Bacillus cereusは、食中毒の原因菌(セレウス菌)として有名ですが、菌血症を起こすことがあります。食中毒から菌血症を起こすわけではなく、カテーテル関連血流感染などが多いです。また、病院内でアウトブレイクすることがあり、過去には、汚染されたリネンやおしぼりが原因であったり、プレフィルドヘパリンの注射液が汚染されたことが原因であった事例があります。
薬剤感受性は、βラクタム系抗菌薬に耐性であることが多く、注意が必要です。国内から、成人の菌血症症例のまとめが出ていましたので、紹介します。
要点
・静脈内留置カテーテル感染(特に末梢ライン)が原因として多い。
・初期治療が適切であると、解熱が早い。
Clinical characteristics and antimicrobial susceptibility of Bacillus cereus blood stream infections
Ann Clin Microbiol Antimicrob . 2015 Sep 15;14:43.
背景
Bacillus cereusは、院内血流感染症(BSI)を引き起こす病原体の一つである。しかし、Bacillus cereus菌血症の抗菌薬感受性や臨床的特徴、経験的治療について報告したものは、ほとんどない。本研究の目的は、B. cereus菌血症患者から分離されたB. cereusの臨床的特徴と抗菌薬感受性を検討し、適切な経験的治療が、B. cereus菌血症患者の予後に及ぼす影響を分析することである。
方法
2003年4月から2012年3月までに東京大学医学部附属病院でBSI患者(成人)を対象に後方視的に検討した。臨床データは、カルテから収集した。抗菌薬感受性試験は、液体微量希釈法により行った。適切な経験的治療を受けた群と不適切な経験的治療を受けた群に、患者を分けた。主要評価項目は、BSI発症後4週間の死亡率とした。副次的アウトカムは、経験的治療開始後2日以内の解熱とした。
結果
B. cereus菌血症は29例であった。バンコマイシン、ゲンタマイシン、イミペネム耐性株は認められなかった。しかし、clindamycin耐性は65.5%、levofloxacin耐性は10.3%であった。主な感染巣は、静脈内留置カテーテル(69%)であった。本研究では、4週間の死亡率は、経験的治療が適切な群(9例)と不適切な群(20例)の間で有意差はなかった。しかし、経験的治療開始2日以内の早期解熱に関しては有意差があった(p=0.032)。
結論
B. cereus菌血症は、ほとんどが静脈内留置カテーテルによって引き起こされる。B. cereus菌血症の早期臨床的改善(解熱)のためには、適切な経験的治療が重要である。B. cereus菌血症に対する経験的治療として、バンコマイシンは適切な選択肢の一つである。
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症例
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年齢(中央値、範囲)
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65.3歳 (18-89)
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基礎疾患
糖尿病
悪性腫瘍
肝硬変
免疫抑制薬
好中球減少
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8
15
4
5
4
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感染巣
カテーテル関連感染
末梢静脈
中心静脈
その他
好中球減少性発熱
感染性心内膜炎
腹膜炎
不明
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20
15
5
5
2
2
1
4
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