小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児の血液培養はルーチンで嫌気ボトルも採取するべき?

 血液培養には、好気ボトルと嫌気ボトルがあります。小児では、理論的には嫌気ボトルでしか発育しない「偏性嫌気性菌」による菌血症は少ないので、ルーチンに嫌気ボトルに採取する必要はないと考えられています。嫌気ボトルの使用は、腹腔内感染症(穿孔性虫垂炎とか)などでは推奨されています。

 しかし、実臨床では、好気でも嫌気でも発育するはずの黄色ブドウ球菌大腸菌が、「嫌気ボトルにしか生えない」ということはしばしばあり、個人的にはルーチンで両方のボトルを使用しています。(今はNICUで勤務することはないので、体重が一応十分にある患者さんに対してです。)

 

 本日の論文は、ロサンゼルス小児病院の救急科で実施した血液培養の研究です。強制的に、好気ボトルと嫌気ボトル各1本に血液培養を採取することにしたところ、下記の結果になりました。

・8,978本のボトル(好気・嫌気)のうち、7.1%が陽性。

・好気ボトルの陽性率は7.6%。嫌気ボトルの陽性率は6.6%。

・嫌気ボトルにしか発育しない偏性嫌気性菌は、2本(0.6%)のみ。

・好気・嫌気の両方が陽性になったのは211例(50.0%)。

 好気のみ陽性は、126例(30.0%)、嫌気のみ陽性は、84例(20.0%)

ルーチンで好気・嫌気ボトル両方を使用したほうが良い可能性がある。

  (菌血症の約2割を見落とす可能性がある!)

 

はじめに:

 嫌気性菌は血流感染症(BSI)の重要な原因菌であるが、検出されることはまれである。小児の場合、血液培養で嫌気ボトルと好気ボトルの両方をルーチンで採取するかについては、まだ結論がついていない。
 
方法:
 我々はロサンゼルス小児病院の救急外来(ED)で、血液培養採取時に自動的に好気ボトルに加えて嫌気ボトルでの採血を導入し、偏性嫌気性菌と通性嫌気性菌が検出される頻度の変化を明らかにしようとした。本コホート研究は、2015年8月~2018年7月に実施した。真の病原体および汚染菌が陽性となった血液培養の結果を、血液培養の陽性までの時間(TTP)という副次的転帰とともに評価した。
 
結果:
 計14,180本(実施前5,202本、実施後8,978本)の血液培養が採取され、実施前フェーズでは8.8%(456本)、実施後フェーズでは7.1%(635本)が陽性になった。実施後の635本の陽性ボトルのうち、好気ボトル陽性は7.6%(349本/4,615本)、嫌気ボトル陽性は6.6%(286本/4,363本)であった。211/421(50.0%)セットの血液培養では、好気・嫌気ボトルの両方が陽性になった。セットの内、好気または嫌気ボトルのみ陽性になった例は、それぞれ126例(30.0%)、84例(20.0%)であった。TTPはボトルの種類に関係なく同等であった。真の病原体による血液培養陽性は、汚染菌の血液培養陽性よりも約7時間早く陽性になった。嫌気ボトルを追加することで、2本(0.69%)の偏性嫌気性菌しか検出できなかった。
 
結論
 嫌気ボトルを追加することにより、好気ボトル陰性となった臨床的に重要な病原体を検出することができた。血流感染が懸念される小児患者では両方のボトルをルーチンで使用することが支持される。
 

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主要な菌では、
 黄色ブドウ球菌:47例中5例が嫌気ボトルのみ
 B群溶連菌:10例中2例が嫌気ボトルのみ
 大腸菌:35例中10例が嫌気ボトルのみ
 
 本研究で、嫌気ボトルのみが陽性になったのは80例です(ボトルは84本)。
3例(3.8%)がICUに入院、45例(56.3%)が基礎疾患があり、うち、10例が血液腫瘍あり。2名が細菌性髄膜炎を合併していました。
 好気ボトルのみでは、見落とす可能性が結構あることが、分かります。
 
使用した血液培養システムは、
好気ボトルが、BD Bactec Plus Aerobic/F or Bactec Peds Plus/F
嫌気ボトルが、BD Bactec Lytic/10 Anaerobic/F
Bactec Fx Incubator (BD)に最大5日間培養しています。