが基準を超えているかで判断します。 感受性の判定基準として最も一般的なものは、米国のCLSIが定義するも…

アンチバイオグラムは個々の患者の薬剤耐性菌の予測には使いにくい

" data-en-clipboard="true"> 以前に亀田総合病院で勤務されていた長谷川先生(現在、アイオワ大学の感染症科)の論文です。おめでとうございます! " data-en-clipboard="true"> アンチバイオグラムは、個々の病院ごとに、ある菌に対する抗菌薬耐性の割合が…

先天性CMV感染症の神経学的合併症のバイオマーカー

" data-en-clipboard="true"> サイトメガロウイルスは、先天性感染の中でも有病率が高く、神経学的後遺症が多い感染症です。生まれたときには無症状でも、成長するにつれて、異常が明らかになることがあります。ついに、先天性サイトメガロウイルス感染に対…

先天性感染の略はTORCHではなく、SCORTCH(スコーチ)!

妊婦の感染症が臍帯を通じて胎児に感染することがあります。有名なのは、先天性風疹症候群で、先天性心疾患、白内障、小頭症などの重篤な先天性の障害が起きますし、流産・死産になることもあります。他にも、トキソプラズマ、その他others、風疹、サイトメ…

副腎不全ではCRPがかなり上昇する

" data-en-clipboard="true"> 不明熱の鑑別診断に、「副腎不全」があります。体内のステロイドホルモンが不足することにより、低血圧、低血糖、低Na血症などを来します。特に、体に強い侵襲が加わったときには、普段より多くのステロイドが必要になるので、…

コロナ感染で胎児内蔵逆位が増加する?

" data-en-clipboard="true"> 中国から気になるデータが出ました。 " data-en-clipboard="true"> 中国は、2022年末に”ゼロコロナ政策”をやめて、その後、ものすごい数のCOVID-19感染者を出しました。その頃に、妊娠したと思われる胎児の内蔵逆位が、例年の4…

新型コロナウイルス感染症の小児における感染性期間

" data-en-clipboard="true"> ちょっと、また記事を書く間隔が空いてしまいました。 " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> 新型コロナウイルス感染症が、感染症法上の分類が5類になって以降、以下のような療養期間が社会的に受け入れら…

子宮留膿腫は小児では非常に稀な疾患

" data-en-clipboard="true"> 子宮留膿腫は、高齢女性や産褥婦で時々経験したことがあります。小児では、非常に稀な疾患ですが、それには、血中エストロゲン値も関連するそうです。 " data-en-clipboard="true"> 実は、小児の症例報告は英文では10例ちょっと…

GBSをワクチンで予防する時代がもうすぐ

" data-en-clipboard="true"> B群溶血性連鎖球菌(GBS)は、新生児に菌血症や髄膜炎を起こす菌です。新生児が出生の時に母が保菌するGBSを保菌してしまうと、GBS感染症を発症することがあるので、最近では、保菌している母親に対して、出産時に抗菌薬投与する…

Pott's puffy tumor:稀だけど知っておきたい副鼻腔炎の合併症

Pott's puffy tumorは、見た目が印象的な疾患です。↓こちらに成人の症例報告があります。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkotokeibu/125/5/125_892/_pdf/-char/ja " data-en-clipboard="true"> 多くは、副鼻腔炎が進行して、前頭骨が骨髄炎にな…

キノロン予防投与中の緑膿菌菌血症にはメロペン耐性が多い

" data-en-clipboard="true"> 成人領域では、白血病で骨髄抑制中や造血幹細胞移植後の患者に対してキノロンの予防投与を行うことが比較的よくあります。小児ではキノロンは基本的に禁忌ですが、海外の文献では小児への予防投与もよく見かけます。 緑膿菌は、…

小児の急性副鼻腔炎の初期治療薬はアモキシシリンで十分

" data-en-clipboard="true"> 小児科外来をしていると、アモキシシリン(商品名:ワイドシリン、サワシリンなど)は、最も重要な抗菌薬です。それは、中耳炎、肺炎、咽頭炎(溶連菌)などの気道感染症の第一選択薬になるからです。 " data-en-clipboard="tru…

シナジスを全小児に接種したら?

" data-en-clipboard="true"> パリビズマブ(シナジス)は、RSウイルスに対するモノクローナル抗体製剤で、RSV感染症の予防になります。高価な薬剤であること、1ヶ月に1回の接種が必要なことから、対象は早産児や心臓や肺疾患を有する小児に限られます。 " d…

未熟児にとってプロバイオティクスは善か悪か?

