マイコプラズマ感染症の臨床症状は、多彩です。通常は肺炎を起こす病原体ですが、皮疹(多形滲出性紅斑など)や関節炎なども起こします。これら、肺炎以外の症状を肺外症状と言います。研修医の頃、上級医から「なんか説明つかないときには、とりあえずマイコプラズマを疑え」という格言(?)を教えてもらってから、不明熱や謎の関節炎で診断がついたこともあります。
今回紹介するのは、マイコプラズマの皮膚粘膜病変に関する論文です。
要点
・肺炎に伴い皮膚粘膜病変が見られる割合は2割程度
・発熱が長く、CRPが高い症例が多い
Frequency and Clinical Presentation of Mucocutaneous Disease Due to Mycoplasma pneumoniae Infection in Children With Community-Acquired Pneumonia.
JAMA Dermatol. 2020 Feb 1;156(2):144-150.
目的
Mycoplasma pneumoniae感染が原因で発生する粘膜皮膚疾患の頻度と臨床的特徴を、改良された診断法を用いて調査すること。
デザインと参加者
この前向き縦断コホート研究には、2016年5月1日から2017年4月30日までにスイスのチューリッヒ大学小児病院に入院または外来診療を受けた3歳から18歳までのCAPの小児152人が含まれています。データ解析は2017年7月10日から2018年6月29日に行われました。
主な結果と測定
- 頻度:152人のうち、44人(28.9%)がPCRでMycoplasma pneumoniae陽性と診断され、そのうち10人(22.7%)が粘膜皮膚病変を発症しました。
- 臨床的特徴:粘膜皮膚疾患を発症した患者は、非粘膜皮膚病変の患者に比べて前駆熱の期間が長く(中央値10.5日 vs 7.0日)、C反応性蛋白(CRP)レベルが高く(中央値31 mg/L vs 16 mg/L)、酸素供給や入院の必要性が高かったです。
- 疾患の種類:発症した粘膜皮膚疾患は、Mycoplasma pneumoniaeによる発疹と粘膜炎、蕁麻疹、斑丘疹などが含まれます。
結論
Mycoplasma pneumoniae感染による粘膜皮膚疾患は、小児のCAP患者において頻繁に見られ、全身性炎症の増加、罹病率の増加、および長期的な後遺症のリスクが高いことが示されました。今後の研究では、これらの重篤な病態を引き起こす微生物学的または宿主の特徴を解明することが必要です。