小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児の発熱性好中球減少症(FN)では、末梢静脈からも血培が必要か?

 小児のFNでは、血液培養の採取が必須です。多くの患者さんが、中心静脈カテーテル(CVC)を留置しているため、CVCからの逆流採血で血液培養を採取します。シングルルーメンのカテーテルでは、1セットということになります。血培の基本は2セット以上の採取ですが、FNの小児患者さんでは、なるべく痛みを与えないという点で、末梢静脈からの穿刺採血は避けられる傾向があります。当院でも、ほとんどがCVC逆流1セットです。
 今回、後方視的研究ですが、小児FN患者で、CVCに加え、末梢静脈からの血培を加えたら、菌血症の診断率が向上するかという研究が発表されました。
 個人的には、いきなり全例に末梢静脈からの血培を追加するのは難しいと思いますが、少なくとも重症例(敗血症性ショックが疑われる例など)では、積極的に末梢静脈からの血培を検討しても良いのかと思います。
 
 
要点
・小児のFNにおいて、末梢静脈穿刺からのみ血培が陽性になったケースは、全血培陽性例の24%と多い。
・末梢静脈から血液採取量が多かったという要因ではない。
→結論:小児FNでは、末梢静脈からの血培も採取したほうが良い
 
Usefulness of Peripheral Blood Cultures in Children With Cancer and Episodes of Fever and Neutropenia.
Pediatr Infect Dis J. 2023 Dec 6. doi: 10.1097/INF.0000000000004168. Epub ahead of print.
 
背景  
 発熱性好中球減少症(FN)の小児において、血液培養(BC)の採取は抗菌薬療法の指針となる重要なものであり、90%以上の患者に中心静脈カテーテル(CVC)が留置されている。このような集団において、末梢静脈からの血液培養採取の必要性についてのコンセンサスは得られていない。本研究の目的は、小児の発熱性好中球減少症(FN)における血流感染症の診断で、末梢静脈BCの有用性を明らかにすることである。
 
方法
 2016年‐2021年に、チリのサンティアゴの6病院で前向きに登録されたFNのエピソードを対象とした後方視的研究である。入院時にCVCおよび末梢静脈からBCを採取した。少なくとも1本BCが陽性トなった全エピソードを、CV・末梢一致(両者から同じ微生物)、CV・末梢不一致(両者から違う微生物)、CVのみ陽性、末梢のみ陽性のいずれかのグループに割り付けた。採取された血液量も記録された。
 
結果
241のFNエピソードが解析対象となった。年齢中央値は7.2歳、51%が女児、84%が血液悪性腫瘍、98%が高リスクFNのエピソードであった。全241エピソードのうち、135例(56%)がCV/末梢一致、13例(5%)がCV/末梢不一致、35例(15%)がCVCのみ陽性、58例(24%)が末梢のみ陽性であった。CVと末梢ので、採取された血液の検体量に有意差はなかった。
 
結論
末梢静脈の血培のみで原因菌が検出された血流感染症の割合は24%であった。採取血液量によるものではなく、これまでの報告よりも高かった。我々は、FNの小児において、CVだけでなく末梢静脈からも血液培養を採取することを推奨する。