治療したほうが死亡率が低い。
下痢じゃない人に検査しても保菌を検出するだけなので、臨床症状からCDIの可能性が高い人に対してのみ、検査をすることが重要。
接触感染対策CPは、ガウン、手袋などを装着する感染対策です。耐性菌を保菌していたり、下痢症状がある患者などに適応されます。医療従事者にとっては、個人防護具PPEの着脱が面倒であり、コストもかかります。下痢については仕方ないと思うのですが、耐性菌に関しては、しっかり手指衛生ができていれば、接触感染対策は解除できるのでは?という発想で、いくつか研究があります。多くは、対策をやめても、MRSA伝播が増えなかったというものです。
小児に関しては、成人よりもケアが濃密に必要であり、泣いたり、鼻をこすったり(ほじったり?)、伝播のリスクも高そうなので、PICU、NICUなどでは接触感染対策は継続するのが一般的です。今回は、NICUを除く病棟(ICU含む)で接触感染対策をやめてみた研究です。
要点
・MRSA感染症患者、保菌者に対して、接触感染対策をやめても、院内発症MRSA感染症は増えなかった。
・心臓外科術前患者のMRSA保菌率も変わらなかった。
・全体として、接触感染対策を行う割合が減った。
・CP止める条件としては、手指衛生がちゃんとできていることですよ。
J Pediatric Infect Dis Soc. 2024 Feb 26;13(2):123-128.
背景
成人患者を対象とする多くの病院では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染・保菌者に対する接触予防策(CP)を廃止しているが、廃止に伴う悪影響は報告されていない。小児医療施設においても、同様に廃止してよいかは、不明である。
方法
2019年9月に3つの小児医療施設において、新生児集中治療室を除く全病棟で、MRSAに対するCPを中止した。全入院患者を対象に、院内発症MRSA感染のサーベイランスを行った。2017年9月ー2023年8月までの経過を検討した。
結果
766020 patient-daysのサーベイランス期間に、234件の院内発症MRSA感染症が発生した。CP中止後、発生率のITS slope(0.06、95%CI:-0.35~0.47、P=0.78)、intercept(0.21、95%CI:-0.36~0.78、P=0.47)に変化はなかった。これらのMRSA 感染症の総発生率に変化はなかった(発生率比=0.98、95%CI:0.74~1.28)。心臓手術前にスクリーニングを受けた患者におけるMRSA鼻腔内保菌率にも変化はなかった(比=0.94、95%CI:0.60~1.48)。接触感染対策を実施した頻度は、14.0%減少した。
結論
MRSAを保菌する小児患者に対してCPを中止しても、4年間のMRSA感染症の増加と関連していなかった。本研究は、同様の小児医療施設において、水平感染防止対策が良好に遵守されている状況下で、MRSAに対するCPの中止を検討することを支持するものである。
ウイルス迅速抗原検査は、日常診療で頻用される検査です。新型コロナウイルス以外にも、インフルエンザ、RSウイルスなど、毎日のように使用します。
この検査は、一般的に「感度が低く、特異度が高い」ので、偽陰性(感染しているけど検査陰性になる人)が多く、偽陽性(感染していないけど検査陽性になる人)は少ないのが特徴です。
今回、新型コロナウイルス迅速抗原検査で、偽陽性が継続的にみられた人の特徴が報告されました。
要点
・新型コロナウイルス迅速抗原検査で、偽陽性になりやすいのは、女性・自己免疫疾患のある人です。
N Engl J Med. 2024 Feb 22;390(8):764-765.
SARS-CoV-2に対する迅速抗原検査は、急性感染の診断に有効な手段である。
我々は、SARS-CoV-2の迅速抗原検査とRT-PCR検査をペアで受けた2つのコホート研究をもとに、研究を行った。偽陽性は、偶発的偽陽性(少なくとも1回の迅速抗原検査で陰性を示した参加者)と持続的偽陽性(少なくとも5日間の迅速抗原検査で陽性を示し、迅速抗原検査で陰性を示さなかった参加者)に分類した。
11,297人のうち、1.7%に少なくとも1回の迅速抗原検査の偽陽性が認められた。偽陽性191人のうち、13人は持続的偽陽性だった。持続的偽陽性の参加者のほとんどは、女性で(13人中12人)、Quidel QuickVue迅速抗原検査を使用していた(13人中12人)。持続的偽陽性の参加者は、自己免疫疾患の有病率が高かった(13人中6人 vs 178人中10人;オッズ比、14.4;95%信頼区間、3.2~59.9)。
SARS-CoV-2の検査は一般的に症状のある患者に対して行われるため、偽陽性の結果は臨床的には認識されない可能性がある。感染後や症状がないにもかかわらず、持続的な抗原検査陽性を認めた場合、この持続的偽陽性で説明可能と考えられる。偽陽性が持続し、自己免疫疾患の既往歴がある患者には、他社の迅速抗原検査で再検査を行うことが良いと考えられる。
セフィデロコルは、塩野義製薬が開発した耐性グラム陰性菌用の抗菌薬です。昨年、厚生労働省が承認し、日本でも発売予定です。
海外で、一足先に使用されており、赤色尿が出るという副反応が報告されています。
Cefiderocol Red Wine Urine Syndrome in Pediatric Patients: A Multicenter Case Series.
Pediatr Infect Dis J. 2023 Oct 20.
セフィデロコルは、小児での使用経験は限られている。本報告では、輸血を受けた免疫不全の小児3例が、セフィデロコルの投与により赤色尿または紫色尿を認めた事を報告する。血液製剤の鉄分との相互作用が考えられる。不必要な検査を避けるため、このような副作用が起きる可能性を認識し、血尿と区別することが重要である。
セフィデロコルは、ESBLおよびカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌、緑膿菌、Acinetobacter baumannii、Stenotrophomonas maltophiliaなどのカルバペネム耐性ブドウ糖非発酵グラム陰性菌に対して幅広い活性を有する。その側鎖部分は、鉄をキレートし、細菌の鉄輸送系を使用する複合体を形成してグラム陰性菌の外膜を通過する。
発熱性好中球減少症と肛門周囲炎のため入院した。セフェピム、メトロニダゾール、バンコマイシンを投与されたが、血液培養でNDM大腸菌が陽性となり、セフィデロコル、ポリミキシン-B、チゲサイクリンに変更された。2週間後、赤色尿を認めた。尿検査で、血尿は認めず、4日前に、1単位の赤血球濃厚液を投与されていた。セフィデロコル中止後に尿色は正常化した。
症例2 難治性B細胞性ALLの英国人の12歳の女児
CAR-T細胞療法を受けた。呼吸不全を発症した。喀痰培養からST合剤耐性のStenotrophomonas malophiliaが分離された。セフィデロコルを投与したが、2日目に赤みがかったオレンジ色の尿が認められた。セフィデロコルの投与開始前6日以内に3回の輸血を受けていた。尿検査では血尿は認められず、尿培養は陰性であった。セフィデロコルを中止した日に、尿の色は正常化した。
グラム陰性菌菌血症を発症し、リネゾリド、セフェピムおよびゲンタマイシンを投与し、次にメロペネムを投与した。カルバペネム耐性NDM産生大腸菌であることが同定された。メロペネムはセフィデロコルに変更された。投与開始の3日前に輸血を受けていた。セフィデロコル投与2日目に尿が紫色になった。尿はセフィデロコル投与中ずっと紫色のままであったが、14日間の投与を終える3日前に消失した。
結論
多剤耐性菌感染症でセフィデロコルを投与された小児の尿が赤色または紫色に変色した症例を経験した。尿検査によって、尿変色と血尿とを区別することができ、尿検査が正常であれば良性の病因が示唆されるため、血尿の原因についてさらに不必要な診断を行う必要はない。
米国小児感染症学会と米国感染症学会から、小児の化膿性関節炎のガイドラインがでました。ダイジェストサマリーの日本語訳です(一部、意訳しています)。
今回のポイントは、治療期間を短期にすることを推奨したことです。治療反応が良ければ、10−14日間の治療(静注+経口の合計日数)となります。また、生後6−48ヶ月では、Kingellaをカバーするレジメン(通常はセフェム系抗菌薬)も推奨されます。そうなると、関節液の塗抹所見などにもよりますが、MRSAカバーのバンコマイシン+Kingellaカバーのセファゾリン or セフォタキシムあたりの併用が、初期抗菌薬としては良いのかと思われます。(個人的な見解です)