セフィデロコルは、塩野義製薬が開発した耐性グラム陰性菌用の抗菌薬です。昨年、厚生労働省が承認し、日本でも発売予定です。
海外で、一足先に使用されており、赤色尿が出るという副反応が報告されています。
Cefiderocol Red Wine Urine Syndrome in Pediatric Patients: A Multicenter Case Series.
Pediatr Infect Dis J. 2023 Oct 20.
セフィデロコルは、小児での使用経験は限られている。本報告では、輸血を受けた免疫不全の小児3例が、セフィデロコルの投与により赤色尿または紫色尿を認めた事を報告する。血液製剤の鉄分との相互作用が考えられる。不必要な検査を避けるため、このような副作用が起きる可能性を認識し、血尿と区別することが重要である。
セフィデロコルは、ESBLおよびカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌、緑膿菌、Acinetobacter baumannii、Stenotrophomonas maltophiliaなどのカルバペネム耐性ブドウ糖非発酵グラム陰性菌に対して幅広い活性を有する。その側鎖部分は、鉄をキレートし、細菌の鉄輸送系を使用する複合体を形成してグラム陰性菌の外膜を通過する。
発熱性好中球減少症と肛門周囲炎のため入院した。セフェピム、メトロニダゾール、バンコマイシンを投与されたが、血液培養でNDM大腸菌が陽性となり、セフィデロコル、ポリミキシン-B、チゲサイクリンに変更された。2週間後、赤色尿を認めた。尿検査で、血尿は認めず、4日前に、1単位の赤血球濃厚液を投与されていた。セフィデロコル中止後に尿色は正常化した。
症例2 難治性B細胞性ALLの英国人の12歳の女児
CAR-T細胞療法を受けた。呼吸不全を発症した。喀痰培養からST合剤耐性のStenotrophomonas malophiliaが分離された。セフィデロコルを投与したが、2日目に赤みがかったオレンジ色の尿が認められた。セフィデロコルの投与開始前6日以内に3回の輸血を受けていた。尿検査では血尿は認められず、尿培養は陰性であった。セフィデロコルを中止した日に、尿の色は正常化した。
グラム陰性菌菌血症を発症し、リネゾリド、セフェピムおよびゲンタマイシンを投与し、次にメロペネムを投与した。カルバペネム耐性NDM産生大腸菌であることが同定された。メロペネムはセフィデロコルに変更された。投与開始の3日前に輸血を受けていた。セフィデロコル投与2日目に尿が紫色になった。尿はセフィデロコル投与中ずっと紫色のままであったが、14日間の投与を終える3日前に消失した。
結論
多剤耐性菌感染症でセフィデロコルを投与された小児の尿が赤色または紫色に変色した症例を経験した。尿検査によって、尿変色と血尿とを区別することができ、尿検査が正常であれば良性の病因が示唆されるため、血尿の原因についてさらに不必要な診断を行う必要はない。