バンコマイシンとテイコプラニンは、主に耐性Gram陽性球菌(MRSAなど)の感染症に使用する薬剤です。どちらも、グリコペプチド系の薬剤になります。テイコプラニンは米国で販売されていないため、臨床使用成績などのエビデンスはバンコマイシンの方が豊富です。それ以外にも、血中濃度が院内で測定できるなどの理由で、バンコマイシンを優先的に用いることが多いです。しかし、テイコプラニンは、1日1回投与で良く、バンコマイシンの代替薬として、日本やヨーロッパでは用いられています。
要点
・テイコプラニンの副作用は、皮疹と薬剤熱が多い。
Incidence of teicoplanin adverse drug reactions among patients with vancomycin-associated adverse drug reactions and its risk factors
Kim BK, et al. Korean J Intern Med. 2020; 35: 714.
背景と目的:
テイコプラニンは、β-ラクタム耐性グラム陽性菌による感染症の治療において、バンコマイシンの代替品として使用される。バンコマイシンとテイコプラニンはともに、過敏反応を含む副作用(ADR)の発生率が比較的高い。しかし、テイコプラニンとバンコマイシンの交差反応に関するデータは限られている。本研究では、テイコプラニンのADRの発生率およびバンコマイシンとテイコプラニンの交差反応の危険因子を検討した。
方法:
2006年1月1日から2015年12月31日までの間に、韓国の1医療機関で新規にテイコプラニンが投与された免疫不全のない入院患者304人を対象に、テイコプラニンによるADRの発生率を後方視的に分析した。
結果:
304人のうち、テイコプラニン投与前にバンコマイシンによおるADRを経験したのは238人(78.3%)で、テイコプラニンによるADRが発生したのは58人(19.1%)であった。ほとんどが急性腎障害を伴わない過敏反応であった。テイコプラニンによるADRの発生率は、バンコマイシンによるADRを経験したことのある患者で高かった(23.1% vs. 5.3%、p<0.001)。薬物アレルギーの既往歴は、テイコプラニンによるADRの危険因子であった。テイコプラニンによるADRの発生率は、バンコマイシンによるADRで多臓器に症状が出現した患者で有意に増加した。
結論:
テイコプラニンの副作用の内訳
皮疹と薬剤熱が多い
投与歴なし:3.7%, 過敏反応なし:6.0%, 過敏反応あり:25.2%