小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児の血培採取時の皮膚消毒は?

 小児科では、頻繁に血液培養を採取します。消毒方法は、色々で、イソジン、クロルヘキシジン、アルコールなどを使用します。また、点滴確保時の血管内カテーテルから、血培を採取(いわゆる逆流採血)しても良いかも、議論になります。
 今回ご紹介するのは、沖縄中部病院の小児科からの報告で、イソジン+アルコール消毒から、アルコール1回消毒に変えても、コンタミ率は低かったという報告です。
 市中病院ですが、すごい検体数ですね。
Skin preparation for prevention of peripheral blood culture contamination in children. Pediatr Int. 2019 Jul;61(7):647-651. 
背景
 日本では小児の血液培養は小児科医が行っている。皮膚消毒にはポビドンヨード(PI)が推奨されている。PIは消毒後1.5~2分間経過してから穿刺する必要があり、これを守らないと消毒効が十分ではない可能性がある。本研究では、70%イソプロピルアルコールIPA)のみ、またはIPAとPIを併用した皮膚消毒後の血液培養からの汚染菌検出率を調査した。
 
方法
 救急外来または小児科病棟で血液培養を行った6歳以下の患者を対象とした後方視的研究である。中心静脈カテーテルを留置している患者は除外した。2008年から2010年までのIPA+PIを用いた従来法(IPA+PI群)と、2015年から2017年までのIPAのみを用いた簡便法(IPA群)を比較し、皮膚消毒方法を変更した影響を評価した。
 
結果
 本研究の対象となった血液培養検体は5,365検体であった。このうち、菌が同定されたのは171例(3.2%)であった。血液培養陽性検体のうち、68検体(1.3%)が真の陽性(菌血症)で、103検体(1.9%)が汚染菌であった。IPA群では2,407検体中38検体(1.6%)で汚染菌が検出され、IPA+PI群では2,958検体中65検体(2.2%)で汚染菌が検出された(OR、0.72;95%CI:0.48-1.07;P=0.1)。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の検出率は、IPA群で有意に少なかった(1.7% vs 1.0%、P = 0.02)。
 
結論
  70%IPAによる1回の皮膚消毒は、日本の小児において血液培養を採取するための最適な方法であると考えられる。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov