小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

Fusarium solaniによる髄膜炎

 メキシコで集団発生したFusariumによる髄膜炎アウトブレイク報告です。硬膜外麻酔の道具や薬品の汚染なのでしょうか?
 
Neurovascular Complications of Iatrogenic Fusarium solani Meningitis.
N Engl J Med. 2024 Feb 8;390(6):522-529. 
 メキシコで硬膜外麻酔による手術を受けた免疫正常者の間で、院内Fusarium髄膜炎アウトブレイクが発生した。Fusariumは脳幹および椎骨脳底動脈系の血管障害を併発し、死亡率が高かった。効果的な治療は限られており、この病原体のin vitro感受性試験から、米国で現在承認されているすべての抗真菌薬に対して耐性であることが示された。発症から診断までの期間の中央値は39日であった。患者13人のデータ、臨床経過、転帰を報告する。
 
要点
・2023年1月−5月に、メキシコのタマウリパス州のクリニックで硬膜外麻酔を伴う外科手術を受けた患者にFusarium solaniによる髄膜炎が集団発症した。
・患者は、若くて、免疫正常者がほとんど。
・米国内で、疑い例9例、可能性例14例、確定例10例が確認された。内、12例が死亡した。
動脈瘤、頭蓋内出血、脳梗塞水頭症など脳血管の障害が多く発生した。特に頭蓋底の異常所見が多い。
・検出されたFusarium solaniは、米国で市販されている抗真菌薬全てに耐性。
・試験的にホスマノゲピクスを使用した症例もある。
・剖検例では、血管炎、脳梗塞所見があり、肉芽腫なども見られた。