小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

Toxin陰性のC. difficileは治療対象?

" data-en-clipboard="true"> Clostridioides difficile感染症(CDI)(いわゆる偽膜性腸炎)は、小児ではかなり少ない疾患です。毒素(toxin)産生株が CDIを引き起こします。しかし、toxin検査は感度が低く、toxin産生株がいても陽性にならないことも多いで…

MRSAに接触感染対策止める??

接触感染対策CPは、ガウン、手袋などを装着する感染対策です。耐性菌を保菌していたり、下痢症状がある患者などに適応されます。医療従事者にとっては、個人防護具PPEの着脱が面倒であり、コストもかかります。下痢については仕方ないと思うのですが、耐性菌…

新型コロナウイルス迅速抗原検査が偽陽性になる人の特徴

ウイルス迅速抗原検査は、日常診療で頻用される検査です。新型コロナウイルス以外にも、インフルエンザ、RSウイルスなど、毎日のように使用します。 この検査は、一般的に「感度が低く、特異度が高い」ので、偽陰性(感染しているけど検査陰性になる人)が多…

セフィデロコルと赤色尿

セフィデロコルは、塩野義製薬が開発した耐性グラム陰性菌用の抗菌薬です。昨年、厚生労働省が承認し、日本でも発売予定です。 www.nikkei.com 海外で、一足先に使用されており、赤色尿が出るという副反応が報告されています。 Cefiderocol Red Wine Urine S…

小児の化膿性関節炎のガイドライン出ました

米国小児感染症学会と米国感染症学会から、小児の化膿性関節炎のガイドラインがでました。ダイジェストサマリーの日本語訳です(一部、意訳しています)。 今回のポイントは、治療期間を短期にすることを推奨したことです。治療反応が良ければ、10−14日間の…

小児救急は大病院に行ったほうが良いのか?

" data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> 患者や家族の大病院信仰がありますが、基本的には、まずはかかりつけの先生に見ていただいて、必要なら大病院を紹介受診ということになります。 " data-en-clipboard="true"> 小児の救急外来でも、…

RSV予防のシナジスを何月から始めるか?

" data-en-clipboard="true"> 未熟児や基礎疾患を持つ子どもに重篤な気道感染症を起こすRSウイルスですが、日本では、(高リスク集団に対して)パリビズマブの予防投与が行われます。流行期が始まる直前に接種を始めるのですが、色々と問題点があります。 " …

小児の発熱性好中球減少症(FN)では、末梢静脈からも血培が必要か?

" data-en-clipboard="true"> 小児のFNでは、血液培養の採取が必須です。多くの患者さんが、中心静脈カテーテル(CVC)を留置しているため、CVCからの逆流採血で血液培養を採取します。シングルルーメンのカテーテルでは、1セットということになります。血培…

Fusarium solaniによる髄膜炎

" data-en-clipboard="true"> メキシコで集団発生したFusariumによる髄膜炎のアウトブレイク報告です。硬膜外麻酔の道具や薬品の汚染なのでしょうか? " data-en-clipboard="true"> Neurovascular Complications of Iatrogenic Fusarium solani Meningitis. …

水痘の曝露後予防の効果

" data-en-clipboard="true"> 一昔前は、小児病棟内で水痘の発症というのがよくありました。最近は、水痘ワクチンが普及して、本当に水痘を見る機会が減ってきました。 " data-en-clipboard="true"> 水痘は、空気感染する非常に感染力の強い感染症なので、水…

コロナ陽性の乳児期早期発熱は、細菌感染症の合併が少ないかも

最近、COVID-19の症例が増加しています。インフルエンザの流行がピークアウトしましたが、その分、コロナが増えている感じです。 乳児期早期発熱(生後3ヶ月未満の発熱)では、基本的に細菌感染症の精査が必須です。つまり、血液検査、尿検査などを行います…

【重要】小児敗血症の基準が変わります!

2024年(始まって1ヶ月ですが)、小児感染症分野の論文でおそらく最重要の論文の一つが出ました。 結論から言うと、「敗血症の定義が変わります」という、臨床へのインパクトも絶大な論文です。 そもそも小児の敗血症の定義ですが、2005年に小児敗血症コンセ…

オミクロン株より、RSウイルスのほうが重症化しやすい

新型コロナ流行当初は、MIS-Cなど様々な合併症や、呼吸障害が出るコロナを経験しました。オミクロン株が主体となってからは、(感染症法上の5類への以降もあり)入院が減ってきました。2023年は、感染対策の緩和から、RSウイルスが大流行し、今はインフルエ…

ニルセビマブの有望な効果: RSV関連下気道感染からの入院を減少させる

" data-en-clipboard="true"> 今週号のNEJMに、ニルセビマブの臨床試験の結果が掲載されました。ニルセビマブは、次世代のRSウイルスに対するモノクローナル抗体です。 " data-en-clipboard="true"> これまで、RSウイルスのモノクローナル抗体は、パリビズマ…

非結核性抗酸菌でコッホ現象が起きるのか?

