最近、ノロウイルスによる胃腸炎が流行っています。新型コロナウイルス対策に、アルコールによる手指消毒が一般的になりましたが、ノロウイルスにはアルコールが効果的ではないことが影響しているのかもしれません。
要点
・ちょっと下痢回数や発熱の頻度が多いかもしれない。
Prospective Characterization of Norovirus Compared With Rotavirus Acute Diarrhea Episodes in Chilean Children
Pediatr Infect Dis J . 2010 Sep;29(9):855-9.
背景
近年は、ロタウイルスおよびノロウイルスが5歳以下の小児における中等度から重度の急性下痢症(ADE)の主要な原因である。ノロウイルスとロタウイルスによるADEの疫学的・臨床的特徴を比較することは、ノロウイルスのワクチン開発に必要な意思決定の一助となると考えられる。
方法
サンティアゴとバルパライソの医療機関の救急部(ED)と病棟、およびサンティアゴの4つの外来診療所で5歳以下の小児のADEに対するサーベイランスが実施された。診察後48時間以内に便検体を採取し、ELISA法でロタウイルスを、ELISA法またはrt-PCR法でノロウイルスを検出した。救急外来および病院でのロタウイルスおよびノロウイルスのADEについては、重症度に関連する臨床所見を観察するよう保護者に指示した。重症度の判定には20点満点のVesikari scoreを用いた。
結果
2006年7月から2008年10月までの間に、1913人のADE患者が登録された。うち331人(26%)および224人(18%)からロタウイルスおよびノロウイルスが検出された。病棟、救急外来、外来におけるロタウイルス陽性の割合は、それぞれ40%、26%~30%、13%であったのに対し、ノロウイルスは18%、17%~19%、14%であった。ロタウイルスとノロウイルスのADE患者の平均年齢は15.6カ月(IQR 9-20ヶ月)、15.5カ月(IQR 9-19ヶ月)と極めて類似していた。ロタウイルス感染症は秋から冬にかけてピークを示し、その2~3ヵ月後にノロウイルス感染症がピークに達した。Vesikari scoreの平均値(IQR)は,ロタウイルス(N=331)およびノロウイルス(N=224)でそれぞれ12.9(11-15)および11.9(9-14.5)(P = 0.003) であった(ロタウイルスの方が有意に重症)。ノロウイルスと比較して、ロタウイルスのADEは重症度スコア11-16の区間でより多く(P = 0.006)、 下痢回数が多く(P = 0.01)、発熱の頻度が高かった(P < 0.0001)。下痢の期間、嘔吐の有無・期間・程度、発熱の程度は、両ウイルス間で差がなかった。ロタウイルスとノロウイルスの混合感染はまれであり(1%未満)、臨床的に重症化することはなかった。年少児のADEの臨床的重症度は、年長児と比較して、ロタウイルスでは同程度、ノロウイルスでは低かった(P = 0.03)。
結論
ノロウイルスは、チリの小児における中等度から重度の流行性ADEの重要な原因である。ノロウイルスは、ロタウイルスより重症度は低いが、臨床的に中等度から重症が多かった。効果的なノロウイルスワクチンは、ADEに関連する疾病負担を軽減する上で、現行のロタウイルスワクチンに加えて大きな利益をもたらすと考えられる。