小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

血液培養は何時間陰性ならOK?

 小児の菌血症の除外には、血液培養が必須です。十分な量が取れない、2セット率が低いなど、成人とは異なる難しさがあります。

 「血培取って、抗菌薬!」というのはよくやりますが、血培が何時間発育しなければ、菌血症は除外できたと言えるでしょうか?通常は、48時間で、真菌だともう少し時間がかかるというのが、Uptodateなどの記載にあります。

 今日紹介するのは2本の論文です。

1本目:元気でリスクのない子は、24時間陰性なら、ほぼ菌血症は否定して大丈夫!(イギリス)

2本目:新生児は36時間、年長児は48時間位で、だいたい90%は陽性になる(フランス)

 血液培養は、血液の採取量などによっても、陽性なるまでの時間が異なるので、なかなか統一化は難しいですね。

 

Excluding Clinically Significant Bacteremia by 24 Hours in Otherwise Well Febrile Children Younger Than 16 Years: A Study of More Than 50,000 Blood Cultures.
Pediatr Infect Dis J. 2019 Sep;38(9):e203-e208. 
 
背景
 経験的静注抗菌薬を投与された小児において、新生児では36時間後、年長児では48時間後に血液培養が陰性であれば抗菌薬継続について再検討を行うことがガイドラインで推奨されている。培養技術の進歩の小児ワクチン接種の拡大を受けて、このテーマを再検討した。併存疾患がなく敗血症の特徴を有さない臨床的に落ち着いた発熱小児患者において、菌血症を除外するまでの時間を評価した。
 
方法
 英国の医療機関で8年間に採取された53,276例の小児血液培養の結果を解析した。
 
結果
 1308例(2.5%)が陽性であった。そのうち、333例(25.5%)から真の菌血症と判断できる病原体が検出された。残りの975例(74.5%)は、汚染菌の可能性が高い、またはリスク因子を有する小児においてのみ感染に関連する菌が検出された。培養から陽性になるまでの時間(TTP)は、333例の真の菌血症が975例の汚染菌/日和見菌よりも有意に短く、真の菌血症の92%が培養開始24時間までに陽性になった。24時間後に退院可能であった小児において、24時間後に病原体が同定されたのは3例のみであった。新生児と年長児では、TTPに有意差はなかった。検体採取から培養開始までの時間の中央値は3時間であった。
 
結論
 併存疾患や敗血症の特徴を有さない全身状態良好に見える小児の発熱患者において、真の菌血症は、血液培養開始24時間で除外できる。本研究は、同様の研究のデータとしては最大規模であり、新生児と年長児を比較したものとしては2例目である。我々の知見は、将来のガイドラインに反映され、より早い抗菌薬の検討と退院が促進されるであろう。
 
Finding significant pathogens in blood cultures in children: Should we set the timer to 36 hours?
J Assoc Med Microbiol Infect Dis Can. 2024 Mar 29;9(1):11-19.
 
背景
 血液培養の陽性化までの時間(TTP)を知ることは、感染巣が不明の菌血症の疑いに対する経験的抗菌薬中止のタイミングを評価するために有用である。
 
方法
 2019年11月1日から2020年10月31日、イースタンオンタリオ小児病院(CHEO)の血液培養陽性の検体を用い、培養開始から陽性までのTTPを調査した。
 
結果
 248例の患者(平均年齢:6.27[SD 6.24]歳)から376検体が血液培養陽性となった。このうち、247株のうち、90株(36.4%)が確定的(DP)病原体(真の菌血症)(TTP中央値 12.75時間)、157株(63.6%)が推定(PP)汚染菌(TTP中央値 24.08時間)であった。培養開始から各時点での血液培養陽性率は、PP汚染菌と比較してDP病原体で有意に高く(ハザード比[HR]1.80[95%CI 1.37, 2.36])、年長児群と比較して生後27日未満の新生児で有意に高かった(HR 1.94[95%CI 1.19, 3.17])。36時間後までの培養陽性率は、3~11歳の年齢群と比較して新生児群(≦生後27日)で有意に高かった(91.7%[95%CI 68.6%, 97.8%]対58.2%[95%CI 46.91%, 68.06%])。
 
結論
 全年齢において、真の菌血症の血液培養陽性例では、汚染菌による血液培養陽性例と比較してTTPが有意に短かった(HR 1.80[95%CI 1.37, 2.36])。新生児では、血液培養の90%が36時間後までに陽性となり、経験的抗菌薬投与の必要性を再評価する時間として36時間が適切と考えられた。生後12ヵ月以上の小児ではTTPが長かったが、これは血液採取量などの他の因子と関連している可能性がある。
 
新生児

小児の血培採取時の皮膚消毒は?

