小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児の膿胸・肺炎随伴性胸水の特徴

 重症化した肺炎の合併症として、膿胸と肺炎随伴性胸水は有名です。小児では、なかなかそこまでの重症例が少ないですが、まれに経験します。
 ポーランドからの報告で、膿胸と肺炎随伴性胸水を伴う肺炎の臨床的な特徴がまとめられています。
 
要点
・膿胸は、胸水のpHが低く、LDHが高く、糖が低い
・膿胸は、9割以上の症例でドレナージ+線維素溶解療法か、外科的治療が必要。
・肺炎随伴性胸水は、約半数の症例でドレナージ+線維素溶解療法が必要
 
Clinical characteristics of 323 children with parapneumonic pleural effusion and pleural empyema due to community-acquired pneumonia
J Infect Chemother. 2016 May;22(5):292-7.
 
背景
 小児における肺炎随伴性胸水および膿胸(PPE/PE)が増加していると、これまでに発表された複数の研究で明らかになった。本研究の目的は、ポーランド中央部の肺疾患センターで治療を受けた小児におけるPPE/PEの発生率、病因、臨床的特徴、治療方針、転帰を評価することである。
 
方法
 2002年1月〜2013年12月に、市中肺炎(CAP)に起因するPPE/PEを発症した小児(生後1カ月から18歳まで)を対象とした。臨床症状、画像、検査データを後方視的に解析した。
 
結果
 2002 年〜 2013 年に、CAP 症例は1,933 例が入院した。肺炎随伴性胸水または膿胸と診断されたのは323人(16.7%)であった。PPE/PEを合併する割合は、2002年の5.4%から2013年の18.8%に増加した。原因微生物はStreptococcus pneumoniaeが最も多く、起炎菌が判明している症例の66.7%を占めた。全例に抗菌薬が投与された。胸腔穿刺は22.6%、胸腔ドレナージ(線維素溶解療法も含む)は74.3%の症例で実施された。3%の症例で外科的介入が行われた。
 
結論
 12年間に当院で治療した小児CAP患者において、PPE/PE発生率が有意に上昇した。原因菌はS. pneumoniaeが最も多かった。PPE/PEに対しては、胸腔ドレーン挿入±胸膜内線維素溶解療法を伴う抗菌薬療法が有効であり、外科的介入はほとんど必要なかった。適切な管理により、CAP関連PPE/PE患児の全体的な予後は良好である。
 

 
膿胸
肺炎随伴性胸水
pH
7 (7-7.4)
7.5 (7.25-8)
LDH (IU/L)
7418 (2298-20191)
3319 (1081-8280)
糖 (mg/dL)
27 (10-52)
63.5 (26-78)
細胞数 (/μL)
NA
2750 (470-6800)
好中球(%)
80 (66-89)
72 (48-86)

 
膿胸
肺炎随伴性胸水
治療的胸水穿刺
0%
23%
胸腔ドレナージ
7.5%
13.1%
胸腔ドレナージ
+線維素溶解療法
75%
50.9%
VATS
17.5%
0.7%

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov