小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児は年間何回くらい風邪をひくのか??

「 子供は、1年間に何回くらい風邪をひいて、その原因は何か?」
プライマリ・ケアに関わる小児科医なら知りたい疑問ですが、なかなか答えがありません。非常に古い研究ですが、1年間に5−8回くらいという研究があります。
 当時と比較して、検査方法も進歩し、生活も変わってきたので、当然、風邪の内容も変化していると思いますが、新しいコホート研究が出ました。米国のシンシナティからの報告です。

 
 
<要点>
・0−2歳の間に、年間9.4回のウイルス感染を経験する
・その内、63%は無症候性感染(症状がない)
・RSウイルス、パラインフルエンザ type 2、インフルエンザは、感染すると症状が出やすい。(無症候性感染は少ない)
・感染しても、入院・救急外来受診が必要なのは4%のみ
 

 
Burden of Respiratory Viruses in Children Less Than 2 Years Old in a Community-based Longitudinal US Birth Cohort.
Clin Infect Dis. 2023 Sep 18;77(6):901-909. 
 
背景
 呼吸器ウイルス感染症は、幼児において非常に多い疾患であり、入院の主な原因でもある。しかし、集中的にモニタリングしたコミュニティでの前向きコホート研究がなく、呼吸器ウイルス感染症、特に無症候性症例の疾病負担は分かっていない。
 
方法
 PREVAILコホート試験を実施した。PREVAILコホートは、米国疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)が実施したオハイオ州シンシナティ市における出生コホートであり、0歳から2歳まで追跡した。急性呼吸器疾患(ARI)は、咳または発熱(38℃以上)と定義された。毎週、鼻腔スワブを採取し、16種類のウイルスを検出するLuminex Respiratory Pathogen Panelを用いて検査した。ウイルス感染は、陽性検査から30日以内に同じウイルス(亜型)による陽性検査が1回以上あった場合と定義した(つまり2回同じウイルスが検出されたことと定義)。母からの情報と電子カルテシステムから医療機関への受診を確認した。
 
結果
 2017/4~2020/7に、245組の母子ペアを対象に、追跡した。13781件の鼻腔スワブを検査し、合計2211件のウイルス感染が検出され、うち821件(37%)が有症状であった。対象小児は、9.4回/年の呼吸器ウイルス感染を経験し、半数はライノウイルス/エンテロウイルスであった。さらに、3.3回/年のウイルス性ARIを経験した。救急外来受診または入院に至ったのは、RSウイルス感染症の15%、インフルエンザウイルス感染の10%、ウイルス感染症全体では4%のみであった。病原体にかかわらず、ほとんどの感染は無症状または軽度であった。
 
結論
 呼吸器ウイルス感染症は0~2歳児に多く見られた。ほとんどのウイルス感染症は無症状であるか、医療機関受診を必要としないものであり、コミュニティベースのコホート研究が重要であると言える。

 

論文のアブストラクトには記載がありませんが面白いデータがいくつかあります。

 

1)ウイルスにより、症状が出る割合がぜんぜん違う

 ライノウイルス・エンテロウイルスは73%、ボカウイルスは84%が無症状であるのに、RSウイルスは24%、インフルエンザは35%、パラインフルエンザウイルスは45%が無症候性感染。インフルエンザで、「兄弟一人だけ感染しなかったんですよー」とお話されるご家族がたまにいらっしゃいますが、まあ、感染してたんだろうな、と納得します。アデノウイルスは、50%が無症候性感染です。アデノは、感染すると高熱のイメージですが、無症候性感染が多く、びっくりです。

 

2)2歳までの罹患率

ライノウイルス・エンテロウイルス100%、パラインフルエンザウイルス82%、コロナウイルス79%、ボカウイルス77%、RSウイルス66%。このあたりが上位です。これまで、RSウイスル以外に、あまり検査手段が無かったので「some viral infection」としていたのが、このあたりのウイルスなんだと思います。

 

3)ウイルスにより症状も違う

  アデノ、インフル、RSVあたりは、しっかり熱が出る。RSVは、嘔吐・下痢が結構多い。咳は、RSVとインフル、パラインフル、ヒトメタニューモウイルスなどが多い。

 

