緑膿菌は、さまざまな基礎疾患を持つ患者さんの気道感染を起こしやすい細菌です。有効な抗菌薬が限られていることから、治療に難渋することがしばしばあります。脳性麻痺のお子さんは、肺炎を起こすと重症化しやすく、緑膿菌の肺炎では苦労することがしばしばです。
緑膿菌やGNRが検出された場合、PICU入院率が上昇し、気管内挿管を要する割合が増加していました。
緑膿菌を定着させないことは、難しいです。しかし、(脳性麻痺のお子さんであっても)普段から不要な抗菌薬は使わない、使うとしてもなるべく狭域抗菌薬を使用するなどの配慮をすることにより、緑膿菌の定着を減らしたり、感受性の悪い緑膿菌が分離される頻度を減らすことは可能と思います。
Association Between Chronic Aspiration and Chronic Airway Infection with Pseudomonas aeruginosa and Other Gram-Negative Bacteria in Children with Cerebral Palsy
Lung. 2019;194:307-14.
目的:脳性麻痺(CP)の小児は、誤嚥やそれに続く肺炎・肺臓炎のリスクが高い。肺炎は、CP患者の入院、集中治療室(ICU)への入室、死亡の原因となる。死亡率の上昇にも寄与している可能性がある。気道の細菌叢が果たす役割は不明である。本研究では、グラム陰性菌(GNB)、特に緑膿菌による呼吸器感染と、入院を要する肺炎の頻度/重症度との関係を検討した。
方法:肺炎で入院したCP患者69名を、後方視的にレビューした。対象者は、細菌性肺炎で入院し、少なくとも1回の気道の培養を行い、BaxによるCPの定義を満たしている患者である。気道の培養結果に基づいて群を分けた。併存疾患、入院時の臨床情報、重症度について分析した。
結果:P. aeruginosaまたは他のGNBが分離された患者は、GNBが分離されていない患者に比べて、ICUへの入室(77.4%、65.1%、26.9%、p < 0.01)、気管内挿管(45.2%、39.5%、11.5%、p = 0.02、p = 0.03)、大量胸水(37.5、0%)の頻度が高かった。また、GNBが分離された患者は、GNBが分離されていない患者に比べ、入院期間が長く、複数回の入院をする傾向があった。
結論:小児CPにおいて、緑膿菌やその他のグラム陰性菌が分離されると、肺炎罹患率の上昇、入院期間の延長、PICUへ入室や気管内挿管を要する肺炎の発症と関連している。これらの因果関係、治療におけるグラム陰性菌に有効な抗菌薬の役割、小児CPにおけるGNB除菌療法の役割を明らかにするため、さらなる研究が必要である。