小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

NICUでのカンジダ血症のリスク因子

 カンジダ血症は、重症者や免疫不全者に発症する事が多い感染症で、治療が難しく困難なことがあります。成人でのリスクは、中心静脈カテーテルの使用、完全静脈栄養、広域抗菌薬、APACHEスコア高値、急性腎不全、外科手術(特に腹部外科)、消化管穿孔、免疫不全状態(血液悪性腫瘍、移植後、化学療法中)などが知られています。
 小児でも、CV留置やNICU入院中は、Candida血症のリスクになります。今回、紹介する論文は、極低出生体重児において、カンジダ血症のリスクを検討した中国からの論文です。
 
要点
・極低出生体重児カンジダ血症発症リスクは高い
・特に、カルバペネム使用と完全静脈栄養と長期入院がリスク
 
Risk factors and clinical analysis of candidemia in very-low-birth-weight neonates
Fu J, et al. Am J Infect Cotrol. 2016; 44: 1321.
 
背景:
 カンジダ血症は、早産・極低出生体重児の死亡の3番目の原因である。中国西部では、極低出生体重児カンジダ血症の発生率と危険因子はあまり知られていない。
 
方法:
 2012年1月から2015年11月まで、柳州市の病院において、カンジダ血症の症例対照研究を実施した。データは単変量解析と多変量ロジスティック回帰で分析した。
 
結果:
 調査期間中のカンジダ血症の症例は48例であった。極低出生体重児の入院患者1,000人当たり106.9人の発生率を示した。Candida albicansが最も多く、39.6%の症例で分離された。カンジダ血症群の死亡率は 10.4%、対照群では 2.1%であった(P = 0.128)。多変量ロジスティック回帰モデルにより、カルバペネム使用(オッズ比[OR]、11.39;95%信頼区間[CI]、3.28-39.54)、完全静脈栄養(OR、10.16;95%CI、2.25-45.94)、および長期入院(OR、1.04;95%CI、1.01-1.07)が、 カンジダ血症のリスクとなることが明らかになった。
 
結論:
 極低出生体重児は、カンジダ血症を発症するリスクが高い。カンジダ血症の発生率を減らすために、カルバペネムの使用量を減らし、カテーテルケアを改善し、早期にカテーテルを除去し、入院期間を短縮することに重点を置くべきである。
 

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 NICUにいる極低出生体重児でも、成人と同様に、カルバペネム使用、TPNがリスクとなることが分かります。C. albicansが39.6%を占めましたが、C. glabrataが33.3%、C. tropicalisが27.1%と続きました。
 極低出生体重児でこの規模のカンジダ血症の研究ができるのは、NICUの規模が大きいこともあります。ただ、ちょっと発生率(約10%の患者に発生!)が高すぎる気がします。