小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

2021-01-01から1年間の記事一覧

全患者に手袋・ガウンを装着しても薬剤耐性Gram陰性菌の獲得は減らない

" data-en-clipboard="true"> 集中治療室(ICU)において、全患者に手袋・ガウンを装着すると、耐性GNRの獲得が減るかを検討した研究です。北米20施設での検討です。 " data-en-clipboard="true"> すでに、MRSAとVREについては、同じ研究で2013年に結果が発表…

標準予防策のみでESBL産生菌はどのくらい伝播するか?

ESBL産生菌ネタの連投です。 接触感染予防策を行わず、標準予防策 (staandard precaution)のみにした場合、どのくらい伝播しやすいかを検討した論文です。 スイスの大学関連施設からの報告です。伝播率は約1.5%程度でした。著者らは、標準予防策において、…

ESBL産生菌は個室隔離が必要?

" data-en-clipboard="true"> 基質拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌は、プラスミドにより伝播するため、院内感染上重要な菌です。 " data-en-clipboard="true"> 各施設のポリシーによりますが、接触感染予防策を適応し、可能なら個室管理を行っていること…

整腸剤(プロバイオティクス)による菌血症

" data-en-clipboard="true"> お腹に良いはずの整腸剤が、菌血症を起こすことがあります。 " data-en-clipboard="true"> 免疫不全や腸管の病気などがあると起きやすのですが、この報告はNICU内でプロバイオティクス由来の菌血症を集めた6例の報告です。 " da…

ミカファンギン投与中の真菌血症と言えば!

血培から真菌(酵母)が発育する場合、カンジダが圧倒的に多いです。血液悪性腫瘍やICUでCVカテーテルを留置している患者さんなど、基礎疾患が重篤で、免疫不全状態の方に多く見られます。 一部の血液悪性腫瘍の患者さんには、真菌感染予防にミカファンギン…

ビリダンス連鎖球菌が検出されるFN(発熱性好中球減少症)は要注意

" data-en-clipboard="true"> 発熱性好中球減少症(febrile neutropenia: FN)は、内科的エマージェンシーです。早期に、血液培養の採取を行い、緑膿菌に活性のある抗菌薬を速やかに投与する必要があります。しかし、他の感染症と異なり、感染巣が判明する割…

脳性麻痺患者の肺炎と緑膿菌

" data-en-clipboard="true"> 緑膿菌は、さまざまな基礎疾患を持つ患者さんの気道感染を起こしやすい細菌です。有効な抗菌薬が限られていることから、治療に難渋することがしばしばあります。脳性麻痺のお子さんは、肺炎を起こすと重症化しやすく、緑膿菌の…

新型コロナワクチンに関連した多系統炎症性症候群(MIS-V)

小児が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した後に、川崎病のような症状を発症する小児多系統炎症性症候群(MIS-C)が知られています。 日本小児科学会でも診療コンセンサスステートメントを作成しています。 www.jpeds.or.jp 今回、紹介するのは、新…

BCG骨髄炎のケースシリーズ

BCG接種後の副反応として骨髄炎・骨炎が知られています。まれな副反応ですが、接種後1年程度経過してから緩徐に発症します。 今回紹介する論文は、台湾からの報告です。台湾でも、日本と同じTokyo 172-1株を使用しています。 要点です ・接種から発症までの…

がんを結核と誤診?結核流行地域でのわな。

" data-en-clipboard="true"> あまり結核を見慣れない方にとっては、「結核とがんって全然違う病気でしょ!」って感じると思います。しかし、結核はgreat imitatorで、臨床像が多彩で、典型的でない場合には、診断が難しい病気です。 " data-en-clipboard="t…

ファイザーワクチン 5−11歳でも効果・安全性は同等

" data-en-clipboard="true"> ファイザー社が、自社の新型コロナワクチンを5−11歳も接種対象にするよう承認申請を行いました。(2021年11月10日) " data-en-clipboard="true"> おそらく近日中に承認されるはずで、その根拠となる論文の紹介です。 " data-en…

術後縦隔炎の予防にムピロシン除菌は有効かもしれない。

" data-en-clipboard="true"> 心臓外科の術後の合併症で一番イヤなのは、術後縦隔炎です。重症で、治療期間が長く、(小児では特に)診断が難しいです。主な起炎菌は、黄色ブドウ球菌になります。このスペインからの論文は、縦隔炎をなんとか減らせないかと…

嘔吐のみの患者でも病原微生物が特定できる可能性は結構高い

" data-en-clipboard="true"> ウイルス性胃腸炎の季節が始まります。小児がウイルス性胃腸炎に罹患すると、嘔吐→下痢の順で発症することが一般的です。腹痛や発熱を伴うことがあります。小児科医としては、脱水の程度を評価することが救急外来では重要です。…

BCG接種後のリンパ節炎の治療(システマティックレビュー)

" data-en-clipboard="true"> BCG接種後、2−3ヶ月ほど経過して、接種した側の脇の下のリンパ節が腫れたと言って、受診される親子がいます。BCGの菌が、リンパ節に入り、免疫反応が起きて腫れるリンパ節炎です。 " data-en-clipboard="true"> 普通は、痛くも…

アルボウイルス、例外はどれ?

