未熟児や基礎疾患を持つ子どもに重篤な気道感染症を起こすRSウイルスですが、日本では、(高リスク集団に対して)パリビズマブの予防投与が行われます。流行期が始まる直前に接種を始めるのですが、色々と問題点があります。
問題点
1.高額薬剤なので、7回または8回(7−8ヶ月間)しか接種できない
2.流行時期が正確に予測できないし、年による差もある。もともと冬に流行する疾患でしたが、今は夏です。
海外では、半減期が伸びたニルセビマブが投与開始され、このような問題に悩まされることは少なくなりそうです。
(全国の流行状況|SmallBaby|スモールベイビー より引用)
本日、ご紹介する論文は、少し古いのですが、パリビズマブ(シナジス)の血中濃度が、接種開始後、どのように推移するかです。もともと、5回接種のところ、3回接種で良いのでは?という意図で行った研究ですが、3回接種では、4・5ヶ月目の血中濃度が低くなり、予防効果が低下することが示唆されます。
要点
・接種を止めると、1−2ヶ月後には、血中濃度が低下する。→予防効果がほぼ無くなるレベル。
Three monthly doses of palivizumab are not adequate for 5-month protection: a population pharmacokinetic analysis.
Pulm Pharmacol Ther. 2013 Dec;26(6):666-71.
要旨
はじめに
カナダのブリティッシュコロンビア州のガイドラインでは、RSV流行時期の前に出生した高リスク乳児に対してパリビズマブ投与を3ヶ月連続で投与すれば、RSV流行期の5ヵ月間に重症RSV感染症に対して十分予防できるとしている。しかし、パリビズマブの有効性は、5ヶ月連続で投与した2つの大規模ランダム化比較臨床試験で確立されている。2種類の投与レジメン(5カ月間のうち最初の3回のみ投与と5回投与)の間で予想されるパリビズマブ血中濃度の違いを評価することを目的とした。
方法
1800人の被験者を対象とした22の臨床試験から収集したパリビズマブのPKデータを用いて開発した集団薬物動態(PK)モデルを使用した。このモデルは、さまざまな小児試験で観察されたパリビズマブ濃度を適切に予測する事ができ、妥当性があると判断した。その後、未熟児慢性肺疾患を有する24カ月未満の小児および在胎35週未満の生後6カ月未満の乳児を対象に、3回投与と5回投与の比較で予想されるパリビズマブ血清中濃度のシミュレーションに使用した。
結果
未熟児を対象とした5回投与の平均トラフ濃度と比較して、3カ回投与では、4カ月目と5カ月目のパリビズマブの血清中濃度が低いことが示された。具体的には、4ヶ月目と5ヶ月目には、5回投与を受けた患者のトラフ値の下位5%に入る患者が、52%と85%となった。
結論
このモデルを用いたシミュレーションでは、RSV重症化予防のための3回投与レジメンは支持されなかった。