小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

ニルセビマブの有望な効果: RSV関連下気道感染からの入院を減少させる

 今週号のNEJMに、ニルセビマブの臨床試験の結果が掲載されました。ニルセビマブは、次世代のRSウイルスに対するモノクローナル抗体です。
 これまで、RSウイルスのモノクローナル抗体は、パリビズマブ(シナジス)が使用されていましたが、毎月接種が必要であることから、かなり大変でした。
 ニルセビマブは、半減期を大幅に延長したこと、対象となる抗原タンパクを変えたことで、よりRSウイルスへの親和性が増して、効果が期待できます。
 これまで、RSウイルス感染が重症化しやすい早産児を対照にした試験はありましたが、今回は、満期産児を含むデータです。比較的重症化しにくい集団ですが、RSV関連の入院を減らし、最重症となる患者を減らしました。
 日本でも早く導入が待たれます!!
 
Nirsevimab for Prevention of Hospitalizations Due to RSV in Infants
N Engl J Med 2023; 389:2425-2435
 
背景
 モノクローナル抗体ニルセビマブを健常児に投与した場合の安全性とRSウイルス関連下気道感染症による入院予防効果は不明である。
 
方法
 本研究では、フランス、ドイツ、英国において、生後12ヵ月以下で、在胎週数29週以上で出生し、最初のRSV流行期を迎える乳児を対象に、RSV流行前または流行中にニルセビマブ単回筋注を受ける群と標準治療(介入なし)群に1:1の割合で無作為に割り付けた。主要エンドポイントは、RSV関連下気道感染による入院症例とした。重要な副次的エンドポイントは、最重症RSV関連下気道感染とし、RSV関連下気道感染にで酸素飽和度が90%未満で酸素投与が必要である症例と定義した。
 
結果
 合計8058例の乳児が、ニルセビマブ投与群(4037例)と対照群(4021例)に無作為に割り付けられた。ニルセビマブ群では11例(0.3%)、対照群では60例(1.5%)の乳児がRSV関連下気道感染症で入院した。ニルセビマブの有効性は、83.2%であった(95%CI、67.8~92.0;P<0.001)。最重症のRSV関連下気道感染は、ニルセビマブ群で5例(0.1%)、対照群で19例(0.5%)に認められた。ニルセビマブの有効性は、75.7%(95%CI,32.8~92.9;P=0.004)であった。RSV関連下気道感染による入院に対するニルセビマブの有効性は、フランスで89.6%(95%CI、58.8~98.7;P<0.001)、ドイツで74.2%(95%CI、27.9~92.5;P=0.006)、英国で83.4%(95%CI、34.3~97.6;P=0.003)であった。有害事象は、ニルセビマブ群の86人(2.1%)に認められた。
 
結論
 ニルセビマブは、乳児のRSV関連下気道感染による入院および最重症RSV関連下気道感染を予防する。