 小児科では、頻繁に血液培養を採取します。消毒方法は、色々で、イソジン、クロルヘキシジン、アルコールなどを使用します。また、点滴確保時の血管内カテーテルから、血培を採取(いわゆる逆流採血)しても良いかも、議論になります。
 今回ご紹介するのは、沖縄中部病院の小児科からの報告で、イソジン+アルコール消毒から、アルコール1回消毒に変えても、コンタミ率は低かったという報告です。
 市中病院ですが、すごい検体数ですね。
Skin preparation for prevention of peripheral blood culture contamination in children. Pediatr Int. 2019 Jul;61(7):647-651. 
背景
 日本では小児の血液培養は小児科医が行っている。皮膚消毒にはポビドンヨード(PI)が推奨されている。PIは消毒後1.5~2分間経過してから穿刺する必要があり、これを守らないと消毒効が十分ではない可能性がある。本研究では、70%イソプロピルアルコールIPA)のみ、またはIPAとPIを併用した皮膚消毒後の血液培養からの汚染菌検出率を調査した。
 
方法
 救急外来または小児科病棟で血液培養を行った6歳以下の患者を対象とした後方視的研究である。中心静脈カテーテルを留置している患者は除外した。2008年から2010年までのIPA+PIを用いた従来法(IPA+PI群)と、2015年から2017年までのIPAのみを用いた簡便法(IPA群)を比較し、皮膚消毒方法を変更した影響を評価した。
 
結果
 本研究の対象となった血液培養検体は5,365検体であった。このうち、菌が同定されたのは171例(3.2%)であった。血液培養陽性検体のうち、68検体(1.3%)が真の陽性(菌血症)で、103検体(1.9%)が汚染菌であった。IPA群では2,407検体中38検体(1.6%)で汚染菌が検出され、IPA+PI群では2,958検体中65検体(2.2%)で汚染菌が検出された(OR、0.72;95%CI:0.48-1.07;P=0.1)。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌の検出率は、IPA群で有意に少なかった(1.7% vs 1.0%、P = 0.02)。
 
結論
  70%IPAによる1回の皮膚消毒は、日本の小児において血液培養を採取するための最適な方法であると考えられる。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

米国の小児COVID-19ガイダンス 入院編

第3節 COVID-19による入院が必要な小児患者におけるCOVID-19の治療

COVID-19による小児入院患者の評価

提言3.1:

COVID-19以外の理由で入院し、呼吸サポートを必要としない患者については、外来患者に推奨されるアプローチを適用することを提案する。

コメント

COVID-19と診断された小児で、無症状か、ベースライン以上の呼吸サポートを必要としない軽度〜中等度の症状のみで入院することがある。このような患者に対しては、外来患者に推奨されている方針を用いることをパネルは提案する。
 

提言3.2:

COVID-19で入院している患者の治療計画を立てる場合、以下の要因を考慮すべきである:年齢、重症度、ワクチン接種状況、COVID-19の既往歴、罹病期間、重症化危険因子の有無。
 

コメント

COVID-19で入院した小児の治療方針の決定において以下の目標を考慮すべきである:1)重症化や死亡を防ぐ、2)入院期間を最短にする、3)治療に伴う副作用を避ける、4)費用対効果が高い治療を提供する。年齢、重症度、ワクチンの接種状況、COVID-19の既往歴、罹病期間、重症COVID-19に進行する危険因子の有無は、重要な因子である。
 

