小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

EBVとCMVの伝染性単核球症は違うのか?

  以前、EBVによる伝染性単核球症では、眼瞼浮腫と発赤が見られることがあることをご紹介しました。扁桃肥大や頸部リンパ節腫脹により、リンパ液のうっ滞が生じて、眼瞼浮腫・顔面浮腫が生じるようです。
 今回は、サイトメガロウイルス(CMV)による伝染性単核球症は、EBVによるものと、臨床的に違いがあるのか検討した論文をご紹介します。
 
Clinical differentiation of infectious mononucleosis that is caused by Epstein-Barr virus or cytomegalovirus- A single-center case-control study in Japan
Ishii T, et al. J Infect Chemother. 2019;25:431.
 
緒言:伝染性単核球症(IM)は、急性ウイルス感染症であり、若年者に発熱、咽頭炎、リンパ節腫脹を呈することが多い。Epstein-Barr virus(EBV)がI、最も一般的なIMの原因であり、cytomegalovirus(CMV)がそれに続く。血清学的検査は精度、頻用性、結果判明までの時間に限界があることを考えると、症状や徴候、検査に基づいた鑑別ができれば有用であると考えられる。臨床的所見が EBV-IM と CMV-IM の鑑別に利用できるかどうかを評価した。
方法:単施設の後方視的症例対照研究である。2006年-17年に血清学的にEBV-IMまたはCMV-IMと診断された14歳以上の患者を評価した。患者の症状、身体所見、血算、血清バイオマーカーを比較し、3つの回帰モデルを作成した:モデル1(症状および徴候)、モデル2(モデル1に肝脾腫および血算を加えたもの)、モデル3(モデル2に肝機能を加えたもの)。
結果:EBV-IM患者122例(72.6%)、CMV-IM患者46例(27.4%)のうち、年齢中央値は25歳、82例(48.8%)は男性であった。年齢中央値はCMV-IM群の方が10歳高く(p<0.001),発症から受診までの日数の中央値はCMV-IM群の方が5日長かった(p<0.001)。ロジスティック回帰により、EBV-IMは、年齢が若い、発症から来院までの時間が短い、リンパ節腫脹、扁桃白苔、肝脾腫、異型リンパ球症、LDHγ-GTPの上昇によって予測されることが明らかになった。すべての回帰モデルのAUCは0.9以上であった。
結論:病歴と身体所見に、異型リンパ球増多および超音波検査(肝脾腫)を併用すると、EBV-IMとCMV-IMの鑑別に有用である。
 
EBVによる伝染性単核球症はCMVと比較して
・年齢が高い
・受診までの日数が短い
・顔面(眼瞼)浮腫はEBVにしか見られない
・頸部リンパ節腫脹が多い
扁桃白苔が多い
・肝脾腫が多い
・異型リンパ球が多い
・肝機能異常が派手
→一言でいうと
「EBVの伝染性単核球症は、若年者に多く、症状も検査結果も派手」
 

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