絶食や低栄養の患者さんに対して、末梢静脈カテーテルからアミノ酸製剤(ビーフリードなど)が投与されることがあります。しかし、末梢静脈カテーテルからのアミノ酸では、異化を防ぐほどの量のアミノ酸を投与できません。また、末梢静脈カテーテルのカテーテル関連血流感染症(CRBSI)が明らかに多い印象を持っていました。
亀田にいる時に、この臨床的な特徴をアカデミックな形にできれば良いなと思っていましたが、国立国際医療研究センターの忽那先生(くつ王)が論文にされました。
やはり「末梢ラインからアミノ酸製剤を投与すると、Bacillus cereusのCRBSIが多い」です。
さすが忽那先生です。
Risk factors of catheter-related bloodstream infection caused by Bacillus cereus : Case-control study in 8 teaching hospitals in Japan
Kutsuna S, et al. Am J Infect Control. 2017;45(11):1281.
135例のB. cereusのCRBSIと322例のCNSのCRBSいを比較した。
変数
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調整オッズ比
(95% CI)
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P 値
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アミノ酸製剤
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41.6 (4.2-411.7)
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.001
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入院歴
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0.67 (0.3-1.1)
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.50
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糖尿病
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0.3 (0.03-1.1)
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.07
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悪性腫瘍
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1.0 (0.4-2.8)
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.86
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末梢静脈カテーテル
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213.7 (23.7-1,924.6)
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<.001
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抗菌薬投与歴
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1.0 (0.4-2.5)
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.96
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1.8 (0.2-18.4)
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.634
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どうして、末梢からのアミノ酸製剤でBacillus cereusが増殖するか、理由です。
考察では、Bacillus cereusは、pH 6.5-7.0の環境で増殖します。しかし、pH 5.5-6.0では発育しません。末梢からのアミノ酸製剤のpHは6.8で、これはBacillus cereusの増殖にとって都合の良い環境です。一方、中心静脈で使用するアミノ酸製剤のpHは4.5−5.9と低く、Bacillus cereusが発育しにくくなっています。
理論的な背景と、臨床的な現象が、合致することが示された、素晴らしい論文だと思いました。