COVID-19による入院小児患者の評価の根拠とエビデンスの要約

年齢

 FDAはレムデシビルを生後28日以上で体重3kg以上の乳幼児・小児に使用することを承認している。重症COVID-19で入院している2歳以上の小児に対してトシリズマブとバリシチニブのEUAを発行している。しかし、利用可能な治療薬の小児に特異的な有効性データは限られている。小児におけるこれらの治療薬の使用を支持するデータは、現在のところ小規模な観察データセットしかない。
 利用可能な文献の限界は承知の上であるが、現在のエビデンスによると、重症化の危険因子を持たない年少児は、年長児や青年に比べて重症化、特に高度な呼吸補助や集中治療を必要とする可能性が低く、治療の恩恵を受ける可能性も低い。
 

先行感染と積極的・消極的ワクチン接種

 ウイルスの変異によるブレークスルー感染の発生率が上昇しているが、予防接種または既往感染により、入院のリスクは減少する。
 COVID-19で入院した小児は、過去のCOVID-19感染およびCOVID-19ワクチン接種の時期を確認すべきである。2つの理由から時期は重要である:1) 免疫反応の動態(中和抗体価のピークは数週間以内に観察され、時間の経過とともに低下する)、2) 以前に感染した変異株に対する免疫が現在流行している株に対して有効である可能性。
 

罹病期間

臨床研究では、抗ウイルス療法を早期に開始することが、COVID-19に有効であることが示唆されている。SARS-CoV-2陽性で、COVID-19肺炎とは一致しない炎症性症候群を呈する患者については、小児の多系統炎症症候群(MIS-C)の可能性も含めて、別の診断を考慮すべきである。このような症例では、COVID-19を対象とした治療が有益である可能性は低い。
 

リスク因子

COVID-19で入院した小児の多くは、基礎疾患を有している。高リスクの可能性のある病態を評価することは、治療を決定する上で重要である。一般に、高リスク因子が複数存在する場合、治療開始の閾値は低くなる。
 

重症度

COVID-19の重症度は、主にベースラインを超える呼吸補助の必要性によって定義される。1) 入院しているがベースライン以上の酸素投与を必要としない、2) 入院しており、鼻カニューレによる酸素投与を必要とする、3) 入院しており、高流量鼻カニューレ(HFNC)またはBiPAPなどの非侵襲的換気(NIV)による酸素投与を必要とする、4) 人工呼吸器(MV)またはECMO。
酸素投与またはそれ以上の呼吸サポートを必要とする患者に対しては、抗ウイルス療法と抗炎症療法が有効である可能性は高い。抗ウイルス療法は、酸素を必要とするが、HFNC、NIV、MVなどの高度な呼吸補助を必要とするまでに進行していない患者に最も有効であることが示されている。抗炎症療法は、より高度な呼吸器サポートを必要とする患者に対して最も有益であるとされている。
 

入院小児患者におけるレムデシビル

提言3.3:

COVID-19で入院し、ベースライン以上の酸素投与または非侵襲的人工呼吸を必要とする12歳以上の小児患者に対しては、レムデシビルの使用を提案する。
 

コメント

上記のように、12歳以上の小児患者は重症化リスクが高い。この年齢層の患者がCOVID-19のためにベースライン以上の呼吸サポートを必要とする場合、レムデシビルを投与することを提案する。
 

提言3.4:

COVID-19で入院している12歳未満の小児患者で、ベースライン以上の酸素投与または非侵襲的人工呼吸を必要とし、COVID-19が重症化リスクがない場合は、レムデシビルの投与を考慮する。
 

コメント

重症化するリスクは、年少児の方が低い。12歳未満で、重症であるが危険因子がない場合、レムデシビル投与を考慮してもよい。
 

提言3.5:

COVID-19で入院している12歳未満の小児患者で、ベースライン以上の酸素または非侵襲的人工呼吸の補助が必要であり、重症化リスクが中等度または高いか、呼吸が急速に悪化している場合、レムデシビル投与を提案する。
 

コメント

12歳未満に対するレムデシビルの有益性のエビデンスは不十分である。急速に進行している、重症化リスクが高い年少児に対しては、レムデシビルの潜在的な有益性はおそらくリスクを上回る。
 

提言3.6:

人工呼吸器またはECMOを必要とする患者には、レムデシビルの投与を考慮する。
 

コメント

レムデシビルは、人工呼吸器またはECMOを必要とする成人患者を対象とした臨床試験では有益性が示されていない。世界保健機関(WHO)、米国国立衛生研究所(NIH)、米国感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、この重症度の患者にはレムデシビルを使用しないことを推奨している。人工呼吸器またはECMOを必要とする小児に関して、レムデシビルを推奨する質の高いエビデンスは得られていない。

