小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

2019-01-01から1年間の記事一覧

成人の結核予防のワクチンの有効率は49.7%

Final Analysis of a Trial of M72/AS01E Vaccine to Prevent Tuberculosis N Engl J Med. 2019;381:2429-39. 成人向けの結核ワクチン(不活化)の臨床試験です。 M72/AS01Eは、Mycobacterium tuberculosisから精製した2種類のタンパク Mtb32AとMtb39Aにアジ…

1週間に1回の抗菌薬交互投与(WOCA)は神経因性膀胱患者の尿路感染を減らす

Weekly sequential antibioprophylaxis for recurrent UTI among patients with neurogenic bladder: a randomized controlled trial. Clin Infect Dis. 2019 Dec 23. pii: ciz1207. doi: 10.1093/cid/ciz1207. [Epub ahead of print] 脊髄損傷による神経因…

新生児のEdwardsiella tarda菌血症は、髄膜炎の除外が必須

Edwardsiella tarda bacteremia, Okayama, Japan, 2015-2016. Emerg Infect Dis. 2019;25(10):1817. 分娩時の母子感染によるEdwardsiella tardaにより多発脳膿瘍および脊椎膿瘍を来した新生児例 大阪母子医療センター雑誌 2017:33(1):27 Edwardsiella tarda…

エボラウイルス感染症の死亡率を低下させるモノクローナル抗体製剤の報告

A Randomized, Controlled Trial of Ebola Virus Disease Therapeutics N Engl J Med. 2019;381:2293 エボラウイルス感染症に対する治療のRCTです。 この研究は2018年8月のコンゴ民主共和国でのアウトブレイクの際に実施されました。 4種類の研究的な治療を…

米国のクリニックで処方される抗菌薬の76%が不適切使用

Prevalence of Inappropriate Antibiotic Prescribing in Primary Care Clinics within a Veterans Affairs Health Care System Antimicrob Agents Chemother. 2018 Jul 27;62(8). pii: e00337-18. doi: 10.1128/AAC.00337-18. ​​米国退役軍人のヘルスケアシ…

極低出生体重児の敗血症は、神経発達障害のリスクになる

Short- and Long-Term Neurodevelopmental Outcomes of Very Preterm Infants with Neonatal Sepsis: A Systematic Review and Meta-Analysis. Children (Basel). 2019 Dec 1;6(12). pii: E131. doi: 10.3390/children6120131. 在胎32週未満、出生体重1500g…

急性発症の血管漏出を病態とするClarkson症候群は重篤で注意が必要

Eur J Pediatr. 2018 Aug;177(8):1149-1154. doi: 10.1007/s00431-018-3189-8. Epub 2018 Jun 23. Idiopathic systemic capillary leak syndrome (Clarkson syndrome) in childhood: systematic literature review. Clarkson症候群は、1960年に初めて報告さ…

小児敗血症の起炎菌に関する大規模データ(米国)の解析

Bacterial and Fungal Etiology of Sepsis in Children in the United States: Reconsidering Empiric Therapy Crit Care Med. 2019 Nov 27. doi: 10.1097/CCM.0000000000004140. [Epub ahead of print] 小児のsepsisのの原因微生物の頻度をい明らかにするた…

病棟の改築工事ではセレウス菌アウトブレイクに注意が必要

A Cluster of Bacillus cereus Infections in the Neonatal Intensive Care Unit Pediatr Infect Dis J. 2019;38:e301 NICUにおけるBacillus cereus感染症のアウトブレイクの原因は隣接する病棟の工事だった B. cereusは、免疫不全者に重篤な菌血症(時に脳…

小児救急外来の感染症治療薬(高崎市医師会講演)

先日、高崎市医師会の先生向けにお話しました内容のダイジェスト版です。 BLNARでもABPC高用量で治療できる割合が多いことなど、とても勉強になりました。 インフルエンザやAMR対策のことは、他のレクチャーでも触れましたので、かなり省略しています。 driv…

静岡県民の夢敗れる…

昔、静岡に住んでいる時に、掛川の学校では、蛇口からお茶が出るとニュースでやっていました。確か、校長先生が、インフルエンザの予防もバッチリとか言っていた気がしましたが…。(元)静岡県民待望の、研究結果ですが、残念な結果になりました。 緑茶でう…

インフルエンザの予防は「まず手洗い・マスク」ではない

Effectiveness of personal protective measures in reducing pandemic influenza transmission: A systematic review and meta-analysis Epidemics. 2017;20:1 手洗いとマスク着用はインフルエンザの予防として有効か? 2009年のパンデミックインフルエンザ…

抗菌薬が殺菌性か静菌性は大して意味がない

Busting the Myth of “Static vs Cidal”: A Systemic Literature Review Clin Infect Dis. 2018;66:1470 殺菌性抗菌薬(bacterriocidal)は静菌性抗菌薬(bacteriostatic)よりも治療効果が高い考えられがちである。1985年以降に発表された56のRCT研究の結果をレ…

イチゴ舌についての考察

The strawberry tongue: What, how and where? Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2018;84:500 イチゴ舌について、ここまで濃厚に語った論文があったであろうか(いいや無い)。 (インドらしい?)熱くて濃い論文です。 以下が要約です (1)イチゴ舌と…

Nuss法漏斗胸手技研究会で手術部位感染症に関して講演しました

Nuss法漏斗胸術後の発熱と感染症に関して講演をさせていただきました。 講演資料の一部を公開させていただきます。 drive.google.com

抗菌薬 choosing wisely (講演資料の一部)

