結膜炎は、小児科医もよく経験しますが、なんとなく点眼抗菌薬を処方してしまい、また、保育園からは出席停止になってしまう病気です。しかも、子どもは元気!という。米国で、結膜炎に抗菌薬処方を控えたり、出席停止扱いにしないほうが、(二次感染が起きることを考えても)費用対効果が良いのではないかという研究です。
本論文は、小児の結膜炎の管理と子供が保育施設や学校の出席停止戦略の費用対効果を比較した研究です。
Cost-Effectiveness of Pediatric Conjunctivitis Management and Return to Childcare and School Strategies: A Comparative Study.
J Pediatric Infect Dis Soc. 2024 Jul 20;13(7):341-348.
背景
感染性結膜炎は、毎年8人に1人の小児が罹患し、高額な点眼抗菌薬の処方や保育施設や学校を欠席する原因となる。本研究では、3通りのケア方針と通常のケア方針を比較し、費用対効果と年間のコスト低減効果を評価した。
方法
意思決定分析モデルを使用し、非重症の結膜炎のケア方針を分析した。
方針は以下:
1. 非重症結膜炎に対して抗菌薬点眼液の処方を控える
2. 全身症状のない小児は保育施設や学校を欠席する必要はない
3. 抗菌薬点眼液の処方を控え、かつ、全身症状のない子供が保育施設や学校を欠席する必要はない
結果
小児結膜炎の年間推定コスト費は19億5000万ドルであった。通常のケアは、最も高額(1エピソードあたり212.73ドル)で、抗菌薬の処方を控える戦略(199.92ドル)、全身症状のない子供が通うことを許可する戦略(140.18ドル)と比較して最も高額であった。最も費用効果の高い戦略は、抗菌薬の処方を控え、全身症状のない子供が通うことを許可する戦略(127.38ドル)であった。この戦略により、年間推定783百万ドルの節約が見込まれ、160万件の抗菌薬処方が回避される。
結論
結膜炎は経済的負担が大きく、抗菌薬の使用を控え、全身症状のない子供が学校や保育施設に通うことを許可することで、その負担を軽減できる可能性がある。この研究は、結膜炎管理の費用対効果を評価し、抗菌薬の過剰使用を避けることの重要性を強調しています。
本研究のコストとは、医療費(抗菌薬など)、受診料、薬剤の副作用、二次感染のコスト、失われた生産性を含むものとする。