小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

葛西手術後の予防的抗菌薬について

 胆道閉鎖症は、まれですが、生後3ヶ月以内に葛西手術という手術が必要となる重篤な肝疾患です。葛西手術後には、胆管炎が頻発し、胆管炎を繰り返すと、肝臓の予後が悪くなり、肝移植が必要になるケースが増えます。
 そのため、胆管炎にならないように、術後はかなり長期に予防的抗菌薬を投与しますが、これまで、決まったプロトコールは有りませんでした。
 今回、中国の上海の病院から、180例(この数は驚きです!)の胆道閉鎖症に対して、静注抗菌薬の投与日数を7日間(短期間)と14日間(長期間)に割り付けた研究がでました。
要点
・長期抗菌薬投与をすると、術後早期の胆管炎や胆管炎を発症する回数は低下する。
・術後6ヶ月までフォローすると、胆管炎を発症する割合や肝臓の予後は変わらない

Preventive effect of prophylactic intravenous antibiotics against cholangitis in biliary atresia: a randomized controlled trial
Pediatr Surg Int. 2021 May 19. doi: 10.1007/s00383-021-04916-z.
 
目的:
 胆道閉鎖症(BA)は新生児肝疾患の一つであり,葛西手術が実施される。多くの患者が術後胆管炎を発症し,予後不良となる。予防的抗菌薬は経験的に基づき実施されており、標準的なレジメンはない。我々は、葛西術後胆管炎に対して、静注抗菌薬の予防投与のお効果を分析することを目的とした。
 
方法:
 2016年6月から2017年8月にかけて、単施設のオープンラベル無作為化臨床試験を実施した。BA患者180名を対象に、短期治療群(n=90)と長期治療群(n=90)に無作為に割り付けた。予防的静注抗菌薬をそれぞれ7日間と14日間投与した。主要評価項目は、葛西術後6カ月以内の胆管炎の発生率である。副次的評価項目は、葛西術後1ヵ月および3ヵ月以内の胆管炎発症率、胆管炎平均発症回数、黄疸の改善率、肝生存率、葛西術後6ヵ月以内の有害事象である。
 
結果:
 胆管炎の発症率は、intention-to-treat解析とpre-protocol解析で、短期投与群と長期投与群で同等であった(62% vs. 70%、p = 0.27)。黄疸の改善率や肝生存率は、両群間で有意差を認めなかった。早期発症の術後胆管炎(61%対38%、p=0.02)および胆管炎の平均回数(2.4±0.2対1.8±0.1、p=0.01)は、長期投与群のほうが低かった。
 
結論
 葛西術後胆管炎に対する一般的な予防策として、予防的抗菌薬の長期静脈内投与は短期よりよい可能性がある。
 
 
長期投与群
短期投与群
<静注抗菌薬>
セフォペラゾン/スルバクタム 50mg/kg 1日3回
ornidazole (メトロニダゾールの仲間) 10mg/kg 1日2回
14日間
7日間
<内服抗菌薬>
(1) サルファメトキサゾール 25mg/kg/日 分2 2週間
(2) セファクロル 40mg/kg/日 分2 2週間
(1)と(2)を交互に内服
6ヶ月
6ヶ月
サルファメトキサゾール25mg/kg/dayはトリメトプリムとして5mg/kg/日に当たる量のST合剤で良いと思われます。
全例に、術後ステロイド、ウルソデオキシコール酸、などの補助的な治療は共通。
 

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 有意差は無いものの、術後6ヶ月で、6%ほど胆管炎の発症率が低下し、0.5回くらい発症回数も減るのなら、やっても良い方法かと思いました。しかし、肝生存率は、有意差無いものの、短期の方が良いんですよね。

 ST合剤とセファクロルをローテーションしながら、内服させる方法はかなり斬新と感じました。

 抗菌薬投与に関連する明らかな合併症は無かったことが記載されており、術後2週間の投与は許容できると思いました。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov