血液培養が陽性になった時に、Gram染色で菌体を認めないことがあります。偽陽性反応(本当は菌がいないのに陽性になった)のこともありますし、Gram染色で菌が見えないだけで本当に菌がいることもあります。
血液培養で塗抹陰性の時の鑑別診断です。
1. 菌量が非常に少ないため見えない
2. 難染性のためGram染色で見えない
3. 自己融解
4. 装置の偽陽性反応
1. 菌量が非常に少ないため見えない
Candidaなどの酵母は、増殖速度が遅く、全自動血液培養装置では菌量が少ない時点で血液培養が陽性と判断されることがあります。
2. 難染性のためGram染色で見えない
Helicobacter sp.やCampylobacter sp.はGram染色性が弱く見落とされる事があります。Fusobacterium nucleatum, Capnocytophaga sp.なども形態が特殊で見逃される事があります。
Mycobacterium sp.は、Gram染色では難染性であり、Ziehl-Neelsen染色が必要です。(血液培養では無いですが、元亀田フェローの黒田先生がGram-ghost bacilliとして結核菌のGram染色像を報告されています。)
3. 自己融解
肺炎球菌は、自己溶解酵素を産生して、菌体が消失することがあります。菌発育陽性シグナルが出てから長時間経過して、Gram染色した場合には、菌が自己融解し、見えない可能性があります。その場合には、抗原検出キットなどが補助的に使用できる可能性があります。
血液培養が陽性になったら、速やかに塗抹標本を作成し、平板培地で培養するのが重要です。
4. 装置の偽陽性反応
末梢血の白血球が著しく多い場合(白血病など)、白血球がCO2を産生し、血液培養陽性と判断されることがあります。陽性までの時間は短いことが多いようです。一方で、白血球数が少なくても、白血病で血液培養偽陽性となった報告があります。白血球が少なくても、末梢血中に白血病細胞があると、ボトル内で一過性に増殖し、CO2を産生することが可能性として考えられます。G-CSF投与により未成熟な白血球が末梢血に出現する影響も考えられているようです。
他に、ボトルへ接種した血液が過剰な場合も、偽陽性反応が出ます。
検査と技術 2019年12月号 川上先生の記事も参考にさせて頂きました。