 

COVID-19で入院が必要な小児患者における抗炎症および免疫調節療法

重症COVID-19の成人に実施された無作為化試験で、副腎皮質ステロイドによる死亡率の減少が実証されている。WHO、NIH、IDSAガイドラインでは、重症または重篤な基礎疾患を有する一部の患者において、副腎皮質ステロイドの使用が推奨されている。
研究のほとんどは、デキサメタゾンを使用している。パネルでは、他のコルチコステロイドよりもデキサメタゾンの使用を推奨している。無作為化臨床試験では、入院中の成人患者を対象に、高用量デキサメタゾン(1日20mg×5日間、その後1日10mg×5日間)と通常治療(最も多いのは1日6mgのデキサメタゾン)の影響が評価された。低流量酸素療法を受けている患者のうち、デキサメタゾンの高用量投与群では死亡率が高かった。上記のエビデンスに基づき、体重40kg以上の患者に対する推奨用量は1日6mgである。体重40kg未満の患者に対する推奨用量は1日0.15mg/kgである。デキサメタゾンは、最大10日間静脈内または経口投与できる。
 
COVID-19で著明な炎症が認められる成人に対しては、ステロイド療法にトシリズマブなどのインターロイキン(IL)-6阻害薬やバリシチニブなどのヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬を追加することで、優れた転帰が得られるとされている。しかし、小児患者におけるこれらの治療法の使用に関する報告は極めて限られている。
 

COVID-19治療のための副腎皮質ステロイド

提言3.7:

酸素療法を必要とし、呼吸状態が悪化している患者には、デキサメタゾンの投与を考慮する。
 

コメント

RECOVERY試験では、入院中の成人6424人を、デキサメタゾン6mg/日、最大10日間投与する群と標準治療のみを行う群に無作為に割り付けた。プラセボ群と比較して、デキサメタゾン群では28日死亡率が有意に減少した(22.9% vs 25.7%、RR:0.83、95%CI:0.75-0.93、P<0.001)。デキサメタゾンの使用は、ベースライン以上の酸素投与が必要な入院患者、またはより高いレベルの呼吸器サポートが必要な入院患者への使用に限定されている。
 

提言3.8:

COVID-19で入院し、ベースライン以上の高流量酸素療法、非侵襲的換気補助、機械的換気を必要とする患者には、デキサメタゾンを投与することを提案する。
 

COVID-19の治療における他の免疫調節薬の使用

提言3.9:

COVID-19で入院している患者のうち、非侵襲的陽圧換気、機械的換気、ECMOを必要とする患者、悪化している患者、著明な炎症が認められる患者には、他の治療に加えてトシリズマブまたはバリシチニブを考慮する。
 

コメント

18歳未満の患者における免疫調整薬の使用を支持する証拠はきわめて限られている。しかし、COVID-19による重症の小児患者で、非侵襲的換気、機械的換気、ECMOを必要とし、悪化傾向、著しい炎症が認められると定義された患者には、免疫調節薬の追加投与が考慮される。このような患者には、上記のようにデキサメタゾンも投与すべきである。
 
成人で最もよく研究されている抗炎症薬には、インターロイキン-6(IL-6)阻害薬トシリズマブとヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬バリシチニブである。JAK阻害薬とIL-6阻害薬は併用してはならない。
 

バリシチニブ

バリシチニブは関節リウマチおよび円形脱毛症の治療薬として承認されているJAK阻害剤である。COVID-19で入院した成人8156人を対象とした無作為化非盲検臨床試験において、死亡率を低下させた。2022年、バリシチニブは、酸素投与、非侵襲的または侵襲的人工呼吸、ECMOを必要とする成人におけるCOVID-19の治療薬としてFDAに承認された。米国では、この薬剤は2歳から18歳未満の患者を対象としたEUAでのみ使用可能である。2歳以上9歳未満の小児に対するEUA推奨用量は1日1回2mgであり、9歳以上の小児に対する推奨用量は1日1回4mgである。バリシチニブは錠剤のみ入手可能である。
非侵襲的人工呼吸、機械的人工呼吸、またはECMOを必要とする小児患者において、デキサメタゾンに加えてバリシチニブの使用を検討することは妥当である。
 

