小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

プロカルシトニンとCRPが乖離した時、どうする?

 CRPは、発熱など感染症を疑う小児で確認する炎症反応のバイオマーカーです。プロカルシトニン(PCT)も、同様の炎症を表すバイオマーカーですが、細菌感染症に置いてCRPより鋭敏に上昇するために感度が良い、また、最近では抗菌薬終了の目安に使用されることもあります。
 一方で、PCT測定は、高価であり、医療経済の視点からは、どんどん測定できるものではありません。
 基本的には、CRPが上昇する疾患では、PCTが上昇するのですが、両者が乖離(つまり一方が上昇し、一方が正常値)の場合、どのようなことを考えるのでしょうか?小児を対象にした研究がありましたので、紹介します。
 
要点
CRPとPCTが乖離することは、結構多い(約30%)。
・PCTだけ高い→菌血症、低酸素、循環ストレスが多い
CRPだけ高い→局所に限局した感染症、炎症性疾患、術後の炎症反応上昇が多い
もちろん、CRPとPCTのみで、感染症を語ることはできないので、あくまで、参考にする値の一つとして捉えることが重要です。
Discrepancies between plasma procalcitonin and C-reactive protein levels are common in acute illness 
Acta Paediatr . 2016 May;105(5):508-13.
 
目的
プロカルシトニン(PCT)とCRPは、臨床的に異なる性質を持つ細菌感染症のバイオマーカーである。本研究は、入院中の小児における血清PCTとCRP値の乖離が生じる場合の意義を明らかにすることを目的とした。
 
方法
本研究は、PCTとCRPの同時測定を行った単一施設の後方視的研究である。PCT値またはCRP値のみが上昇した症例について、臨床的特徴、微生物学的所見、診断名を比較した。
 
結果
PCTとCRPを測定した635症例を調査し、そのうち29%に両者の乖離を認めた。PCTが上昇しCRPが低下した群は、PCTが低下しCRPが上昇した群に比べ、低酸素状態または循環動態が不安定な症例(14対0、p<0.001)および細菌感染症の症例(8対0、p=0.001)がより多く存在した。後者のグループは、局所的な細菌感染(3対18、p=0.009)、炎症性疾患(1対12、p=0.016)、外科手術後(1対19、p=0.001)と関連していた。糖尿病性ケトアシドーシスはPCTの著明な上昇と関連していた。
結論
PCTとCRP値の乖離は、急性疾患に罹患した小児の29%で認められた。どちらのバイオマーカーも細菌感染がなくても上昇する可能性があるが、PCTは菌血症の診断においてCRPよりも優位に立つ可能性がある。
 

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