小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

イチゴ舌についての考察

The strawberry tongue: What, how and where?
Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2018;84:500
 
イチゴ舌について、ここまで濃厚に語った論文があったであろうか(いいや無い)。
(インドらしい?)熱くて濃い論文です。
 
以下が要約です
(1)イチゴ舌とは
 イチゴ舌は、舌の背面に点状の明瞭な発赤が認められる状態であり、茸状乳頭の炎症と過形成と充血が特長的である。川崎病や猩紅熱の診断において特長的な所見である。しかし、それ以外にも多くの疾患で認めることがある。
 
(2)どのようにしてイチゴ舌になるか?
 イチゴ舌の変化は、糸状乳頭の角化した上皮が落屑することで起きるかもしれない。その結果、炎症を起こし過形成となった茸状乳頭が、合間に残って、イチゴの種に見えるようになる。猩紅熱などでは、この茸状乳頭が、白いコーティングに覆われ、”white sttrawberry”に見える。しかし、このコーティングは数日で剥がれ落ち、典型的な”red strawberry”のイチゴ舌になる。
 
(3)どのような時にイチゴ舌を見るか?
 イチゴ舌を認める多くの疾患は、細菌が産生する毒素を介した疾患である。毒素が、スーパー抗原として作用し、非特異的なポリクローナルな免疫細胞の活性化をもたらし、多量の炎症性サイトカインを放出する。結果として、これらの疾患は多臓器にまたがる症状を呈する。
 
(4)毒素・スーパー抗原が介する疾患
・猩紅熱とGAS咽頭炎
 猩紅熱は、急性の発熱と皮疹を呈する疾患で、GAS咽頭炎咽頭炎に関連して、erythrogenic toxinが産生され、皮膚の血管拡張作用をもたらす。最初の症状は、滲出性扁桃炎で、white strawberry tongueを呈し、1−2日後にred strawberry tongueを呈する。咽頭症状が見られ1−2日後には、頭部から尾側方向に広がる丘疹様の皮疹が見られる。皮疹は典型的には粗で、サンドペーパー様になる。皮疹は屈側に目立つ。皮疹は、落屑とともに改善し、手掌や足底の落屑が約2週間後に見られる。多くの皮膚粘膜症状が、猩紅熱には随伴することがある。多くは合併症無く治癒するが、時に心筋炎、関節炎、骨髄炎、肝炎m髄膜炎などを随伴することがある。ASOが上昇し、治療はペニシリンである。
 GAS咽頭炎も、イチゴ舌と滲出性扁桃炎を呈する事がある。前頸部リンパ節腫脹と軟口蓋・後咽頭口蓋垂に出血点が見られることがある。
 
川崎病 
 原因は不明であるが、T細胞とB細胞の両者を活性化して、炎症性サイトカインが上昇し、疾患を発症する。(本文中にはwhiteからredになるような変化については書いていない)
 
・Yersinia pseudotuberculosis感染症
 Yersinia pseudotuberculosisは、人畜共通感染症で、食物を介してヒトに感染する。典型的な症状は、発熱、WBC上昇、下腹部痛(虫垂炎と間違われる)、腸間膜リンパ節炎である。感染は、通常は局所に限局し、自然に改善するが、糖尿病、慢性肝疾患、ヘモクロマトーシスの患者では、敗血症を呈することもある。菌株により、紅斑(頭部と頚部と四肢)、粘膜疹、イチゴ舌を呈する。臨床症状は川崎病に似ている。
 
 
他にもいろんな疾患とイチゴ舌の関係が書いてあるが…小児でよく見るのは川崎病くらい。他には、トキシックショック症候群、Recurrent toxin-mediated perianal erythema, Recalcitrant erythematous desquamating disorder, エルシニア感染症、黄熱、川崎病

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