4)流行タイミング

 アデノ、ボカ、ライノ・エンテロは、年間を通してずっと流行している。無症候性感染が多いので、流行に気づかれていない?コロナ、インフル、RSVなどは季節性がはっきりしている。パラインフルエンザは、いろんな型が入れ替わり流行っている。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

心臓外科手術のSSI予防は、閉創時の抗菌薬血中濃度が重要

 外科手術を行う際には、皮膚切開の前に予防的抗菌薬を投与します。皮膚切開を行う時に、血中濃度が十分に高ければ、そこから創部に菌が入らないという理屈です。心臓外科手術後の創部感染(SSI)は、縦隔炎や胸骨骨髄炎など重篤なケースが多く、入院期間の延長や医療コストの増加などが問題となります。
 本研究は、心臓外科手術(成人)において、術中のセファゾリン血中濃度を測定し、SSIのリスク要因を見たものです。セファゾリン血中濃度を測定することは、現状では、厳しいのですが、術中も常に必要な血中濃度をできれば、SSIも減ることが期待できるかもしれません。
 
要点
 心臓外科手術後のSSI予防には、閉創時のセファゾリン血中濃度が重要で、104mg/Lを維持できるようにする。
 
Antimicrobial Prophylaxis for Patients Undergoing Cardiac Surgery: Intraoperative Cefazolin Concentrations and Sternal Wound Infections.
Antimicrob Agents Chemother. 2018 Oct 24;62(11):e01360-18.
 
要点
本研究は、心臓手術後の胸骨創部感染と予防的抗菌薬の薬力学の特徴を明らかにするために実施した。手術時間と閉創時のセファゾリン血中濃度が、30日後の手術部位感染(SSI)と独立して関連していた。手術時間346分以上閉創時のセファゾリン血中濃度104mg/L未満が、感染リスクが有意に増加する閾値であった。この研究は、人工心肺を用いた心臓手術を受ける患者における効果的な予防的抗菌薬(AP)の投与戦略に役立つ新たなデータを提供する。
 
概要
・人工心肺(CPB)を使用する待機的心臓手術(2014年8月~2015年5月)におけるセファゾリン予防投与に関する公表された薬物動態試験のデータを用いて、二次的な薬力学的解析を行った。
・患者(CCr≧50 ml/分/72 kg)に、プロトコールに従ってセファゾリン予防投与を行った(皮膚切開前60分以内、手術中は4時間ごと、術後48時間は8時間ごとに投与)。
・初回投与の30分後、手術中の再投与直前、閉創15分以内に血液を採取し、血漿セファゾリン濃度(総濃度)および限外濾過液中セファゾリン濃度(遊離濃度)を測定した。
患者は入院中〜退院後までSSIについてモニタリングされ、抗菌薬投与を必要とするSSIを記録した。SSIの危険因子を単変量解析で検討し、有意な変数(P<0.1)を多変量ロジスティック回帰解析に組み入れ、感染との関連を検証した。
 
・40名の患者(男性62.5%;平均年齢65±10歳;平均体重88.1±16.3kg)が対象となった。
・手術の70%(28/40例)は冠動脈バイパス術、30%(12/40例)は単独の弁置換術/修復術であった。
・平均の術前セファゾリン投与量は23.5±5.4mg/kg、切開35±13分前に投与し、手術時間は278±74分であった。
・閉創時の平均セファゾリン濃度は98.8±55.6mg/lであり(図1)、遊離濃度は32.8±26.2mg/lであった。
・胸骨の表在性SSIが8例発症した。
・閉創時のセファゾリン濃度低値(P = 0.038;オッズ比[OR]=1.3/-10%)、手術時間の延長(P = 0.027;OR = 2.9/1時間の延長)がSSIと関連していた(AUROC = 0.789;95%信頼区間[CI]=0.583~0.996;Hosmer-Lemeshow P = 0.21)(図2)。手術時間が346分以上(60.0%対14.3%)、閉創時セファゾリン濃度が104mg/l未満(30.4%対5.9%)は、SSI増加が有意に増加する閾値であった。
 
結論:本研究は抗菌薬の薬力学、特に閉創時の血漿セファゾリン濃度が効果的な予防的抗菌薬投与に重要な役割を果たすことを支持する。

 

黒丸●がSSIを発症した症例です。1例を除き、血中濃度が100未満に低下しています。

 

 閉創時のセファゾリンの濃度とSSIの発症率をグラフで近似したものです。

 

小児へのプロトンポンプ阻害剤(PPI)の使用は、重症感染症のリスクを増加させる

 プロトンポンプ阻害剤(PPI)が、Clostridioides difficile感染症の原因になることは有名ですが、その他にも色々な弊害があることが示唆されています。

 これまで、小児では、PPIと骨折・急性腎障害・アレルギー・喘息・炎症性腸疾患との関連が指摘されてきました。(論文の本文より。知らなかった…)

 今回は、PPIと重症感染症の関連があるかを調べたフランスからの報告です。

 

要点
PPI使用により、重症感染症のリスクは約1.3倍になる。
・消化管以外にも、いろんな部位の感染症が増加する。
・ウイルス感染症も細菌感染症も増える。
・理由としては腸内細菌叢の変化や、胃酸による殺菌作用が無くなる、好中球機能が低下するなど色々考えられています。

結論

必要ないのにPPIを使わない!

 

Proton Pump Inhibitor Use and Risk of Serious Infections in Young Children.
JAMA Pediatr. 2023 Aug 14:e232900.
 
はじめに
 プロトンポンプ阻害薬PPI)は、常在細菌叢の変化または免疫系への作用により感染症を引き起こす可能性があると考えられている。しかし、小児を対象とした研究は少なく、一定の結果が得られていない。
 
目的
 PPI使用と小児における重症感染症との関連を評価すること。
 
方法
 本研究は、フランス保健データシステム(SNDS)から構築された母子EPI-MERES登録に基づいて行われた全国コホート研究である。2010年1月1日から2018年12月31日までに出生し、胃食道逆流症または胃酸関連疾患に対する治療として、PPIH2ブロッカー、制酸薬/アルギン酸塩の投与を受けたすべての小児を対象とした。重症感染症PPI使用との関連は、Coxモデルを用いて調整ハザード比(aHR)および95%CIにより推定した。
 
結果
 1,262,424人の小児(追跡期間中央値[IQR]、3.8[1.8-6.2]年)の内、PPI投与を受けた606,645人(男児323,852人[53.4%]、年齢中央値[IQR]、88[44-282]日)とPPI投与されなかった655,779人(男児342,454人[52.2%]、年齢中央値[IQR]、82[44-172]日)が対象となった。PPI投与により、重症感染症のリスクが上昇した(aHR、1.34;95%CI、1.32-1.36)。部位別では、消化管(aHR、1.52;95%CI、1.48-1.55)、耳鼻咽喉領域(aHR、1.47;95%CI、1.41-1.52)、下気道感染(aHR、1.22;95%CI、1.19-1.25)、腎尿路感染(aHR、1.20;95%CI、1.15-1.25)、神経系(aHR、1.31;95%CI、1.11-1.54)でのリスクの増加が確認された。細菌感染(aHR、1.56;95%CI、1.50-1.63)およびウイルス感染(aHR、1.30;95%CI、1.28-1.33)の両方についても、リスクが増加した。
 
結論
 本研究において、PPIの使用は小児における重篤感染症のリスク増加と関連した。プロトンポンプ阻害薬は、小児において明確な適応がない限り使用すべきではない。

 

 

 大規模なデータセットから、PPIが重症感染症のリスクのリスクとなることがわかります。あまり良く使う薬剤では有りませんが、好酸球性消化管疾患などでも使用が増えてきており、今後、注意が必要な知見かと思いました。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

膀胱尿管逆流の小児への抗菌薬予防投与は、尿路感染の発生を減らす

 乳児期早期の発熱の原因として、尿路感染症(UTI)はとてもメジャーな原因です。尿路感染→エコーで水腎症→膀胱尿管逆流→予防的抗菌薬というのが、小児科医がUTIを見た時の思考パターンです。
 UTIを起こした乳児に、抗菌薬予防投与をすると、UTI再発が減ることが分かっていました(RIVUR試験)。一方、UTIを起こす前にVURを見つけて、予防投与したら、意味があるのかは、よく分かっていませんでした。
 今週のNEJMに掲載された報告です。
要点
・欧州で実施された無作為化試験。
・中等症以上のVURがあるが「一度もUTIを起こしたことがない」患者を対象
・予防投薬を24ヶ月まで行ったところ、対照群と比較して、期間中に初回UTIを起こす頻度は有意に低下した。(21.2% vs. 35.6%)
・一方、腎瘢痕や腎機能には影響がなかった。
・Grade IV, Vの女児では、予防効果がより大きい。
 
Antibiotic Prophylaxis in Infants with Grade III, IV, or V Vesicoureteral Reflux.
N Engl J Med. 2023 Sep 14;389(11):987-997.
 