トシリズマブ

トシリズマブは炎症性サイトカインIL-6の受容体を阻害するmAbである。大規模ランダム化臨床試験では、重篤なCOVID-19の成人患者、およびC反応性蛋白(CRP)値が75mg/L以上で酸素投与を必要とした成人患者において、トシリズマブの投与はプラセボと比較して死亡リスクが低く、回復がより早いことが明らかになった。
トシリズマブは、全身性ステロイドと呼吸補助を受けている成人患者におけるCOVID-19の治療薬としてFDAにより承認されている。また、JIAなどで2歳以上の患者への使用も承認されている。米国における小児患者のCOVID-19の治療では、トシリズマブはEUAの下でのみ入手可能である。体重30kg未満の患者に対するEUA推奨用量は12mg/kgであり、体重30kg以上の患者に対する推奨用量は8mg/kgである。トシリズマブは単回静脈内投与される。
 

モノクローナル抗体とCOVID-19回復期血漿

提言3.10:

COVID-19で入院が必要な患者に対しては、mAb療法や回復期血漿をルーチンで使用しないことを提案する。慎重に選択された患者に対しては、ケースバイケースで考慮してもよい。
 

コメント

COVID-19回復期血漿(CCP)またはmAbsは、パンデミックの初期に治療戦略として登場した。mAbsは予防薬として、初期の軽症から中等症に対する治療薬として有効性を示した。入院中の成人患者を対象とした大規模なランダム化比較試験では、mAbを投与された患者の転帰は改善しなかった。mAbはCOVID-19の入院小児患者への使用は推奨されない。
CCPは、パンデミックの初期に入院患者に広く使用された。しかし、ランダム化比較試験で、COVID-19成人患者には効果がないことが示された。CCPは入院中の小児患者への使用は推奨されない。

米国の小児COVID-19のガイダンス 外来編

今日の外来で、素敵な似顔絵を頂いたので、プロフィール画像を変更してみました。

第2回目です。外来治療編になります。

第2節 COVID-19による入院を必要としない小児患者におけるCOVID-19の治療

提言 (図3):

Management of COVID-19 in children and adolescents not requiring hospitalization for COVID-19.
 
図3.
 
COVID-19による入院を必要としない小児患者におけるCOVID-19の管理。
重症化リスクに関しては、先日に記事をご確認ください。
 

提言2.1:

入院を必要とせず、重症化リスクが低いSARS-CoV-2感染の小児患者に対しては、SARS-CoV-2に対する特異的治療を行わないことを提案する。
 

コメント

ほとんどの小児患者にとって、COVID-19が重症化するリスクは非常に低い。小児患者に対する治療の有益性は確立されておらず、潜在的リスクと釣り合うものではない。
 

提言2.2:

入院を必要とせず、重症化リスクが中等度の小児患者に対しては、症例ごとにSARS-CoV-2に特異的治療を考慮する。
 

提言2.3:

入院を必要とせず、重症化リスクが高い小児患者に対しては、SARS-CoV-2に特異的治療を提案する。
 

提言2.4:

入院を必要としない小児患者で、特異的治療が考慮または提案される場合、以下のいずれかの薬剤の使用を提案する:ニルマトレビル/リトナビル(パキロビッド)、レムデシビル(ベクルリー)、モノクローナル抗体(mAb)製剤。これらの選択肢がない場合、18歳以上の患者にはモルヌピラビル(ラゲブリオ)による治療を考慮する。
 

コメント

COVID-19の重症化予防に対する最も適切な治療法の選択は、入手可能か、禁忌(特にニルマトレビル/リトナビルの薬物相互作用)、投与しやすさ、費用、患者・保護者の意向によって決定されるべきである。治療はできるだけ早く、症状発現から5日以内に開始すべきである。mAb製剤は、流行中のSARS-CoV-2の変異株に対する活性が期待できるかよって決まる。早期の外来治療で推奨される治療期間は、ニルマトレビルは5日間、レムデシビルは3日間、モルヌピラビルは5日間である。モルヌピラビルの効果は低い。
 
