病棟で急な発熱の患者を見た時、「カテーテル関連血流感染症(CRBSI)かもしれない」と思って、血液培養とカテ先培養を提出することはよくあります。
後日、血培は陰性なんだけど、カテ先だけ陽性という培養結果が判明した場合、対応を悩むことがあります。
黄色ブドウ球菌に関しては、「カテーテル先端が陽性で、末梢血液培養が陰性である症例は5−7日間の抗菌薬投与を施行する」とIDSAのガイドラインで明記されています。
しかし、その他の菌に関しては、ガイドラインで明確な扱いはなく、抗菌薬をどの程度投与すれば良いか、悩ましいところです。
抗菌薬を投与しないことによって起きる最大の問題は、「subsequent bacteremia」で、カテ抜去時には血液培養が陰性ですが、そのうち菌血症が起こってしまうことです。
今回紹介するのは、カテーテル先端培養が陰性であった場合に、どのくらいsubsequent bacteremia (late CRBSI)を起こすかを検討した論文です。ガイドラインでも指摘している通り、黄色ブドウ球菌がカテ先から検出されたら、治療が望ましいと思いますが、真菌やGram陰性菌もそれなりの割合でlate CRBSIを起こすことが分かります。
要点
・カテーテル先端培養が陽性の場合、late CRBSIの発症率は4.1%。
・リスクが高い菌は、MSSA (12.5%) > MRSA (9.9%) > 真菌(6.2%) > Gram陰性菌(4.3%)
・Late CRBSIのタイミングは約90%の症例で抜去から6日以内
The risk of catheter-related bloodstream infection after withdrawal of colonized catheters is low.
Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2014; 33: 729-34.
はじめに
方法
カテーテル先端部の培養が陽性の患者集団において、後期CRBSIの発生リスクを評価し、関連する危険因子を分析した。2003年から2010年にカテーテル先端に細菌が定着した症例を後方視的に分析し、血液培養の結果と照合した。CRBSIは、早期CRBSI(カテーテル抜去後24時間以内に血液培養が陽性になった症例)と後期CRBSI(抜去後24時間以上経過してから血液培養が陽性になった症例)に分類した。後期CRBSIに関連する危険因子を分析した。
結果
17,981本のカテーテル先端培養を解析した。4,533本(25.2%)で菌の定着を認めた。そのうち、1,063本(23.5%)が早期CRBSIの検体で、残りの3,470本のうち143本(4.1%)が後期CRBSIを発症した。後期CRBSIは、C-RBSI全体の11.9%を占めた。早期CRBSIと後期CRBSIを比較した結果,後期CRBSIは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA,p = 0.028)が多く,より死亡率が高い(p = 0.030)ことが明らかになった。
結論
カテーテル先端培養が陽性になった場合、後期CRBSI発症リスクは4.1%であった。後期CRBSIの死亡率はより高い傾向があった。
微生物
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CRBSIを起こさなかった例
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後期CRBSIを発症した例
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後期CRBSIの発症リスク(%)
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Gram陽性菌
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4112
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87
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2.1
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Staphylococcus epidermidis
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2336
|
47
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2.0
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CoNS
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684
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0
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0
|
233
|
23
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9.9
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MSSA
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88
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11
|
12.5
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その他Gram陽性菌
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771
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6
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0.8
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Gram陰性菌
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679
|
29
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4.3
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真菌
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469
|
29
|
6.2
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合計
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5260
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145
|
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合計
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後期CRBSI
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早期CRBSI
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p値
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死亡者
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70 (24.5%)
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43 (30.1%)
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27 (18.9%)
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0.030
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