B群溶血性連鎖球菌(GBS)は、新生児に菌血症や髄膜炎を起こす菌です。新生児が出生の時に母が保菌するGBSを保菌してしまうと、GBS感染症を発症することがあるので、最近では、保菌している母親に対して、出産時に抗菌薬投与することが一般的に行われます。
しかし、検査で陰性でも保菌していたり、新生児が退院後に家族などから保菌するケース(late onset disease)は予防できませんでした。
今回の研究は、妊娠中にGBSに対するワクチンを接種して、母親にGBSに対する抗体を獲得させ、胎児に抗体を移行させることで、出生した児のGBS感染症を予防しようとするものです。GBS感染症自体が、それほど頻度が高い病気ではないので、病気の予防を示すことはなかなか難しく、病気を予防レベルまで移行抗体が上昇することを示しています。
元気に生まれた赤ちゃんが侵襲性GBS感染症になって、後遺症を残す例もたくさん見てきていますので、早く実現してほしいワクチンです!!
要点
・侵襲性GBS感染症になった患者と対照群で、GBSに対する抗CPS抗体を比較すると、0.184~0.827μg/mlの濃度があれば、リスクが75~95%減少させることが分かった。
・6価GBSワクチンを妊婦(妊娠27−36週)に接種すると、母親の抗CPS抗体が上昇した。
・製剤や血清型によるが、新生児の57−97%が、0.184μg/ml以上の抗CPS抗体を獲得した。
Potential for Maternally Administered Vaccine for Infant Group B Streptococcus. N Engl J Med. 2023 Jul 20;389(3):215-227. doi: 10.1056/NEJMoa2116045. PMID: 37467497.
背景
新生児における血清型特異的抗莢膜ポリサッカライド(CPS)IgGは、B群溶血性連鎖球菌(GBS)感染症のリスクを低下させることが、これまでの研究により報告されている。乳児期早期の侵襲性GBS感染症を予防するため妊婦に接種するワクチンとして、6価血清型特異的抗莢膜多糖類(CPS)・交差反応性物質197複合糖質ワクチン(GBS6)が開発された。
方法
現在進行中の妊婦を対象とした第2相プラセボ対照試験では、各種GBS6製剤の単回投与の安全性と免疫原性を評価し、母体から移行した抗CPS抗体を解析した。同じ集団で並行して実施された血清疫学研究では、生後89日までの侵襲性GBS感染症のリスク低下と関連する血清型特異的抗CPS IgG濃度を評価し、推定される防御閾値を定義した。
結果
自然に獲得された抗CPS IgG濃度は、血清疫学調査においてGBS感染症のリスク低下と関連していた。リスクを75~95%減少させるIgG閾値は0.184~0.827μg/mlであった。GBS6に関連する安全上の問題は、母親と出生児において観察されなかった。有害事象の発生率は、母親・出生児ともに2群間で同程度であった。リン酸アルミニウムを含むGBS6を投与された群では、より多くの局所反応が観察された。児で最も多かった重篤な有害事象は、軽度の先天異常(臍ヘルニア、先天性皮膚メラノサイトーシス)であった。GBS6は、全ての血清型に対して母親の抗体反応を誘導し、母親と児の抗体比は、約0.4~1.3であった。0.184μg/ml以上の抗CPS IgG濃度を示した児の割合は、血清型と製剤によって異なり、最も免疫原性の高い製剤に対して57~97%の乳児が反応を示した。
結論