背景
 膀胱尿管逆流(VUR)(Grade III、IV、V)を有する乳児において尿路感染症(UTI)を予防するために、予防的に抗菌薬投与が有効がについては議論がある。
 
方法
 本研究は、欧州39施設で実施された医師主導の無作為化非盲検試験である。Grade III、IV、Vの膀胱尿管逆流(VUR)を有し、尿路感染症の既往歴がない生後1~5ヵ月の乳児を対象とし、24ヵ月間抗菌薬の予防投与を行う群(予防群)と治療を行わない群(無治療群)に無作為に割り付けた。主要評価項目は、試験期間中に初めて尿路感染症を発症することとした。副次的評価項目は、腎瘢痕の形成と24ヵ月時点の推定糸球体濾過量(eGFR)であった。
 
結果
 合計292人の対象者が無作為化された(各群146人)。約75%は男児で、年齢中央値は3ヵ月、235人(80.5%)がグレードIV・VのVURであった。Intention-to-treat解析では、初回尿路感染症は、予防群31人(21.2%)、無治療群52人(35.6%)に発生した(ハザード比、0.55;95%信頼区間[CI]、0.35~0.86;P=0.008)。1回の尿路感染症を予防するために、2年間治療する必要がある人数は7人(95%CI、4~29)であった。無治療の参加者のうち、64.4%が期間中に尿路感染症を発症することはなかった。腎瘢痕の発生率および24ヵ月時のeGFRは、両群間で大きな差はなかった。予防群の参加者は、緑膿菌大腸菌以外の細菌、抗菌薬耐性菌が原因菌となる尿路感染症を起こす割合が、無治療群の参加者より多かった。有害事象は両群で同程度であった。
 
結論
 Grade III、IV、VのVURを有する、尿路感染症の既往がない乳児において、抗菌薬の予防投与は、初回の尿路感染症の予防に僅かであるが、有意な利益があった。しかし、大腸菌以外の菌や抗菌薬耐性菌の増加が見られた。
 

・この図をみると、予防投与した群(オレンジ色の線)では、初回UTIを発症する頻度が10%強ほど低い事がわかります。
・しかし、生後2年間に尿路感染症を起こすのは、無治療群であっても約1/3程度と思ったより少ないです。(2/3の患者は何もしなくてもUTIにならない
 

・細かい図なのですが、予防効果については、男女差がかなりあります。
Grade IVとVの女児:予防投与により、尿路感染症を予防できる効果が高い
 Grade IVでハザード比 0.21 (N=36)、Grade Vでハザード比0.05 (N=17)。
 症例数が少ないため、95%CIが広いですが、興味深い結果です。
Grade IIIとGrade Vの男児予防効果がほとんどありません
 特にGrade VはN=99と多数の症例をフォローしているのに全く効果がない。Grade IVでも、女子ほど差がありません。男子は、VURがあっても、そもそもUTIを発症しにくい?
・筆者らが以下のように意見を書いていますが、納得できます。
「抗菌薬を継続的に予防投与することをルーチン化することは正当化されない。」
「Grade IV・VのVURを有する女児や初回尿路感染後の再感染を予防するために、予防的抗菌薬投与は考慮するべき」
For these reasons, we believe that the routine use of continuous antibiotic prophylaxis
is not justified and should be considered only in female patients with grade IV or V vesicoureteral reflux or to prevent reinfections that may occur after a first UTI.
 