講演の資料の一部を公開させていただきます。 今回は、AMRの現状と抗菌薬の使い方の原則の他に、 多職種(看護師、薬剤師、検査技師)がどのように抗菌薬適正使用に関われるかについて、お話をさせていただきました。 drive.google.com

マイコプラズマ感染症では、ミノサイクリンは最強?トスフロキサシンは微妙…

今日もマイコプラズマ関連です。 【要点】 ・マクロライドに感受性のあるマイコプラズマ感染では、どの抗菌薬も有効 ・マクロライド耐性マイコプラズマ感染では、ミノサイクリンが有効だが、トスフロキサシンは微妙(マクロライドと差がない) Therapeutic e…

マイコプラズマによる多形滲出性紅斑(EM)は非典型的で、全身に広がることが多く、粘膜病変の数が多い。

Clinical and histologic features of Mycoplasma pneumoniae-related erythema multiforme: A single-center series of 33 cases compared with 100 cases induced by other causes J Am Acad Dermatol. 2018;79:110 マイコプラズマ感染による多形滲出性紅…

日本のマクロライド耐性マイコプラズマは減少傾向

Macrolide-Resistant Mycoplasma pneumoniae Infection, Japan, 2008-2015 Tanaka T, et al. Emerg Infect Dis. 2017;23(10):1703 日本におけるマイコプラズマのマクロライド耐性の傾向を分析した研究です。 2012年には、全国で81.6%がマクロライド耐性でし…

悪寒戦慄の有無により菌血症のリスクが変わる

The degree of chills for risk of bacteremia in acute febrile illness. Am J Med. 2005;118:1417. 新しい論文ではないですが、有名な論文です。 症状から菌血症のリスクをこれだけ見積もれる。 もはや伝説と言って良い、悪寒戦慄と菌血症の関係の論文。 …

新生児期の消化管手術は、非IgE依存性の食物アレルギー発症のリスクが高まる

Neonates undergoing gastrointestinal surgery have a higher incidence of non-IgE-mediated gastrointestinal food allergies Pediatr Surg Int. 2018;34:1009. 新生児期の消化管手術は、非IgE依存性の食物アレルギー発症のリスクが高まる 新生児期に消化…

皮疹(手足の落屑)・肝脾腫のある敗血症では先天梅毒を疑う

新生児の先天梅毒と他の細菌による敗血症は臨床像がかなり異なる Differences between congenital-syphilis presenting as sepsis and neonatal sepsis A case-control study Medicine (Baltimore). 2019;98(44):e17744. 新生児の先天梅毒は、敗血症として発…

遂に出ました。小児の化学療法・造血幹細胞移植における抗菌薬予防投与ガイドライン(IDSA)

Guideline for Antibacterial Prophylaxis Administration in Pediatric Cancer and Hematopoietic Stem Cell Transplantation IDSAから小児の悪性腫瘍と造血幹細胞移植に関する、抗菌薬予防投与のガイドラインのドラフト版が出ました。 推奨の概略です (1…

小児マイコプラズマ肺炎の診断は、年齢・長引く発熱・気道症状・プロカルシトニン低値が特徴

Improved diagnostics help to identify clinical features and biomarkers that predict Mycoplasma pneumoniae community-acquired pneumonia in children Clin Infect Dis. 2019 Oct 26. pii: ciz1059. doi: 10.1093/cid/ciz1059. [Epub ahead of print] …

Fontan術後の口腔内カンジダの治療オプション

治療選択肢が少し難しいです。 今までは、こういった背景のない口腔内カンジダには、 なんとなくフロリードゲルやイトリゾール内服液を使用しました。 (米国で使用されるナイスタチン、クロトリマゾールは日本では口腔内に使用できる製剤はないです。クロマ…

小児の口腔カンジダ症 thrushのまとめ UpToDate

小児の口腔カンジダ症 thrush 乳児によく見られる疾患である。抗菌薬、ステロイド(内服と吸入)、化学療法、放射線療法がリスク因子になる。HIVなどの免疫不全症候群でも見られる。 病型は、大きく3つになる。 1.鵞口瘡(pseudomenbraneous oropharyngeal…

早すぎるインフルエンザワクチン接種も良くないかもしれない

早すぎるインフルエンザワクチン接種も良くないかもしれない Intraseason waning of influenza vaccine effectiveness Clin Infect Dis 2019;68(10):1623 北カリフォルニアで実施された研究です。不活化インフルエンザワクチンを接種された人(小児と成人)…

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、ギラン・バレー症候群(GBS)の発症をわずかに増やす可能性はあるが、他の自己免疫疾患の増加は起きない。

Human papillomavirus vaccination and the risk of autoimmune disorders: A systematic review and meta-analysis Vaccine. 2019;37:3031 フランスの200万人以上の女性について、HPVワクチンを接種した後の、自己免疫疾患の発症を、非接種群と比較したstud…

小児の急性心筋炎UpToDate要約

【序文】 心筋炎は、様々な原因により引き起こされる心筋の炎症であり、多くは感染が原因である。患者は、様々な症状を呈し、ほとんど自覚症状のないものから心原性ショック・不整脈・突然死を起こすこともある。 【原因】 心筋炎の原因は、感染症、中毒、自…

卒後25年以上の家庭医は、抗菌薬の処方期間が長い

Late-career Physicians Prescribe Longer Courses of Antibiotics Clin Infect Dis.2019;69:1467 抗菌薬の処方期間は、ガイドラインで定められた期間より長くなりがちである。処方期間がばらつく理由がはっきりすれば、適切な抗菌薬使用につながることが期…