日本の結核有病率の低下とともに、乳幼児の結核は激減しています。個人的にも、乳幼児の活動性結核は2例くらいしか見たことありません。
一方で、BCG接種後1週間以内に、接種部位が発赤したり化膿したりする現象を、コッホ現象といい、結核感染を示唆する所見です。個人的な経験ですが、ここ数年、このコッホ現象のために紹介される例が増加しています。
以下のようなフローチャートがあり、多くは、結核感染ではないのですが、なぜコッホ現象が起きるのか、不思議でした。一つの可能性が、非結核性抗酸菌(NTM)による感作です。
NTM患者さんは国内でも増加しており、乳児期にNTMに曝露され、感作されることで、軽いコッホ現象が起きてしまうというのは、筋は通っているものの、なかなか証明できませんでした。
日本語の報告ですが、コッホ現象のために結核の精査をしたところ、胃からNTMが検出された症例です。この説を補強する報告で、興味深いです。
Mycobacterium aviumの感作が原因と示唆されたコッホ現象の乳児例
結核 93(5): 397-401, 2018.
症例の概要
生後7ヶ月でBCGを接種した男児。Grade 4(かなり強い)のコッホ現象が見られた。しかし、レントゲン、一般検査で異常なし、QFT陰性であったが、潜在性結核感染症(LTBI)として加療した。胃液培養で、M. avium complexが検出された。INHによる治療を継続した。
結語で筆者らは、以下のように述べている。
胃液培養でM.avium が検出された,コッホ現象を呈し ツ反陽性の7 カ月乳児例を報告した。BCG接種後のコッ ホ現象例の中にNTM の感作が原因となっているものが 含まれている可能性はこれまでにも指摘されていたが, 本症例がその推測の裏付けとなりうると考えられる。BCG 接種後のコッホ現象を機にLTBI と診断された症例が増加し,その中に真の結核感染症が原因でないものが少な からず含まれているのであれば,十分な疫学的調査を実施したうえで,BCG接種時期を早める等の対策を立てる必要があるかもしれない。
現状では、強いコッホ現象が見られた場合には、たとえ、結核菌が検出できなくとも、LTBIとして治療するしか無いが、実は、NTMによるコッホ現象が含まれる可能性がある。