小児の尿路感染症(UTI)は、コモンな疾患ですが、最適な治療期間については、よく分かっていません。成人では、なるべく短期治療を目指して、色々な研究が行われていますが、小児についてはエビデンスが少ないのが現状です。
この論文は、UTIと診断した小児患者に、内服抗菌薬治療を5日間または10日間行ったときの、治療成績を比較したものです。
要点
・10日間治療のほうが、治療失敗率が低い(0.6% vs. 4.2%)。
(治療失敗の定義は、6日目から14日目までにUTIを発症すること)
・筆者らは、5日間の抗菌薬投与で臨床的改善がみられた小児に対しては、短期コースを妥当な選択肢として考慮できる可能性があると考えている。
・ただし、経口抗菌薬での治療であり、先天性尿路奇形などの症例は除外されているため、日本のプラクティスとの違いが結構大きい。
・10日間治療のほうが、治療失敗率が低い(0.6% vs. 4.2%)。
(治療失敗の定義は、6日目から14日目までにUTIを発症すること)
・筆者らは、5日間の抗菌薬投与で臨床的改善がみられた小児に対しては、短期コースを妥当な選択肢として考慮できる可能性があると考えている。
・ただし、経口抗菌薬での治療であり、先天性尿路奇形などの症例は除外されているため、日本のプラクティスとの違いが結構大きい。
国内のプラクティスとの違いが結構ありますが、4.2%の治療失敗率はかなり高いように感じます。経過の良い症例では、5日と10日の間を取って、1週間位の治療が良さそうに感じます。
Short-Course Therapy for Urinary Tract Infections in Children: The SCOUT Randomized Clinical Trial.
JAMA Pediatr. 2023 Aug 1;177(8):782-789.
目的:小児尿路感染症に対する標準コース療法と短期コース療法の有効性を比較すること。
方法:尿路感染症に対する短期コース療法(Short Course Therapy for Urinary Tract Infections:SCOUT)無作為化臨床非劣性試験は、2012年5月から2019年8月まで、小児病院2施設の外来および救急部で実施された臨床研究である。2020年1月から2023年2月までのデータが解析された。対象は、5日間の(経口)抗菌薬投与で臨床的改善がみられた生後2ヵ月から10歳までの尿路感染症の小児である。5日間の治療を行った後、更に5日間の抗菌薬投与を行うグループ(標準コース療法)と、5日間のプラセボ投与(短期コース療法)を行うグループに無作為に割り付けた。
主要評価項目:主要評価項目の治療失敗は、初回フォローアップ受診時(11~14日目)までに症候性尿路感染症を発生した症例と定義した。副次的評価項目は、初回フォローアップ受診後の尿路感染、無症候性細菌尿、尿培養陽性、および耐性菌の消化管への保菌とした。
結果 :解析対象は、664例(女性639例[96%]、年齢中央値4歳)であった。標準コース群に割り付けられた328例中2例(0.6%)、短期コース群に割り付けられた336例中14例(4.2%)が治療失敗した。(絶対差3.6%、上限95%信頼区間5.5.%)。短期コース治療を受けた症例は、初回フォローアップ時までに無症候性細菌尿または尿培養陽性となる頻度が高かった。最初の追跡調査後の尿路感染症の発生率、有害事象の発生率、耐性菌の消化管保菌率に群間差はみられなかった。
結論:本ランダム化臨床試験では、標準コース療法に割り付けられた小児は、短期コース療法に割り付けられた小児よりも治療失敗率が低かった。しかし、短期コースの治療失敗率も低いことから、5日間の抗菌薬投与で臨床的改善がみられた小児に対しては、短期コースを妥当な選択肢として考慮できる可能性がある。