小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

オミクロン株に対する小児(5-11歳)ファイザーワクチンの効果

 今年から、コロナワクチンは、毎年の接種が推奨される見込みです。小児の接種率は、相変わらず向上せず、残念ながら、オミクロン株流行以降、コロナにより亡くなられたお子さんの報道が相次ぎました。
 ワクチンが有効であることは確かなのですが、オミクロン株では、その有効性が劣ること、効果が減弱することが問題でした。
 本研究は、米国カリフォルニア州で実施された、テストネガティブスタディです。間接的にワクチン効果を推定する方法で、インフルエンザワクチンの効果などを見るためによく使う手法です。
 ワクチンの効果は減弱するものの、追加接種により、効果がかなり回復することが分かり、救急受診の頻度が減ることが期待できます。
 
要点
・5歳から11歳の1:1テストネガティブデザインにおいて、オミクロン株流行期の救急外来や緊急受診に対して、BNT162b2が有効かを検討した。
・ワクチン効果は、2回接種後3カ月未満で60%[95%CI:47-69]、3カ月以上では28%[8-43]に減弱した。
・追加接種により、効果は77%[53-88]に改善された。
 
BNT162b2 Against COVID-19-Associated Emergency Department and Urgent Care Visits Among Children 5-11 Years of Age: A Test Negative Design.
J Pediatric Infect Dis Soc. 2023 Apr 18;12(3):177-179.
 
背景
 ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンBNT162b2は、5−11歳の小児には、21日間隔で2回の10μgが投与される。2回接種後、5カ月以上経過してから追加接種が認可されている。これまでは、2回接種後の最初の数カ月間は、オミクロン株への感染や入院を減少させる予防効果が示されている。しかし、効果の持続性や追加接種の有効性は評価されていない。今回は、5-11歳の小児のCOVID-19に関連する救急外来または緊急医療(ED/UC)受診に対するBNT162b2の2回および3回投与の有効性を評価した。
 
方法
 Kaiser Permanente Southern California(KPSC)医療システムにおいて、ネガティブケースコントロール研究を用いて、ワクチン効果(VE)を評価した。2021年11月1日から2022年9月2日までにED/UCを行い、急性呼吸器疾患(ARI)の診断を受け、SARS-CoV-2のRT-PCR検査を受けた5~11歳の小児を対象とした。SARS-CoV-2症例は、ED/UC受診日(14日以内)に検査陰性の対照と1:1でマッチングされた。
 
結果
 対象の小児患者は、11,582例であった。1992/11,582例(17.2%)がSARS-CoV-2陽性と判定された。1992例の陽性者のうち、260例(13.1%)がデルタ株の流行期、1732例(86.9%)がオミクロン株の流行期であった。オミクロン期のうち、801例(46.3%)、132例(7.6%)、347例(20.0%)は、それぞれBA.1(12/27/21-28/22)、BA.2/BA2.12.1(4/12/22-5/25)、BA.4/5(7/16/22-9/2)の流行時期であった。残りの症例(452例、26.1%)は、流行の移行期に発生した。解析した症例3984例のうち825例(20.7%)がBNT162b2の2回接種を受け、49人(1.2%)が3回接種を受けていた。年齢中央値は7歳であった。
 デルタ株に対するBNT162b2 2回投与のワクチン有効性(VE)は、85%[95%CI:59~95]だった。オミクロン株に対するVEは、2回目接種後3ヶ月未満で60%[47-69]、3ヶ月以上で28%[8-43]であった。3回目接種後のVEは、77%[53-88]であった。
 
結論
 BNT162b2の2回接種は,5~11歳の小児において,投与後数カ月間,デルタ株およびオミクロン株に有効であると考えられた。しかし、オミクロン株に対しては、2回接種後にワクチン効果の減退が観察され、追加接種が必要と考えられる。追加接種により、オミクロンに対しても効果は80%近くまで回復した。