小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

カテ感染にエタノールロックは効くか?

 小児科では、短腸症候群などで長期に中心静脈カテーテルを留置している患者さんがいます。管理で一番頭を悩ませるのが、カテーテル感染です。カテーテルにくっついた微生物の治療はなかなか厄介です。カテーテルを抜去できるのが一番ですが、使える中心静脈も限られており、抜去はしばしば困難です。
 IDSAのガイドラインでは抗菌薬ロック療法が推奨されていますが、国内ではエタノールロック療法を試みている施設もあります。多施設前向き研究の結果がでましたが、かなり成績は良さそうです。
 もともと、カンジダや耐性GNRなどでは、カテーテル抜去しないと治療が困難ですが、エタノールロック療法でも同じ傾向があるようです。
 
要点
エタノールロック療法は小児のCRBSIでかなり有効
・しかし、カンジダ緑膿菌が起炎菌の場合は、カテーテル抜去となる可能性が高いかもしれない
 
Ethanol lock therapy in pediatric patients: A multicenter prospective study
Chiba M, et al. Pediatr Int. 2020;62:379-85.
 
背景:
 エタノールロック療法(ELT)は、中心静脈カテーテル関連血流感染症(CRBSI)において中心静脈カテーテル(CVC)を温存する目的に実施されているが、その有効性に関するエビデンスは確立されていない。本研究では、ELTの安全性と有効性を確認するために、多施設共同前向き研究を実施した。
 
方法:
 対象は、1歳以上の長期留置型シリコンCVCを有する患者である。カテーテルから血液培養を採取した後、70%エタノールロックを毎日2−4時間、7日間実施した。単回コースと複数回コースのELTの有効率、治療後4週間以内のCRBSIの再発の有無、4週間後にCVCが温存できたかを検討した。
 
結果:
 2014年9月から2018年8月までに、6病院から49例が登録された。1例はカテーテル閉塞のためCVCを抜去した。88%(42/48)の症例でELT単回コースが有効であった。1回のELTで効果がなかった残りの3症例で2回目のELTが実施されたが、いずれも無効であった。93%(40/42)の症例で、治療終了後4週間以内にCRBSIの再発は認められなかった。84%(41/49)の症例で、治療終了後4週間時点でカテーテルが温存できた。有害事象として顔面潮紅が2例に認められたが、一過性であった。
 
結論:
 ELTはCRBSIの88%に有効であり、84%のカテーテルは温存可能である。

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起炎菌は、23例でブドウ球菌が多かったようです。(表が少し変ですが)
無効であった症例の起炎菌は全ては記載がありませんが、2回めのELTが失敗に終わった3例の内訳は、1例がPseudomonas aeruginosa、2例がCandidaでした。どちらも基本的には温存が困難な事が分かっている菌ですので、これらが出た場合には、ELTで粘るよりも、早期抜去が良さそうに思います。