アルボウイルスとは、節足動物媒介ウイルス arthropodborne viruses のことで、100種類以上のウイルスがヒトに感染することが知られています。 節足動物とは、蚊などのことです。アルボウイルスは、蚊、ダニ、サシチョウバエ、ヌカカなどがヒトを刺すことで…

アフガン難民の子供の感染症チェックしてくださいって言われたら…

" data-en-clipboard="true"> アフガニスタンから出国したスタッフが日本に到着されました。アフガニスタン人の殆どは、現地でずっと過ごしてきているので、感染症のチェックは重要になります。日本では非常に珍しい感染症の場合、診断も難しいと思います。 …

細胞内寄生菌のまとめ

細胞内寄生菌は、人間に感染すると、人間の細胞内に寄生して、免疫応答から逃れようとします。そのため、これらの菌に対する防御には、細胞性免疫が重要です。 細胞内寄生する菌についてまとめました。 (資料によりobligateかfaculativeが違うものもあった…

小児は無症候性にClostridioides difficileを保菌する

" data-en-clipboard="true"> Clostridioides difficileは、偽膜性腸炎・CDIの原因となる細菌です。抗菌薬を投与すると、腸管内細菌叢が乱され、毒素を産生するC. difficileが腸管内に増加します。その結果、下痢・発熱・イレウスなどの症状を起こし、重症な…

梅毒は性感染症とは限らない

" data-en-clipboard="true"> 梅毒は、性感染症(STI)の代表的な疾患の一つです。梅毒感染した妊婦から出生した先天梅毒の症例も小児では経験します。梅毒は、皮膚や粘膜に病変を作るので、性的接触以外でも、病変部に接する機会があれば感染する可能性があ…

小児の新型コロナ後遺症(long COVID)イランからの報告

新型コロナウイルス感染後も様々な症状が長く続くケースが報告されています。Long COVIDと言われる病態ですが、高齢・肥満・女性・発症時の症状が5つ以上あるといった人で起きやすことがわかっています。(忽那先生のYahoo!ニュース) news.yahoo.co.jp 小児…

小児のカンジダ血症について知っておくべきこと

" data-en-clipboard="true"> カンジダ血症は、一般小児科をやっているとあまり遭遇することはありませんが、基礎疾患を有する小児や重症の小児を診療している施設では、比較的よく経験します。 " data-en-clipboard="true"> 血培からカンジダが生えたとき、…

黄色ブドウ球菌菌血症では血培2回陰性を確認したら十分(小児)

" data-en-clipboard="true"> 以前、成人の感染症を主に診療していたとき、黄色ブドウ球菌菌血症(SAB)を多く経験しました。程度の差はあれ、どの患者さんも重症で、菌血症がなかなか解消できない(持続菌血症の)患者さんも多く、亡くなられた方もいらっし…

COVID-19罹患後の手術は7週目以降に

" data-en-clipboard="true"> COVID-19の急性期に、外科手術をすると予後が悪くなるのは、分かっていましたが、どのくらい空ければ安全かというのは、なかなか判断が難しいです。 日本麻酔科学会より、提言が出され、8月31日に更新されました。 「新型コロナ…

親が亡くなった子供も新型コロナの被害者

昨日、NHKニュースで、父親がCOVID-19で亡くなり、母もICUで人工呼吸器を装着され重症になった例が紹介されていました。デルタ株の蔓延により、若年層の患者数が急増し、子育て世代の重症化・死亡が増加しています。 残された子供は、COVID-19で亡くなること…

パラインフルエンザウイルスへの感染対策

" data-en-clipboard="true">はじめに " data-en-clipboard="true"> パラインフルエンザウイルス(PIV)は、いわゆる感冒の原因となるウイルスですが、小児に感染するとクループ症候群を引き起こしたり、気管支炎・肺炎などの下気道感染症を起こすこともあり…

建物の入り口での体温測定は意味があるのか?

" data-en-clipboard="true"> COVID-19の流行に伴い、いろいろな場所で、非接触式の体温測定がされるようになりました。病院はもちろん、デパート、図書館、レストラン等。体温測定、手指消毒が、建物に入るための儀式となっています。 " data-en-clipboard=…

新生児の虫垂炎について

虫垂炎(いわゆるアッペ)は、小児科ではよく見る病気ですが、発症年齢の分布が特徴的です。思春期や学童期に多く、年少児にはまれ、新生児では「極めてまれ」な病気です。 その理由は、虫垂の形状が閉塞しにくく、炎症を起こしにくい。ミルクがメインの食事…

胆道閉鎖症術後の胆管炎の特徴

小児では、胆管炎はまれな疾患です。しかし、例外として、胆道閉鎖症術後(葛西手術の術後)と肝移植後は、胆管炎のリスクが高くなります。 また、胆道閉鎖症術後では、胆管炎を繰り返すと、肝移植が必要となるリスクが増加するため、なんとか、胆管炎を避け…

ファイザーワクチンの小児 (12−15歳)への効果と安全性

新型コロナウイルスに感染した小児が重症化することは極めてまれです。MIS-Cなど重症化例が注目されますが、基本的に、小児のコロナは風邪です。高齢者へのワクチン接種が進みましたが、集団免疫を獲得し、新型コロナウイルスの制圧するには、人口のなるべく…

乳児の項部硬直(若手小児科医必見!)

" data-en-clipboard="true"> 現在、日本では、肺炎球菌とHibワクチンが定期接種化され、細菌性髄膜炎が劇的に減少しました。その事自体は、良いことですが、若手小児科医の中には、細菌性髄膜炎を経験することなく、小児科専門医となることもあります。ビデ…