小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

キャンピロバクター腸炎の診断にGram染色はどのくらい役立つか?

 下痢の検体をGram染色をした時に、唯一診断をつけられる菌が「キャンピロバクター」です。グラム陰性のラセン菌が見えたら、確定診断です。(つまり特異度のとても高い所見です。)
 しかし、Gram染色の感度はどのくらいなのか?知らなかったので調べてみました。要点:キャンピロバクター腸炎の診断にGram染色を行うと、感度はほぼ90%であり、非常に有効である。
 
Detection of Campylobacter species in faecal samples by direct Gram stain microscopy
Wang H, et al. Pathology. 2004;36(4):343.
 
目的:便中のカンピロバクターの迅速検出にGram染色が有用かを評価する。
 
方法:Gram染色および培養によるカンピロバクターの検出を目的として、下痢便患者の842検体を対象に前向きな検討を行った。
 
結果:84検体の便培養からカンピロバクター(すべてCampylobacter jejuni)が分離された。グラム染色は、培養と比較して、感度89%、特異度99.7%、陽性予測値97%、陰性予測値99%であった。
 
結論:Gram染色は、比較的高い感度と低コストで、迅速に推定結果を出すことができる。カンピロバクター腸炎が多い地域、カンピロバクター培養のための資源が限られている地域の検査室では、Gram染色をルーチン法として採用することを検討すべきである。
 
 
培養陽性
培養陰性
Gram染色陽性
75
2
Gram染色陰性
9
756
合計
84
758
感度:89%
特異度:99.7%
陽性適中率:97%
陰性的中理知:99%