日本の結核有病率の低下とともに、乳幼児の結核は激減しています。個人的にも、乳幼児の活動性結核は2例くらいしか見たことありません。 一方で、BCG接種後1週間以内に、接種部位が発赤したり化膿したりする現象を、コッホ現象といい、結核感染を示唆する所…

群馬大学での新生児のメトヘモグロビン血症集団発生の報告

2021年に群馬大学で起きた新生児のメトヘモグロビン血症集団発生の報告がNEJMで発表されました。厚生労働省などのHPでは公開されていますが、このように世界に向けて発信されたのは、素晴らしいです。筆頭著者の先生もよく存じ上げていますが、おめでとうご…

K. oxytocaによる抗菌薬関連下痢にも便移植(FMT)が有効

Klebsiella oxytocaは、腸管内の常在菌ですが、抗菌薬関連下痢症を起こすことがあります。抗菌薬関連下痢といえば、C. difficileが有名ですが、K. oxytocaもあります。C. difficileについては、難治例では、便移植療法(FMT)が確立してきているが、K. oxytoc…

Gram陽性連鎖球菌ごとの感染性心内膜炎(IE)リスク

感染症科をやっていると、血液培養から、いろいろな菌種が出てきた患者さんを見ます。しかし、血培陽性になった日に、菌の名前は分からないので、分からないなりに菌を推定して、治療を考えます。 Gram陽性ブドウ球菌→黄色ブドウ球菌かCNS、バンコマイシン追…

ピペラシリン・タゾバクタムの腸内細菌科細菌へのbreakpointが厳しくなりました

抗菌薬が、検出された細菌に有効かどうかの判定には、S(感性)、I(中間)、R(耐性)で行われます。最小発育阻止濃度(MIC)を測定する事で、そのMICが基準を超えているかで判断します。 感受性の判定基準として最も一般的なものは、米国のCLSIが定義するも…

アンチバイオグラムは個々の患者の薬剤耐性菌の予測には使いにくい

" data-en-clipboard="true"> 以前に亀田総合病院で勤務されていた長谷川先生(現在、アイオワ大学の感染症科)の論文です。おめでとうございます! " data-en-clipboard="true"> アンチバイオグラムは、個々の病院ごとに、ある菌に対する抗菌薬耐性の割合が…

先天性CMV感染症の神経学的合併症のバイオマーカー

" data-en-clipboard="true"> サイトメガロウイルスは、先天性感染の中でも有病率が高く、神経学的後遺症が多い感染症です。生まれたときには無症状でも、成長するにつれて、異常が明らかになることがあります。ついに、先天性サイトメガロウイルス感染に対…

先天性感染の略はTORCHではなく、SCORTCH(スコーチ)!

妊婦の感染症が臍帯を通じて胎児に感染することがあります。有名なのは、先天性風疹症候群で、先天性心疾患、白内障、小頭症などの重篤な先天性の障害が起きますし、流産・死産になることもあります。他にも、トキソプラズマ、その他others、風疹、サイトメ…

副腎不全ではCRPがかなり上昇する

" data-en-clipboard="true"> 不明熱の鑑別診断に、「副腎不全」があります。体内のステロイドホルモンが不足することにより、低血圧、低血糖、低Na血症などを来します。特に、体に強い侵襲が加わったときには、普段より多くのステロイドが必要になるので、…

コロナ感染で胎児内蔵逆位が増加する?

" data-en-clipboard="true"> 中国から気になるデータが出ました。 " data-en-clipboard="true"> 中国は、2022年末に”ゼロコロナ政策”をやめて、その後、ものすごい数のCOVID-19感染者を出しました。その頃に、妊娠したと思われる胎児の内蔵逆位が、例年の4…

新型コロナウイルス感染症の小児における感染性期間

" data-en-clipboard="true"> ちょっと、また記事を書く間隔が空いてしまいました。 " data-en-clipboard="true"> " data-en-clipboard="true"> 新型コロナウイルス感染症が、感染症法上の分類が5類になって以降、以下のような療養期間が社会的に受け入れら…

子宮留膿腫は小児では非常に稀な疾患

" data-en-clipboard="true"> 子宮留膿腫は、高齢女性や産褥婦で時々経験したことがあります。小児では、非常に稀な疾患ですが、それには、血中エストロゲン値も関連するそうです。 " data-en-clipboard="true"> 実は、小児の症例報告は英文では10例ちょっと…

GBSをワクチンで予防する時代がもうすぐ

" data-en-clipboard="true"> B群溶血性連鎖球菌(GBS)は、新生児に菌血症や髄膜炎を起こす菌です。新生児が出生の時に母が保菌するGBSを保菌してしまうと、GBS感染症を発症することがあるので、最近では、保菌している母親に対して、出産時に抗菌薬投与する…

Pott's puffy tumor:稀だけど知っておきたい副鼻腔炎の合併症

Pott's puffy tumorは、見た目が印象的な疾患です。↓こちらに成人の症例報告があります。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkotokeibu/125/5/125_892/_pdf/-char/ja " data-en-clipboard="true"> 多くは、副鼻腔炎が進行して、前頭骨が骨髄炎にな…

キノロン予防投与中の緑膿菌菌血症にはメロペン耐性が多い

" data-en-clipboard="true"> 成人領域では、白血病で骨髄抑制中や造血幹細胞移植後の患者に対してキノロンの予防投与を行うことが比較的よくあります。小児ではキノロンは基本的に禁忌ですが、海外の文献では小児への予防投与もよく見かけます。 緑膿菌は、…

小児の急性副鼻腔炎の初期治療薬はアモキシシリンで十分

" data-en-clipboard="true"> 小児科外来をしていると、アモキシシリン(商品名:ワイドシリン、サワシリンなど)は、最も重要な抗菌薬です。それは、中耳炎、肺炎、咽頭炎(溶連菌)などの気道感染症の第一選択薬になるからです。 " data-en-clipboard="tru…