腸内環境を整えることが、最近(?)話題です。ヨーグルトや乳酸菌飲料など色々なものにプロバイオティクスが含まれ、健康に良いと言われています。私も、下痢の子に、色々なプロバイオティクス製剤を処方しますが、その効果はすごくあるとは言いませんが、…

小児のカンジダ血症、施設により追加する検査はまちまち

" data-en-clipboard="true"> カンジダ血症は、治療が大変な疾患の一つです。もともとの基礎疾患が重篤な患者さんに起きやすい(血液腫瘍、短腸症候群、先天性心疾患など)です。かつ、全身臓器にカンジダが播種して、眼内炎や肝膿瘍・脾膿瘍を形成したりし…

デング熱の皮疹はislands in a sea of red

デング熱の回復期の皮疹 有名なんだけど、NEJMに載るほどかな…。 症例 23歳の女性。前日から、そう痒感を伴う発疹が出現し、救急外来を受診した。5日前、発熱、悪寒、筋肉痛、嘔気、食欲不振、後眼窩頭痛が認められた。症状は4日間続き、来院前には軽快した…

新型コロナ感染と小児1型糖尿病(膵島抗体陽性)は関連している

" data-en-clipboard="true"> 新型コロナウイルス感染は、その後、SLEなど色々な自己免疫疾患を発症するリスクを高くするという論文が増えています。感染後に、抗核抗体の陽性率が上昇するという論文もあります。 " data-en-clipboard="true"> pubmed.ncbi.n…

小児COVID-19で重症化する患者の特徴

" data-en-clipboard="true"> 新型コロナも、オミクロン株の派生型が流行するようになり、患者数が増えるものの、小児の重症化は少ないように感じます。特に、多系統炎症性症候群(MIS-C)はどこに行ってしまったの?というくらい見ていません。 " data-en-c…

小児は年間何回くらい風邪をひくのか??

" data-en-clipboard="true">「 子供は、1年間に何回くらい風邪をひいて、その原因は何か?」 " data-en-clipboard="true">プライマリ・ケアに関わる小児科医なら知りたい疑問ですが、なかなか答えがありません。非常に古い研究ですが、1年間に5−8回くらいと…

心臓外科手術のSSI予防は、閉創時の抗菌薬血中濃度が重要

" data-en-clipboard="true"> 外科手術を行う際には、皮膚切開の前に予防的抗菌薬を投与します。皮膚切開を行う時に、血中濃度が十分に高ければ、そこから創部に菌が入らないという理屈です。心臓外科手術後の創部感染(SSI)は、縦隔炎や胸骨骨髄炎など重篤…

小児へのプロトンポンプ阻害剤(PPI)の使用は、重症感染症のリスクを増加させる

プロトンポンプ阻害剤(PPI)が、Clostridioides difficile感染症の原因になることは有名ですが、その他にも色々な弊害があることが示唆されています。 これまで、小児では、PPIと骨折・急性腎障害・アレルギー・喘息・炎症性腸疾患との関連が指摘されてきま…

膀胱尿管逆流の小児への抗菌薬予防投与は、尿路感染の発生を減らす

" data-en-clipboard="true"> 乳児期早期の発熱の原因として、尿路感染症(UTI)はとてもメジャーな原因です。尿路感染→エコーで水腎症→膀胱尿管逆流→予防的抗菌薬というのが、小児科医がUTIを見た時の思考パターンです。 " data-en-clipboard="true"> UTIを…

クループは冷たい外気を吸い込むと症状が緩和される

クループ症候群は、夜間の救急外来受診でよく見る病気です。突然、「犬が鳴くような」、「オットセイの鳴き声のような」咳が出て、受診します。(大抵、日付が変わるくらいの時間が多いです。) デキサメタゾンというステロイド投与とエピネフリン吸入で対応…

バクテリオファージ療法は、薬剤耐性菌への治療法になる?

" data-en-clipboard="true"> 今、世界中で薬剤耐性菌が増加しています。抗菌薬が殆ど効かない菌(多剤耐性菌)が増加すると、感染症の治療が困難になります。そんな多剤耐性菌の気道感染が頻発する病気が嚢胞線維症(cystic fibrosis)です。国内では非常に…

口蓋裂の手術は生後6ヶ月が生後12ヶ月よりも良い

" data-en-clipboard="true"> 今回は、感染症とは関係のない小児科の話題です。口蓋裂は、比較的よく遭遇する疾患で、当院でも形成外科で多く手術されています。手術時期については、あまり詳しくなかったのですが、ベストなタイミングについて意見が割れて…