小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

カンジダ膿胸について

 膿胸は、もともと治療が難しい病気ですが、カンジダによる膿胸は数も少なく、非常に難治性です。小児にはもちろん少ないので、成人のデータを調べてみました。台湾からのデータです。
 膿胸の成立過程を2つに分類しており、近傍の感染巣(食道穿孔など)から波及したcontiguous infectionと、遠隔の感染巣や菌血症から波及したnon-contiguous infectionに分類します。そして、contiguous infectionの方が、予後が良いようです。
 
Report of a 63-case series of Candida empyema thoracis: 9-year experience of two medical centers in central Taiwan.
J Microbiol Immunol Infect. 2014 Feb;47(1):36-41. 
 
背景
カンジダ膿胸は、侵襲性カンジダ症の重大な合併症であり、死亡率が高い。しかし、カンジダ膿胸の治療については議論の余地がある。台湾中部の2つの医療施設において、カンジダ膿胸患者の治療と死亡率に関連する因子を分析するため後方視的研究を実施した。
 
方法
2002年10月から2011年9月までに、胸水からカンジダが検出された全患者のカルテレビューをした。患者の背景データ、治療方針、および死亡率に関連する因子を分析した。
 
結果
 研究期間中、102名の患者が確認された。うち63人が登録基準を満たし、解析された。患者の4分の3は男性であり、年齢中央値は69歳であった。35人(55.6%)の患者が連続感染contiguous infection(近くの感染巣からの波及)していた。粗死亡率は61.9%であった。分離菌はCandida albicansが最も多く、基礎疾患は悪性腫瘍が最も多かった。高齢、Charlson score高値、ショック、呼吸不全、連続感染ではない患者は死亡率が高かった。外科的介入を受けた患者の転帰は良かった。多変量解析では、ショック、呼吸不全、二次感染ではないことは、死亡リスク上昇と関連していた。
 
結論
 カンジダ膿胸は、死亡率の高い重篤な侵襲性カンジダ症である。ショック、呼吸不全、連続感染ではないケースは、死亡率の高い因子であった。外科的手術やドレナージは治療成績を改善する可能性がある。
 

 菌株としては、C. albicansが最も多いですね。一番コモンな菌が原因になることが分かります。
 

 ここで、注目したいのはcontigious infectionという概念です。近傍の組織の感染が波及して膿胸になったもので、本文中には「食道穿孔、肺炎、縦隔炎、傍脊髄膿瘍、横隔膜下膿瘍」が挙げられています。これらがあったほうが、死亡率が低いんですね。
 non-contigiousの場合には、近傍にフォーカスがないケースで、「腹腔内膿瘍、腸管虚血、腸管穿孔、カンジダ血症、他のフォーカスが指摘できない場合」で、こちらの死亡率のほうが高いです。