不明熱の鑑別診断に、「副腎不全」があります。体内のステロイドホルモンが不足することにより、低血圧、低血糖、低Na血症などを来します。特に、体に強い侵襲が加わったときには、普段より多くのステロイドが必要になるので、「相対的副腎不全」(さらに必要となった分のステロイドを、追加で産生できない)も起きます。集中治療領域では、重要です。
さて、最近、副腎不全を起こしやすい患者さんの「熱はないけどCRPが上昇する」状態を経験する機会が何度かありました。感染でもないし、おそらく副腎不全なのですが、「熱もない副腎不全単独で、CRPは上昇するのか?」がよく分かりませんでした。(副腎不全が起きている時に、感染症も合併を合併してコンサルトをいただくケースが多いため、CRP上昇は感染症のせいと思っていました。)
今回は、韓国からの成人での報告です。副腎不全と診断されたケースで熱があるケースと無いケースで、臨床症状や血液検査を比較したものです。非常に面白い結果で、熱あり副腎不全と熱なし副腎不全で、CRPの中央値は、それぞれ11.2と4.3でした。どちらもかなり上昇しております。
要点
Clinical Characteristics of Patients with Adrenal Insufficiency and Fever.
J Korean Med Sci. 2021 Jun 14;36(23):e152.
背景
副腎機能不全では発熱が持続することが多いため、感染症と混同される可能性がある。本研究では、副腎不全と発熱を合併する患者の臨床的特徴と危険因子を明らかにすることを目的とした。
方法
韓国の3次医療施設に入院し、2018年3月1日から2019年6月30日の間に副腎不全と診断されたすべての成人患者(n=150)を対象とした。以下に該当する患者は除外した。1)副腎または下垂体の構造的問題が証明されている、2)副腎不全と診断される前6ヵ月以内に化学療法の既往がある、3)発熱を引き起こす可能性のある他の医学的疾患がある。
結果
対象患者のうち、45例(30.0%)が副腎不全の診断時に発熱していた。CRPの平均値は、発熱のある患者の方が高かった(11.25±8.54 vs. 4.36±7.13 mg/dL)。発熱のある患者では抗菌薬を変更した割合が高かった(33.3% vs 1.0%)。多変量ロジスティック回帰分析では、女性(オッズ比[OR]、0.32)は、発熱を伴う副腎不全のリスクが低い。6ヵ月以内の手術歴(OR、4.35)、全身筋力低下(OR、7.21)、咳嗽(OR、17.29)は、発熱を伴う副腎不全のリスクが上昇した。
結論
原因不明の発熱を有する患者、特に危険因子を有する患者では、副腎不全の可能性を考慮すべきである。
Table 2.Comparison of initial laboratory findings characteristics of adrenal insufficiency patients combined with fever to those without fever
Variables
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With fever (n = 45)
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Without fever (n = 105)
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Total (n = 150)
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||
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ACTH stimulation test
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|
|
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Basal cortisol, µg/dL
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8.11 ± 4.97
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6.92 ± 4.37
|
0.169
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7.28 ± 4.58
|
|
30 min cortisol, µg/dL
|
12.95 ± 4.51
|
12.27 ± 4.86
|
0.411
|
12.48 ± 4.75
|
|
60 min cortisol, µg/dL
|
12.71 ± 4.10
|
12.14 ± 5.05
|
0.472
|
12.31 ± 4.78
|
ACTH, pg/mL
|
22.84 ± 17.84
|
18.81 ± 19.44
|
0.252
|
20.06 ± 18.98
|
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CRP, mg/dL
|
11.25 ± 8.54
|
4.36 ± 7.13
|
< 0.001
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7.07 ± 8.39
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Sodium, mEq/L
|
135.65 ± 4.15
|
133.55 ± 7.18
|
0.060
|
134.21 ± 6.49
|
|
Potassium, mEq/L
|
3.90 ± 0.58
|
3.93 ± 0.59
|
0.797
|
3.92 ± 0.59
|
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WBC count, cells/mm3
|
3,218 ± 3,733
|
7,170 ± 3,601
|
0.116
|
7,484 ± 3,660
|
|
Eosinophil count, %
|
2.35 ± 2.62
|
2.57 ± 2.93
|
0.649
|
2.50 ± 2.83
|
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Albumin, g/dL
|
3.14 ± 0.43
|
3.35 ± 0.60
|
0.015
|
3.29 ± 0.56
|
|
Calcium, mg/dL
|
8.64 ± 0.59
|
8.76 ± 0.75
|
0.316
|
8.73 ± 0.71
|
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Glucose, mg/dL
|
136.48 ± 45.61
|
119.20 ± 39.55
|
0.041
|
124.32 ± 42.02
|
Data are presented as mean ±standard deviation.