 日本での応用を考えた時、1ヶ月検診でルーチンで腎エコーをするとかしない限り、UTI発症前のVURを見つけることはできないと思います。
 
 
 
参考:本文中でも取り上げられていますが、
 初回尿路感染を起こした後の予防に関しては、すでにRIVUR試験でST合剤がゆうこうであるとの報告があります。ST合剤の予防で、尿路感染症の再燃が約半分になります(再発率が24%→13%)。
Antimicrobial prophylaxis for children with vesicoureteral reflux. N Engl J Med. 2014 Jun 19;370(25):2367-76. doi: 10.1056/NEJMoa1401811.

クループは冷たい外気を吸い込むと症状が緩和される

 クループ症候群は、夜間の救急外来受診でよく見る病気です。突然、「犬が鳴くような」、「オットセイの鳴き声のような」咳が出て、受診します。(大抵、日付が変わるくらいの時間が多いです。)

 デキサメタゾンというステロイド投与とエピネフリン吸入で対応すれば、比較的早く良くなりますが、時々重症化します。

 今回は、クループ症候群に寒冷曝露が良いのではないかということで実施されたスイスからの報告です。

 

要点
デキサメタゾン内服後30分間の寒冷曝露は、クループ症候群の症状を緩和する。
・60分以降は変わらない。(デキサメタゾンが効いてくるため)
→デカドロン内服後、30分間、患者さんを屋外にいてください、というのはなかなか難しいのですが、受診までに時間がかかるときには、(冬なら)「車の窓を開けてきて」、とアドバイスするのも良いのでしょうか。

 

Outdoor Cold Air Versus Room Temperature Exposure for Croup Symptoms: A Randomized Controlled Trial.
Pediatrics. 2023 Sep 1;152(3):e2023061365.
目的
 クループ症候群は、小児の急性上気道閉塞の最も一般的な原因である。ステロイドによる治療効果は十分に確立されており、投与後30分で効果が発現する。今回、ステロイドの作用が発現するまで30分間、患者を屋外の冷気にさらすことで、軽度から中等度のクループ症状が改善するかどうかを検討した。
 
方法
 この非盲検単施設無作為化比較試験は、3次医療機関の小児病院の救急部に受診したクループ症候群でWestleyクループスコア(WCS)≧2の生後3ヵ月から10歳の小児を対象にした。参加者は、トリアージを受け、デキサメタゾン(0.6mg/kg)単回経口投与の直後に、屋外で冷気(10℃未満)に30分間曝露する群と屋内で待機する群に無作為に割り付けられた(1対1)。主要評価項目は、30分後のWCSが受診時点から2ポイント以上減少することとした。解析はintention to treatとした。
 
結果
 合計118人の参加者が、屋外の冷気に曝露する群(n = 59)と屋内で待機する群(n = 59)に無作為に割り付けられた。外気群では59人中29人(49.2%)が、室内群では59人中14人(23.7%)が、トリアージ後30分時点でベースラインからWCSが2ポイント以上低下した(リスク差25.4%[95%信頼区間7.0~43.9]、P = 0.007)。外気群の中等症患者は、30分時点で最も恩恵を受けた(リスク差46.1%[20.6-71.5]、P < 0.001)。
 
結論
 デキサメタゾン経口投与の補助として、屋外の冷気(<10℃)に30分間曝露されることは、クループ症候群の臨床症状の軽減に有益である。
 
Westleyスコアは以下です。本当は、真面目に点数をつけたほうが良いのでしょうが、大抵、当直の最も眠い時間なので、スコアをつけることはあまりやっていません…。

hokuto.app

 

 使用するデキサメタゾンの用量についても、色々と議論があります。0.15-0.5mg/kgと記載が多いのですが、すごく幅が広いです。個人的には、0.15mg/kgに近い量で使用しています。(というのは、当院では夜間に薬剤師が不在のため、使用できるデカドロンがエリキシル製剤しか無いんです。用量の調整がしやすい反面、内服の用量が多くなり、シロップ製剤を飲めない子は辛いです。また、アルコールが含まれており、酩酊する可能性もあります。)このスタディでは、0.6mg/kgのデカドロンが使用されており、すごく多い感じがします。

 クループ症候群は、夏にも見られるし、外気が10℃以下になる地域は、必ずしも日本では多くは無い気がします。その場合、冷気への曝露はなかなか難しいですね。スイスならではの研究かもしれません。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov