脳性麻痺などの重症心身障害児にとって、誤嚥性肺炎はコモンな疾患であり、入院の原因になります。自覚症状を訴えることができず、身体所見が取りにくいお子さんの誤嚥性肺炎を治療する時には、どうしても長期治療(CRP陰性化まで)となりやすく、抗菌薬も緑膿菌活性を有する広域のものを使いがちです。
ところが、実際には、どのような抗菌薬を何日間使うのが良いのかは、これまであまり研究されてきませんでした。
要点
・抗菌薬は、必ずしも緑膿菌カバーをしなくても良い。
・治療期間は7日間で良い。
・ASP介入により、治療期間を短くできる可能性がある。
Evaluation of the Treatment of Aspiration Pneumonia in Hospitalized Children
J Pediatric Infect Dis Soc . 2022 Mar 24;11(3):102-107.
背景
誤嚥性肺炎(AP)の治療は多様であり、最適な抗菌薬の選択と治療期間に関するエビデンスは不足している。本研究では、小児の誤嚥性肺炎に置いて、抗菌薬の種類と投与期間が、治療失敗に影響するか評価し、治療期間に対する抗菌薬管理プログラム(ASP)の介入効果との関連させた。
方法
APに対して入院して抗菌薬投与を受けた小児を、既存のASPデータベースをもとに対象患者を特定した。診断は、国際疾病分類9/10コードまたは医師が記載したAPと診断名が記載されたASP文書によって確認された。治療失敗(壊死性肺炎、肺膿瘍、膿胸、再治療)の発生率を、抗菌薬投与期間が短い(≤7日)症例と長い(>7日)症例で比較し、使用した様々な経験的治療薬/最終的な治療薬の間で比較した。治療期間は、ASPの介入を行った患者と行わなかった患者で評価した。
結果
419症例が対象になった。治療失敗が19例(4.5%)確認された。短期コースと長期コースの間に治療失敗の差は認められなかった(8件 vs 11件)。経験的治療薬(47.2%)と最終的な治療薬(67.5%)は、アミノペニシリン+β-ラクタマーゼ阻害薬が最も多く使用された。治療失敗率は,点滴治療の期間や経験的治療・最終的治療で選択された抗菌薬による差はなかった。治療期間に対するASPの介入により、治療期間が有意に短縮していた(6.28 vs 7.46 days; P = 0.04)。
結論
抗菌薬の投与期間が7日間以下でも、APの治療失敗が多くなることはなかった。抗菌薬選択および投与経路のいずれも治療失敗率に影響を及ぼさなかった。ASPによる介入は小児のAPの治療を最適化する可能性がある。
両群とも、年齢中央値は2歳、基礎疾患を持つ患者が約2/3を占める。人工呼吸器装着は約30%。半数以上が気管切開または経管栄養を行っている。
初期治療薬は、
3世代セフェム+クリンダマイシン 30.8%
クリンダマイシン 3.1%
3世代セフェム 2.2%
となりました。多くは、緑膿菌カバーをしなくて良いことが示唆されます。