2日連続のカテ先培養のネタですみません。
カテ先培養陽性で、subsequent bacteremia (late CRBSI)のリスクが高い菌は、MSSA (12.5%) > MRSA (9.9%) > 真菌(6.2%) > Gram陰性菌(4.3%)でした。
Gram陰性菌の中で、subsequent bacteremiaの頻度(SB率)に違いがあるか検討した論文です。Enterobacterに注意が必要です。
要点
・SB率は、Enterobacter spp.で高い。
・動脈ラインのカテ先陽性は、SB率が高い。
Gram-negative micro-organisms in patients without preceding bacteremia
Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2012; 31(6): 1027-33.
はじめに
グラム陰性菌は、カテーテル関連血流感染症(CRBSI)の原因となる。しかし、カテーテル先端の培養が陽性でも菌血症を伴わない場合、カテーテル先端へのグラム陰性菌の定着が患者の予後に影響するかどうかは不明である。
方法
本研究では、血液培養陰性のカテーテル先端にグラム陰性菌が定着した患者の転機を決定し,その後にグラム陰性菌による菌血症 (subsequent bacteremia) 発症の危険因子を同定した。オランダのユトレヒト大学医療センターで 2005 年から 2009 年の間に、カテーテル先端部の培養でグラム陰性菌が陽性であったすべての患者を後方視的に調査した。カテーテル抜去前48時間以内にグラム陰性菌による菌血症を発症した患者は除外した。主要アウトカム指標は、カテーテル抜去後のグラム陰性菌による菌血症である。その他のエンドポイントは、入院期間、院内死亡率、グラム陰性菌の菌血症の二次的な合併症、ICU入院期間である。
結果
248名の合計280本のカテーテル先端に、グラム陰性菌が定着していた。すでに血液培養が陽性であった67例が除外され、181名の213本のカテーテル先端が解析された。40例(19%)が、抜去後にグラム陰性菌血症 (subsequent bacteremia)を発症した。多変量解析では、動脈カテーテル(オッズ比[OR]=5.00、95%信頼区間[CI]:1.20-20.92)と消化管の選択的除菌(SDD)(OR =2.47、95%CI:1.07-5.69)が、グラム陰性菌菌血症の発症に関連していた。SDD を受けた患者の菌血症は,セフォタキシム耐性菌が多かった。死亡率は、subsequent bacteremiaを発症した群で有意に高かった(35%対20%、OR=2.12、95%CI:1.00~4.49)。
結論
カテーテル先端にグラム陰性菌が定着した患者では、subsequent bacteremiaの頻度が高かった。このことは、動脈カテーテル先端からグラム陰性菌が検出された場合、リスクの高い患者に先制攻撃的に抗菌薬を投与することが有用な可能性がある。
菌名
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SB率 (subsequent bacteremiaを
発症する割合) (%)
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Enterobacter spp.
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16/51 (31.3%)
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Escherichia coli
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5/24 (20.8%)
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Klebsiella spp.
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8/40 (20.0%)
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Morganella morganii
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2/12 (16.7%)
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Proteus spp.
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2/19 (10.5%)
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Serratia spp.
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1/11 (9.1%)
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Stenotrophomonas
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1/12 (8.3%)
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GNR複数菌
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6/29 (20.6%)
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上記の表をもとに、SB率 (subsequent bacteremiaを起こす確率)を求めてみました。Enterobacterでは高い確率でSBを起こすようです。