小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

Pott's puffy tumor:稀だけど知っておきたい副鼻腔炎の合併症

 Pott's puffy tumorは、見た目が印象的な疾患です。↓こちらに成人の症例報告があります。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkotokeibu/125/5/125_892/_pdf/-char/ja

 多くは、副鼻腔炎が進行して、前頭骨が骨髄炎になり、皮下膿瘍を形成し、前額部に腫脹が出現します。ここまで進行する副鼻腔炎は稀ですが、国内でも報告はいくつもあります。
 300例以上の症例のまとめになります。発熱の頻度が思ったより低い(成人で17%、小児で29%)ことは驚きました。ひと目で診断できるので、知っておくと役に立つかもしれません。(Pott's puffy tumorかと思ったら、白血病だったという症例もあります。)
 
Pott's puffy tumor: A comprehensive review of the literature.
Am J Otolaryngol. 2022 Sep-Oct;43(5):103529. 
 
目的
 Pott's puffy tumor(PPT)は、骨膜下膿瘍を伴う前頭骨の骨髄炎が特徴のまれな疾患である。PPTの報告例は近年増加している。PPTに関するこれまでのレビューは、主に小規模な後方視的ケースシリーズや症例報告の形が多かった。本研究の目的は、小児および成人において、PPTの管理に必要な臨床症状、診断、原因菌、治療について、包括的なレビューを提供することである。
 
方法
 1950年1月から2022年1月30日までに発表された研究について、MEDLINE、PubMed、Embaseデータベースを検索した。PPTの全症例を検討し、特に治療について記述された報告に焦点を当てた。318例(216論文)と、当施設の成人症例3例の合計321例を対象とした。
 
結果
 PPTは、未治療の鼻副鼻腔炎、頭部外傷、薬物使用、歯性感染に起因することが多い。典型的には複数菌感染で、嫌気性菌が優位である。副鼻腔炎と頭蓋内病変の評価には、CTとMRIの画像診断法が一般的である。治療は、早期かつ積極的なアプローチが、長期に渡る合併症の予防に有効である。PPT患者の外科的管理と臨床転帰との間には有意な関連がある。最近の文献によると、副鼻腔内視鏡手術は、病状の改善を成功させるために不可欠といえる。
 
結論
 PPTは比較的罹患率の高い重要な疾患であるが、臨床症状が多様で、しばしば過小評価され、誤診されることがある。管理には、抗菌薬と外科的介入の両方が含まれる。最適なアプローチの決定には、年齢、内視鏡的副鼻腔手術の既往歴、来院時の頭蓋内病変の有無など、臨床的背景が重要である。治療の成功のためには、個別化された、ターゲットを定めた、多職種によるアプローチが重要である。