小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

生後6ヶ月−5歳に対する新型コロナワクチン(モデルナ)の有効性

 モデルナワクチンの有効性の報告です。

・6−23ヶ月、2−5歳の両年齢層において、成人(100μg)より少ない量(25μg)の接種で、良好な抗体上昇が得られました。

・COVID-19の予防効果は、36.8%(2−5歳)、50.6%(6−23ヶ月)でした。さすがにオミクロン流行期ですので、予防効果としてはかなり下がる印象です。

・副反応で、新たに懸念されるものはありませんでした。

 日本ではファイザーワクチンの生後6ヶ月以上への接種が承認されました。今後、接種を悩むケースも増えると思います。個人的には、接種を推奨しますが、議論があるところです。成人では既にオミクロン対応ワクチンが接種されている中で、「重症化率が低い年少児に対し、武漢株ワクチンを手放しで勧めることができない」現状はあります。

 理想的には、オミクロン対応ワクチンが、低年齢層でも使用できることなのですが、承認される頃には、オミクロンではない株が流行している可能性も高いので、難しいです。

Evaluation of mRNA-1273 Vaccine in Children 6 Months to 5 Years of Age.
Anderson EJ, et al. N Engl J Med. 2022. PMID: 36260859
 
背景
mRNA-1273ワクチン(モデルナ)の幼児に対する安全性、反応原性、免疫原性、有効性は明らかでない点が多い。
 
方法
 現在進行中の第2-3相試験において、第一部は用量選択のためのオープンラベル試験を実施した。第二部は、選択した用量を接種する観察者盲検プラセボ対照試験を行った。第2部では、幼児(生後6カ月から5歳)を3:1の割合で無作為にワクチン群とプラセボ群に割り付けた。ワクチン群にはmRNA-1273(25μg)を、プラセボ群にはプラセボを、28日間隔で2回投与した。ワクチンの安全性と反応原性を評価し、小児の免疫反応が、別の第3相試験で確認した若年成人(18~25歳)の免疫反応と比較して非劣性であるかどうかを判断することが主要評価項目であった。副次的評価項目は、mRNA-1273投与後のCovid-19の発生率を測定することであった。
 
結果
 第1部の安全性と免疫原性の結果に基づき、第2部では25μgの用量を用いた。第2部では、無作為割付により、2~5歳児3040名および6~23歳児1762名にmRNA-1273の25μg接種×2回、2~5歳児1008名および6~23歳児593名にプラセボを投与した。2 回目の注射後の追跡期間の中央値は、2~5 歳児コホートで 71 日、6~23 ヵ月児コホートで 68 日であった。有害事象は主に軽症かつ一過性のものであり、安全性に関する新たな懸念はなかった。57日目の中和抗体の濃度は、mRNA-1273の100 μgを接種した若年成人の1391(95%CI,1263~1531)に対し、2~5歳児で1410(95%CI,1272~1563)、6~23カ月児で1781(95%CI,1616~1962)であった。両年齢層の免疫反応は、成人と比較して非劣性であった。Covid-19に対する推定ワクチン効果は、B.1.1.529(omicron)が優勢であった時期に、2~5歳児では36.8%(95%CI, 12.5~54.0 )、6~23カ月児では50.6%(95% CI, 21.4~68.6 )であった。
 
結論
 mRNA-1273は、生後6カ月から5歳までの小児に25 μgを2回接種しても安全であり、若年成人と比較して劣らない免疫応答が得られることが明らかとなった。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov