小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

末梢からのアミノ酸製剤の投与はBacillusのカテーテル関連血流感染症のリスク

 絶食や低栄養の患者さんに対して、末梢静脈カテーテルからアミノ酸製剤(ビーフリードなど)が投与されることがあります。しかし、末梢静脈カテーテルからのアミノ酸では、異化を防ぐほどの量のアミノ酸を投与できません。また、末梢静脈カテーテルカテーテル関連血流感染症(CRBSI)が明らかに多い印象を持っていました。
 亀田にいる時に、この臨床的な特徴をアカデミックな形にできれば良いなと思っていましたが、国立国際医療研究センターの忽那先生(くつ王)が論文にされました。
 
 やはり「末梢ラインからアミノ酸製剤を投与すると、Bacillus cereusのCRBSIが多い」です。
 さすが忽那先生です。
 
Risk factors of catheter-related bloodstream infection caused by Bacillus cereus : Case-control study in 8 teaching hospitals in Japan
Kutsuna S, et al. Am J Infect Control. 2017;45(11):1281.
 
日本の8施設で実施されたBacillus cereusのカテーテル関連血流感染症(CRBSI)のリスクファクターに関する研究です。アミノ酸輸液製剤の投与と末梢静脈カテーテルが、リスク因子でした。
 
2010年から2014年に、上記8施設で、Bacillus cereusによるCRBSIの患者をコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)におよるCRBSIの患者を対照として、リスクファクターを比較した。
135例のB. cereusのCRBSIと322例のCNSのCRBSいを比較した。
 
 多変量解析したところ、アミノ酸製剤の投与と、末梢静脈カテーテルがB. cereusのCRBSIのリスクファクターであった。
 
変数
調整オッズ比
(95% CI)
41.6 (4.2-411.7)
.001
入院歴
0.67 (0.3-1.1)
.50
糖尿病
0.3 (0.03-1.1)
.07
悪性腫瘍
1.0 (0.4-2.8)
.86
末梢静脈カテーテル
213.7 (23.7-1,924.6)
<.001
抗菌薬投与歴
1.0 (0.4-2.5)
.96
1.8 (0.2-18.4)
.634

 

 どうして、末梢からのアミノ酸製剤でBacillus cereusが増殖するか、理由です。

考察では、Bacillus cereusは、pH 6.5-7.0の環境で増殖します。しかし、pH 5.5-6.0では発育しません。末梢からのアミノ酸製剤のpHは6.8で、これはBacillus cereusの増殖にとって都合の良い環境です。一方、中心静脈で使用するアミノ酸製剤のpHは4.5−5.9と低く、Bacillus cereusが発育しにくくなっています。

 理論的な背景と、臨床的な現象が、合致することが示された、素晴らしい論文だと思いました。

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