(清水追記)国内での承認
ニルマトレルビル・リトナビル:12歳以上かつ体重40kg以上
レムデシビル:体重3.5kg以上(臨床試験は生後28日以降の小児)
モルヌピラビル:18歳以上

提言2.5:

入院を必要とせず、重症化するリスクが高い免疫不全の小児患者には、重症化予防のために高力価の回復期血漿の投与を考慮する。
 

コメント

回復期血漿の有用性は、免疫不全者、特に重度の抗体欠乏患者において高い。早期投与(できるだけ早く、発症から8日以内)が望ましい。
 

提言2.6:

入院を必要とせず、重症化リスクが低いか中等度の免疫不全患者に対しては、重症化予防のための回復期血漿の定期投与は行わないことを提案する
 

コメント

重症化リスクが低〜中等度である免疫不全の患者は、治療の恩恵を受ける可能性が低い。
 
 
日本小児科学会も治療薬に関して、情報提供していますので、ご参照ください。

米国の小児COVID-19ガイダンス

 米国小児感染症学会(PIDS)から、小児のCOVID-19の予防と治療に関するコンセンサス・ステートメント(ガイダンス)が出ました。本文が長いので、4つの章がありますので、分けて紹介します。

 今回は第1章です。

第1章:COVID-19重症化リスクが高い患者を特定するためのリスクの層別化

第2章:外来で症状の悪化を防ぐための早期治療の推奨

第3章:入院で症状の悪化、重症化、死亡を防ぐための推奨

第4章:曝露前、曝露後のCOVID-19予防の推奨

Guidance for prevention and management of COVID-19 in children and adolescents: A consensus statement from the Pediatric Infectious Diseases Society Pediatric COVID-19 Therapies Taskforce.
J Pediatric Infect Dis Soc. 2024 Mar 19;13(3):159-185.
 本ガイダンスは、米国の21施設から小児感染症、小児感染症薬物療法、小児集中治療医学の専門家を集めたパネルいおいて作成した。重症COVID-19の危険因子に関するエビデンス、予防・治療的介入の安全性と有効性に関するエビデンスを評価し、成人で得られたエビデンスを小児に外挿するべきかどうか、またどのように外挿するべきかを評価した。これらのデータを専門家の意見と組み合わせて推奨を作成した。
 各項には、"recommend"(推奨する)、"suggest"(提案する)、"consider"(考慮する)の3段階の推奨が割り当てられている。
 

セクション1:リスクの層別化

提言1.1:

COVID-19に感染している小児において、適切な治療方針を決定するため、既往症、リスク因子、先行免疫の評価を考慮したリスク層別化を行うことを提案する。
 

提言1.2:

以下の条件をすべて満たす小児は、高リスク患者とみなされる:
 i.重症COVID-19の明確or可能性の高いリスク因子を有している。
 重度の免疫不全、肥満、糖尿病、未熟児、慢性心疾患、神経疾患(けいれん)、肺疾患(喘息を除く)は明確なリスク因子と考えられる。可能性の高いリスク因子は、鎌状赤血球症、軽度/中等度の免疫不全、神経疾患(トリソミー21)、慢性腎疾患、消化管・肝疾患などがある。
 ii.複数の(2つ以上の)併存疾患がある、重度またはコントロール不良の併存疾患がある、1歳未満または12歳以上で併存疾患ある、増悪する要素がある。
 iii.免疫正常宿主において、最新のワクチンを未接種または4ヶ月以内に感染していない。

提言1.3:

 重症COVID-19の明確な危険因子または可能性の高い危険因子を有するが悪化していない場合、あるいは免疫正常で事前免疫がある場合は、中程度のリスクと考える。
 

提言1.4:

重症COVID-19の危険因子を持たない小児は、重症COVID-19のリスクが低いと考えられる。

Risk stratification framework. Definite risk factors include immunocompromise, obesity, diabetes (type 1/2), prematurity, chronic cardiac, neurologic, or pulmonary disease (excluding asthma). Probable risk factors include sickle cell disease, mild/moderate immunocompromise, neuro-disabilities, chronic kidney, gastrointestinal or liver disease. Prior immunity is defined as up-to-date immunization or recent infection within the previous 4 months.

