アデノウイルス感染症は、夏季に流行する感染症です。咽頭結膜熱や流行性角結膜炎、胃腸炎などの原因になりますが、通常の感冒の原因にもなります。まれに、肝炎、肺炎、脳炎など、重篤な感染症を起こします。免疫不全者に、出血性膀胱炎を起こすウイルスとしても有名です。
小児感染症の成書であるFeigin and Cherryをまとめました
要点
・アデノウイルスに感染すると約10%の患者に皮疹が出現する。
・皮疹は、紅斑性斑状丘疹が一番コモン。
・症状が強いケースでは、麻疹様・風疹様の癒合傾向のある紅斑になる。
・髄膜炎菌感染を疑う点状出血・紫斑もあり得る。
・解熱後に紅斑性丘疹が出現する、突発性発疹症パターンもある。
・粘膜病変を伴う重症のStevens-Johnson症候群になることもある。
・移植後などでは、非典型的な皮疹になる
アデノウイルス感染による皮膚症状について
アデノウイルス 1 型、2 型、3 型、4 型、7 型、7a型、いくつかの未知の型は、発疹性疾患との関連が指摘されている。アデノウイルス感染症によくみられる皮膚症状は、小児が発熱している間に現れる紅斑性斑状丘疹(erythematous maculopapular rash)である。麻疹や風疹と診断されているケースも多かった。多くの場合、結膜炎、鼻炎、咽頭炎、リンパ節腫脹など、アデノウイルスに特徴的な他の臨床所見も認められる。時に、発疹は、癒合傾向のある麻疹様発疹 (morbilliform with a confluence)となるが、Koplik斑は認めない(麻疹との鑑別点)。
乳児の重症肺炎の経過の初期に、広範囲の紅斑がしばしば認められる。Chanyらは、アデノウイルス7a型肺炎で死亡した患者5人に麻疹様皮疹を認めたと報告している。アデノウイルス7型による感染にも関わらず、髄膜炎菌感染症を疑うような小児例の報告もある。この患者は、発熱、嘔吐、下痢、および点状出血・紫斑を呈していた。Rochollらは、小児のアデノウイルス感染症143例のうち10%に発疹が認められたと報告している。
また、発熱が続き解熱した後に斑状丘疹が出現する、突発性発疹症に類似した経過の症例も報告されている。アデノウイルス感染症は、風疹と混同されることもある。しかし、アデノウイルス感染症では呼吸器症状や発熱が明らかにあるので、診断ははっきりする。風疹の場合、呼吸器症状や発熱はほとんど見られない。Stevens-Johnson症候群を伴う重症例も見られる。このような患者ではしばしば肺炎を併発し、病態は肺炎マイコプラズマによるものと非常に類似している。
<下記の論文に写真があります>
Lähdeaho らは、腸管アデノウイルス40 型の E1b タンパク質由来ペプチドに対する抗体と疱疹状皮膚炎(dermatitis herpetiformis)に関連していることを指摘している。
Keyesらは、EBV関連移植後リンパ増殖性疾患と播種性アデノウイルス感染を合併した造血幹細胞移植後の女性の症例を報告した。患者は、手掌に2〜3 mm大の紅斑性丘疹があり、一部は水疱状で、硬い角質栓が認めらた。生検では、表皮の過形成と、不全角化が認められた。
日本からの報告で、アデノウイルス54型で丘疹が認められた症例があります。
一般の方のブログですが、アデノウイルス感染による皮疹を時系列で捉えた写真を見つけました。
最初は、紅斑性斑状丘疹ですが、次第に癒合傾向のある紅斑になり、一部色が濃くなっている様子です。麻疹様皮疹で良いと思います。
(結構、学術的に貴重な資料では無いでしょうか。)