小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

オミクロン株に感染した小児の臨床像

 新型コロナウイルスの変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)が流行した第6波以降、COVID-19に対応する医療現場は変わってきています。テレビの報道などでも、重症化する患者が減り、重症用ベッドが足りないということは無くなり、軽症例の割合が増加しています。オミクロン株による重症化率がやや低い傾向はあるものの、国内のワクチン接種が進んでいることも一因です。
 小児の新型コロナウイルスを対応している当院でも、臨床の景色が変わりました。まず、小児患者数が特に増えました。もちろん成人も第6波では、最多の感染者数を更新しましたが、小児の割合が明らかに増えました。これは、小児にワクチン接種が進んでいないことが主な理由と思います。オミクロン株に感染した小児では、咽頭炎などの影響で、飲水が困難になり、補液が必要な患者が増加しています。
 
 今回紹介する研究は、2022年2月時点で、米国のデータベースに登録された症例から、オミクロン株とそれ以前の流行で、患者の症状に差があるかを見たものです。
 
ポイント
・オミクロン株の流行により、「上気道感染」で入院する症例が増えている
・オミクロン株で入院する患者の年齢が若い。
・オミクロン株にでは、重症化率が低い、ステロイド投与・抗菌薬投与される割合が低い。
 
 
Acute Upper Airway Disease in Children With the Omicron (B.1.1.529) Variant of SARS-CoV-2-A Report From the US National COVID Cohort Collaborative 
JAMA Pediatr . 2022 Apr 15;e221110.
 
 SARS-CoV-2の変異株B.1.1.529系統(オミクロン株)は、下気道で有効に増殖できないため、デルタ株より重症度が低いとされる。本研究では、米国のNational COVID Collaborative (N3C)のデータを用いて、18歳以下の小児を対象として、上気道感染と診断されたCOVID-19症例の解析を行った。オミクロン株の流行前後を比較した。
 
 2022年2月17日時点で、18,849名の小児の入院症例が登録されていた。うち、384例(2.0%)が上気道感染と診断されていた。81例(21%)が重症であった。オミクロン株流行期に、SARS-CoV-2陽性の上気道感染症例は増加した(1.5% vs. 4.1%)。UAIと診断された小児は、オミクロン株流行期には、より低年齢で、ヒスパニック系・ラテン系の人種が多かった。デキサメタゾン投与例は少なく、重症化する割合も低かった。複雑な慢性基礎疾患を有している症例の割合は、有意差がなかった(36% vs. 22%)。
 
 SARS-CoV-2陽性の上気道感染は、オミクロン株流行期に増加した。しかし、オミクロン株による重症化率は低い傾向にあった。
 
 
オミクロン前
オミクロン後
上気道感染で入院する割合(%)
206/14,473
(0.2%)
178/4376
(4.1%)
<.001
女児(%)
38.3%
29.8%
.72
平均年齢(SD)
4.4 (4.5)
2.1 (2.1)
<.001
36.4%
21.9%
<.001
抗菌薬
38.8%
<11%
<.001
中等症
63.6%
96.6%
<.001
重症
38.8%
<11%
<.001

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov