小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

コロナ陽性の乳児期早期発熱は、細菌感染症の合併が少ないかも

 最近、COVID-19の症例が増加しています。インフルエンザの流行がピークアウトしましたが、その分、コロナが増えている感じです。

 乳児期早期発熱(生後3ヶ月未満の発熱)では、基本的に細菌感染症の精査が必須です。つまり、血液検査、尿検査などを行います。しかし、コロナ陽性と分かっているケースでは、そこまでする必要があるのか?というのは、臨床医として疑問に感じていました。

 今回の報告は、PCRでコロナが検出された症例に関しては、細菌感染症の合併が非常に少ないという報告です。今後、状態の良い症例に限っては、少し精査を省略しても良いのかもしれません。

 

Urinary Tract Infection, Bacteremia, and Meningitis Among Febrile Young Infants With SARS-CoV-2 and Non-SARS-CoV-2 Viral Infections.
JAMA Netw Open. 2023 Jun 1;6(6):e2321459.
 
はじめに
米国小児科学会(AAP)のガイドラインでは、生後8~60日の乳児の発熱では、尿路感染症(UTI)、菌血症、細菌性髄膜炎を評価するよう記載されている。COVID-19パンデミック以降の疫学の変化により、リスク層別化が必要になっている。本研究では、SARS-CoV-2およびSARS-CoV-2以外のウイルスの検査を受けた乳児における尿路感染症、菌血症+細菌性髄膜炎を侵襲性細菌感染症(IBI)として、評価することを目的とした。
 
方法
2020年3月から2022年12月に、カナダの都市部の3次小児医療施設の救急外来で発熱の評価を受けた生後60日以下全員を対象とした。患者の気道検体を用いて、SARS-CoV-2を含むマルチプレックスPCR検査を実施した。髄液検査は担当医の判断に委ねた。最終診断は、培養検査結果と退院後14~28日の追跡調査によって確認した。
 
結果
対象となった乳児は、931名であった。年齢中央値(IQR)は生後38(25-49)日、547名(58.8%)が男児、428名(46.0%)が入院した。107名(11.5%)が尿路感染、菌血症、細菌性髄膜炎に罹患した。IBI(菌血症 or 髄膜炎)は20名(2.2%)であった。611名(65.6%)からウイルスが検出され、163名(17.5%)からSARS-CoV-2が検出された。尿路感染、菌血症、細菌性髄膜炎の有病率は、ウイルス陰性群(320人中67人[20.9%])と比較して、SARS-CoV-2以外のウイルスが検出された児(448人中35人[7.8%])では低かった。SARS-CoV-2が検出された児(163人中5人[3.1%])では、更に少なかった。SARS-CoV-2に合併した細菌感染症5例は、すべて尿路感染症であった。SARS-CoV-2群(163例中0例)および非SARS-CoV-2群(448例中5例[1.11%])では、ウイルス陰性群(320例中15例[4.69%])と比較して、尿路感染は有意に少なかった。
 
結論
SARS-CoV-2を含むウイルス感染症を検査した発熱を伴う乳児において、尿路感染、菌血症、および細菌性髄膜炎の有病率を評価した。SARS-CoV-2感染児におけるIBIのリスクが非常に低く、臨床医にとっては、管理を個別化(余計な細菌感染の精査をしなくても良い)できる可能性がある。
 
Prevalence of Any Infection and Invasive Bacterial Infections (IBIs) Specifically Among Febrile Infants According to Viral Status

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov