小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

成人の類白血病反応(白血球異常高値)を見たら

 先日、小児の類白血病反応(末梢血の白血球異常高値)について、イスラエルの報告を書きました。
 
 今回紹介するのは、成人の類白血病反応の原因と予後を検討した(これも)イスラエルからの報告です。感染症が最も多いのは小児と変わりませんし、実際に欠培養成立は12%と比較的高いです。しかし、虚血・ストレス(循環呼吸窮迫・腸閉塞・大手術)、炎症(膵炎・胆石発作など)、産科的疾患などもかなりの割合を占めています。
 
要点
WBC異常高値(類白血病反応)を見たら、まずは感染症を疑う。血液培養も取る。
・それ以外に、虚血・ストレス・炎症・産科的疾患も鑑別に挙げる。
 
Leukemoid reaction: spectrum and prognosis of 173 adult patients
Potasman I, et al. Clin Infect Dis. 2013; 57: e177.
 
背景
 白血病様反応(leukemoid reaction: LR)の予後は、主に基礎疾患に依存する。本研究の目的は、LR患者の原因と予後を調査することである。
 
方法
 血液悪性腫瘍ではない患者で、末梢血白血球数が30.0×10^9/μL以上の173名を対象とした。LRの原因と死亡要因を分析した。
 
結果
 LRは、成人の全入院の0.59%で見られた。年齢中央値は75歳で、20人は40歳未満であった。性別による差はなかった(女/男=88/85例)。平均白血球数は37.7×10^9/μLであった。白血球数が50.0×10^9/µLを超えた患者は14例(8.0%)であった。LR期間の中央値は1日であったが、39例では2日以上持続した。LRの原因は、感染症が最も多く(n=83、47.9%、95%信頼区間、40.7~55.4)、次いで虚血・ストレス(27.7%)、炎症(6.9%)、産科的疾患(6.9%)であった。WBC高値は、血液培養陽性(P = 0.017)とClostridium difficile毒素陽性(P = 0.001)と有意に関連した。140例(80.9%)に抗菌薬が処方された。入院中に死亡した症例は66例(38.1%)であった。LRが持続した患者の院内死亡率は61.5%であった。死亡との相関性が高かった因子は、年齢(オッズ比[OR]=1.051、P < 0.001)、感染症の診断(OR =2.574、P = 0.014)、敗血症(OR =3.752、P = 0.001)であった。
 
結論
 LRは、特に高齢者や敗血症患者において予後に影響を及ぼす。LRは、感染症、ストレス、炎症、産科的疾患を含む複数の原因がある。
 
Leukemoid reaction: spectrum and prognosis of 173 adult patients
Potasman I, et al. Clin Infect Dis. 2013; 57: e177.
 
背景
 白血病様反応(leukemoid reaction: LR)の予後は、主に基礎疾患に依存する。本研究の目的は、LR患者の原因と予後を調査することである。
 
方法
 血液悪性腫瘍ではない患者で、末梢血白血球数が30.0×10^9/μL以上の173名を対象とした。LRの原因と死亡要因を分析した。
 
結果
 LRは、成人の全入院の0.59%で見られた。年齢中央値は75歳で、20人は40歳未満であった。性別による差はなかった(女/男=88/85例)。平均白血球数は37.7×10^9/μLであった。白血球数が50.0×10^9/µLを超えた患者は14例(8.0%)であった。LR期間の中央値は1日であったが、39例では2日以上持続した。LRの原因は、感染症が最も多く(n=83、47.9%、95%信頼区間、40.7~55.4)、次いで虚血・ストレス(27.7%)、炎症(6.9%)、産科的疾患(6.9%)であった。WBC高値は、血液培養陽性(P = 0.017)とClostridium difficile毒素陽性(P = 0.001)と有意に関連した。140例(80.9%)に抗菌薬が処方された。入院中に死亡した症例は66例(38.1%)であった。LRが持続した患者の院内死亡率は61.5%であった。死亡との相関性が高かった因子は、年齢(オッズ比[OR]=1.051、P < 0.001)、感染症の診断(OR =2.574、P = 0.014)、敗血症(OR =3.752、P = 0.001)であった。
 
結論
 LRは、特に高齢者や敗血症患者において予後に影響を及ぼす。LRは、感染症、ストレス、炎症、産科的疾患を含む複数の原因がある。
 

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pubmed.ncbi.nlm.nih.gov