小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

新型コロナ患者の母児同室は安全か?

 小児の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者を受け入れる時、保護者が同室するのかは大きな問題になります。特に年少児では、生活が自立していないため、頻回のオムツ替え、授乳などが必要で、(特に隔離室に入ってしまうと)医療スタッフだけでは十分なケアができない可能性があります。また、子供の精神面でも、親との分離は良くないので、なるべく、入院には保護者の付き添いが望ましいです。
 一方、付き添う保護者が、まだ新型コロナウイルスに感染していない場合(discordant pair)、同じ部屋で過ごすことで、感染のリスクが生じます。本来、感染せずに済んだ方が感染して、重症化する可能性もあります。
 現場ではやむを得ず同室してもらいますが、感染リスクがどの程度かを知りたいと思っていました。今回紹介する研究は、イタリアで2020年4月〜2021年2月まで(デルタ株もオミクロン株も出現する前)に入院したdiscordant pair 12組の観察研究です。
 
要点
・Discordant pairの親子(子陽性、親陰性)12組が入院した。
・病室は、陰圧室ではない個室で、広さは17平米。
・保護者は、マスク着用、手洗い、環境清拭を行った。
・入院中・退院後も含めて、新型コロナウイルスに感染した保護者はいなかった。
 
No Spread of SARS-CoV-2 From Infected Symptomatic Children to Parents: A Prospective Cohort Study in a Controlled Hospital Setting 
Front Pediatr . 2021 Aug 3;9:720084.
 
はじめに
 新型コロナウイルスSARS-CoV-2)の小児から成人への感染率については、研究により条件が異なるため、不明である。
 
方法
 当院の病棟に入院したSARS-CoV-2陽性の小児と陰性の保護者12組について、SARS-CoV-2感染伝播が発生したかを調査した。病院の専用病室では、入院期間中に保護者と小児の濃厚接触は継続していた。
 
結果
 SARS-CoV-2検査が陽性の小児136名(平均年齢3.6±4.9歳,中央値1,IQR 0~6.2,範囲0.1~17)が、保護者と一緒に入院した。そのうち、12/136人(8.8%,平均年齢6.1±5.3歳,中央値4.5歳)は、家庭で児と濃厚接触していたにもかかわらず、入院時に検査陰性であった保護者が付き添った(discordant pair)。3例は、年少のため、母親がすべてのケアを行うことが必要で、うち1人は母乳栄養であった。陽性症例との接触期間の平均は20.5±8.2日間であった。SARS-CoV-2に感染した小児から保護者への感染伝播は確認されなかった。
 
結論
 小児から成人への感染は、長期間の濃厚接触にもかかわらず、限定的であるとの仮説が成り立つ。これらのデータは、学校再開について安心感を与えるとともに、今後、同じ条件下でSARS-CoV-2の変異株でも調査を行う必要がある。

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov