小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児COVID-19で重症化する患者の特徴

 新型コロナも、オミクロン株の派生型が流行するようになり、患者数が増えるものの、小児の重症化は少ないように感じます。特に、多系統炎症性症候群(MIS-C)はどこに行ってしまったの?というくらい見ていません。
 こんな状況でも、COVID-19が重症化して入院してくるのは、基礎疾患(特に重症心身障害児)があるお子さんたちです。もともと、風邪を引いただけでも、呼吸不全になったり、重症な肺炎を起こす人たちです。
 英国からPICUに入るくらい重症化したコロナの症例のまとめが出ました。基礎疾患(特に神経系)があると、重症化率は高く、注意が必要です。この患者層が積極的にワクチンを打ってほしいと思います。
 
要点
・感染者数あたりの入院数は、パンデミック2年目以降、減少した。
・PICUに入室するような重症化も、オミクロン株流行以降は減少している。
・内科的合併症、特に神経疾患を持っていると、重症化率は高い。
 
Pediatric Hospitalizations and ICU Admissions Due to COVID-19 and Pediatric Inflammatory Multisystem Syndrome Temporally Associated With SARS-CoV-2 in England.
JAMA Pediatr. 2023 Jul 31;177(9):947–55.
 
はじめに
 小児におけるSARS-CoV-2感染後の重症化リスクが、新たな変異型によって変化したかを調査することは、公衆衛生上の対策や臨床上の方針に情報を提供するために不可欠である。
 
目的
 COVID-19パンデミックの最初の2年間における小児のCOVID-19または小児多系統炎症性症候群(PIMS-TS)による入院に関連するリスク因子、経時的変化を検討すること。
 
方法
 本研究は、英国において0~17歳の小児を対象に、2020年2月1日から2022年1月31日まで実施した。SARS-CoV-2感染後に入院した症例が対象になった。全国規模の医療機関の活動データを、SARS-CoV-2検査、SARS-CoV-2ワクチン接種、小児集中治療室(PICU)入室、死亡に関するデータとリンクさせた。この期間にCOVID-19またはPIMS-TSで入院した小児および青年を対象とした。出産のための入院・予定入院・外傷に関連した入院は除外した。基礎疾患、患者背景、入院時期に優位であったSARS-CoV-2亜型(野生株、アルファ株、デルタ株、オミクロン株)を検討した。COVID-19またはPIMS-TSによるPICU入室および入院後28日以内の死亡を主要アウトカムとした。
 
結果
 緊急入院となった1,125,010例中、COVID-19による入院が10,540例、PIMS-TSによる入院が997例であった。SARS-CoV-2感染者数あたりのCOVID-19およびPIMS-TSによる入院数は、パンデミック2年目に減少した。入院した10,540人の小児のうち、448人(4.3%)がPICU入院を必要とし、野生株では1635人中162人(9.9%)、アルファ株では1616人中98人(6.1%)、デルタ株では3789人中129人(3.4%)、オミクロン株では3500人中59人(1.7%)であり、オミクロン株で有意に減少した。COVID-19により入院後28日以内に死亡した小児は48人、PIMS-TSで死亡した小児はいなかった。小児における重症COVID-19のリスクは、SARS-CoV-2の変異型にかかわらず、内科的合併症・神経障害と関連していた。SARS-CoV-2への曝露歴またはワクチン接種歴のある小児を除外しても、結果は同様であった。
 
結論
 COVID-19パンデミックの最初の2年間のデータを対象としたこの研究では、英国の小児のSARS-CoV-2感染による重症化リスクは低かった。複数の医学的問題、特に神経障害を有する小児の重症化リスクは高く、さらなる変異株が出現した際には公衆衛生対策の中心となるべきである。