小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

医学部生の髄膜炎菌保菌率は低い

 髄膜炎菌は、髄膜炎や敗血症を起こすことがある細菌ですが、日本で見ることは非常に少ないです。とはいえ、宮崎県の高校の寮でアウトブレイクが起きたり、日本には無縁というわけではありません。特に、軍隊や学生寮など、多くの人が共同生活する場でアウトブレイクすることがあります。
 
 今回紹介するのは、自治医大学生寮の学生に、髄膜炎の保菌率を調査したものです。2回実施しており、0.4%と2.1%と非常に少ない保菌率でした。しかも、莢膜を持たない株なので、病原性も高くないと思われます。
 
Carriage Rate and Characteristics of Neisseria meningitidis among Dormitory Students. Jpn J Infect Dis. 2021 Sep 22;74(5):487-490.
 日本では最近、学生寮髄膜炎感染症アウトブレイクが報告されている。しかし、健常者における髄膜炎菌の保菌実態についてはほとんど知られていない。本研究の目的は、学生寮に居住する医学部生における経時的な保菌率およびNeisseria meningitidis株の特徴を調査することである。調査は、2018年11月から2019年1月にかけて、自治医大学生寮の1年生から3年生(N=376)を対象に2回実施した。2回の調査の結果、保菌率は0.4%(257名中1名)、2.1%(再参加者90名を含む97名中2名陽性)であった。2ヶ月間の調査期間中、特定の菌株の伝播や持続は観察されなかった。喫煙(1回目3.0%[6/202]、2回目5.2%[4/77])、週1回以上のパーティー参加(1回目4.3%[11/257]、2回目2.1%[2/97])など感染リスク行動の履歴を持つ学生は少数であった。2株は無莢膜株で、参加者は無症状保菌者であった。
 
 
 昨年には、国立感染症研究所から、侵襲性髄膜炎感染症発生時対応ガイドラインも出ており、感染対策に関係する方は、少し目を通しても良いと思います。