リスク層別化の枠組み
確実な危険因子:免疫不全、肥満、糖尿病(1/2型)、未熟児、慢性心疾患、神経疾患、肺疾患(喘息を除く)
可能性のある危険因子:鎌状赤血球症、軽度・中等度の免疫不全、神経障害、慢性腎臓病、消化器疾患、肝疾患など
事前免疫:最新の予防接種を受けたか、または過去4ヵ月以内に感染したものと定義
 

リスク層別化に関するエビデンスのまとめ

年齢

COVID-19の重症化リスクは、U字型の分布を示し、最もリスクが高いのは乳児期早期と思春期で、最もリスクが低いのは小学生である。未熟児が強い危険因子である(OR:2.77;95%CI:2.17-3.54)。
 

複雑な基礎疾患

先行するメタアナリシスでは、2つ以上の基礎疾患を有する小児では、重症化率が10倍まで上昇する。
 

事前免疫

最新の予防接種または最近の感染(過去4ヵ月以内)と定義される事前免疫は、重症化リスクを低下させる上で重要な役割を果たす。一価および二価のCOVID-19ワクチンは、オミクロン流行期に、小児を重症化から守るのに非常に有効(75%以上)であった。自然感染後にも同様の予防効果がある。しかし、事前免疫に関しては、考慮すべきいくつかの重要な注意点がある。第一に、過去の感染と予防接種の両方から生じる免疫は、時間の経過とともに弱まる。第二に、流行しているSARS-CoV-2の株がワクチンに含まれる株とどれだけ合致しているかを考慮することが重要である。第三に、免疫不全に関するものである。ワクチンと感染の両方に対する免疫学的反応は、免疫抑制の時期や程度によってさまざまに低下する。
 

免疫不全

SARS-CoV-2感染により、免疫不全の小児は予後不良のリスクが高い。最近の化学療法、好中球減少(ANC500/μL未満)、リンパ球減少(リンパ球絶対数200/μL未満)、骨髄破壊的前処置、移植片対宿主病、最近の造血細胞移植などは、重篤な免疫不全を引き起こす可能性があり、重症度の増加と関連している。軽度から中等度の免疫不全は、抗リウマチ薬(DMARDs)のような免疫抑制薬または免疫調節薬投与、またはPSL20mg/日未満と定義した。
 

血液疾患

鎌状赤血球症を有し、疼痛クリーゼ、急性胸部症候群、および関連する併存疾患の既往歴がある患者では、入院のリスクは増加するが、重篤な疾患のリスクは増加しない。
 

肥満と糖尿病

肥満は、重症化ORが2.26(95%CI:1.75-2.92)となり、明らかな危険因子である。糖尿病も、明らかな危険因子であった。糖尿病と肥満の両方を有する患者では、死亡の危険性が一般の小児の約4倍高い。
 

心臓および肺疾患

 重症COVID-19と、心疾患および喘息を除く肺疾患との関連については、一貫したエビデンスがある。重症化率は、心疾患では3倍、肺疾患では2倍高かった。肺高血圧症、気道の解剖学的異常、気管支肺異形成、睡眠時無呼吸、酸素/人工呼吸器依存状態は、重症化との関連が報告されている。一方、喘息は、重症化とは関連しない。心疾患と肺疾患の両方が併存する小児では、COVID-19で入院した後にICUでの治療が必要になる確率が20倍になる。
 

消化器疾患

COVID-19において慢性消化器疾患を有する小児患者が重症化するORは3.15(95%CI:2.22-4.46)。
 

慢性腎臓病

成人では慢性腎臓病(CKD)がCOVID-19重症度の予測因子としてよく報告されているが、小児ではあまり明らかではない。
 

神経発達症および精神疾患

注意欠陥多動性障害ADHD)、不安、うつ病などの精神疾患は、入院リスクの増加と関連しているが、必ずしも重症化するわけではない。けいれん性疾患などの神経疾患を有する小児は、リスクが高い。てんかんは入院(aRR:1.97;95%CI:1.62-2.39)および重症化(aRR:1.71;95%CI:1.41-2.08)の危険因子の一つであった。神経発達障害(例えば、ダウン症脳性麻痺メタボリックシンドローム)も、リスク上昇をもたらす可能性がある。
 

 1歳未満は、そんなリスクでは無いように見えますが。