日本国内でも、新型コロナに脳症を合併して死亡する例が報告されています。まだ、まとまった報告はありませんが、台湾から6例のケースシリーズが報告されました。
台湾では、新型コロナで亡くなった小児が10名いるそうですが、そのうち6名は、脳症→急性劇症型脳浮腫を呈していました。
要点
・全例で、発熱・意識障害・けいれん発作を認める
・けいれん発作から24時間以内に、劇症型脳浮腫の症状が出現する
・ショック、DIC、多臓器不全、ARDSが見られる
・IL-6、LDH、フェリチンなどが著明に上昇し、過剰な免疫反応が病態として考えうる
・全例で、発熱・意識障害・けいれん発作を認める
・けいれん発作から24時間以内に、劇症型脳浮腫の症状が出現する
・ショック、DIC、多臓器不全、ARDSが見られる
・IL-6、LDH、フェリチンなどが著明に上昇し、過剰な免疫反応が病態として考えうる
Fatal Fulminant Cerebral Edema in Six Children With SARS-CoV-2 Omicron BA.2 Infection in Taiwan.
J Pediatric Infect Dis Soc. 2023 Feb 27;12(2):99-103.
要約
SARS-CoV-2感染後の小児における急性劇症型脳浮腫は稀である。急速に進行することが多く、死亡率が高い。台湾で発生した6例の死亡症例について、臨床症状、検査所見、画像所見の詳細を報告する。全例が、初期にショックを呈し、5例に多臓器不全と播種性血管内凝固が急速に進行した。3例が、ARDSを発症した。炎症マーカー(IL6、フェリチン、LDH、Dダイマー)が、全例で有意な上昇を示した。炎症の過剰な亢進が、病態生理に関与している可能性がある。
内容
台湾でオミクロンBA.2が流行中の2022年4月13日から6月30日に、COVID-19後の急性劇症型脳浮腫の死亡例6例が報告された。小児のCOVID-19による死亡例は10例であるが、うち6人(60%)が劇症型脳浮腫になる。全員ワクチン未接種であった。基礎疾患のある患者はいなかった。
6例のうち、5例(83.3%)は5歳未満(2ー10歳2ヶ月)。全例に発熱、脳症症状(意識障害、幻覚、異常行動)、痙攣発作がみられた。全例が痙攣から24時間以内に劇症型脳浮腫を発症し、4例(66.7%)が痙攣重積を呈した。神経症状に加えて、全例がショック、5例が多臓器不全およびDIC、3例がARDSを呈した。
痙攣は、5例で単純型熱性けいれんに合致しなかった。3名が41℃以上の著明な発熱を呈していた。
41℃以上の高体温、単純型熱性けいれん以外の痙攣は、急性劇症型脳浮腫の手がかりとなりうる。病態には、炎症反応の過剰な亢進が関与している可能性がある。
小児の新型コロナの多くは、非常に軽症であることは間違えないのですが、患者数が増えると、このような死亡例が確実に増えます。急性脳症から、劇症型脳浮腫に至ると救命は極めて困難(後遺症のない退院はほぼ無理)な状況になります。
もともと基礎疾患のない子にも十分起きることなので、現状ではちゃんとワクチンを接種することが一番必要なんだと思います。