小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

ワクチン接種によりMIS-Cは減る(デンマークのコホート研究)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患後2−6週間で発症する小児多系統炎症性症候群(MIS-C)という病態があります。川崎病に似た症状を呈しますが、ショックになるリスクが高く、ICUでの管理が必要になることが多く、死亡例もあります。
 オミクロン株の出現により、mRNAワクチンが感染を予防する効果は低下してしまいましたが、重症化の予防効果は十分あります。
 今回デンマークコホート研究で、小児にワクチンを接種すると、MIS-Cの発症が低下することが示されました。
 ワクチンは、「感染を予防しない=意味がない」と短絡的に解釈するのは正しくないです。まだ、確固たる研究では示されていないかもしれませんが、「オミクロン株に対しても、重症化予防、合併症予防、感染拡大の予防」など十分に効果が期待できると考えます。
Risk and Phenotype of Multisystem Inflammatory Syndrome in Vaccinated and Unvaccinated Danish Children Before and During the Omicron Wave 
JAMA Pediatr . 2022 Jun 8;e222206. doi: 10.1001/jamapediatrics.2022.2206.
 
はじめに
小児多系統炎症症候群(MIS-C)は,小児におけるSARS-CoV-2の重大な合併症である。 オミクロン株の流行期に、ワクチン接種者と非接種者において、MIS-Cを発症するリスクを推定することを目的とした。MIS-C発症のリスクと臨床的特徴をオミクロン株流行以前と比較した。
 
方法
 本コホート研究は、デンマークの全小児科入院施設(18ヶ所)で、0歳から17歳のMIS-Cの患者を前向きに調査した。オミクロン株が95%以上を占めるようになった2022年1月1日から2月1日の間にSARS-CoV-2に感染し、2022年1月1日〜3月15日にMIS-Cと診断された患者を研究の対象とした。コホート研究の STROBE 報告ガイドラインに従った。オミクロン株流行時のMIS-Cと以前のMIS-Cの頻度を比較するために、既報のデータを使用した。
SARS-CoV-2に感染した小児100万人あたりのMIS-Cの発症リスクを算出した。感染者数は、デンマークの COVID-19 サーベイランス登録から得られた感染者数の1.5~2.1 倍を適用し、推定した。
 
結果
 267086人のワクチン接種者を含む、583618人の小児が感染したと推定された。うち、1人のワクチン接種者と11人のワクチン非接種者がMIS-Cに罹患していることが確認された。再感染者と推定される31 516人の中には、MIS-C患者はいなかった。オミクロン株感染後のMIS-Cは、ワクチン接種者で有意に低かった(RR, 0.11; 95% CI, 0.01-0.83; P = .007)。オミクロン株感染後のワクチン未接種者のMIS-Cリスクは、デルタ株(RR, 0.12; 95% CI, 0.06-0.23; P < .001) および野生株(RR, 0.14; 95% CI, 0.07-0.29; P < .001)に比べて、有意に低かった。
 
考察
オミクロン株感染後のMIS-Cのリスクは、過去のSARS-CoV-2亜型と比較して大幅に低かった。オミクロン株は、免疫逃避が起こりやすく、過剰な炎症反応が起こりにくい可能性がある。オミクロン株感染後のMIS-Cのリスクは,ワクチン接種者で有意に低く、オミクロン以前の変異株と比較して大幅に減少した。ワクチン接種者におけるブレークスルー感染後の MIS-C のリスクは低い。
 
ウイルス
MIS-C症例数
感染者100万人あたりの発症率 (95%CI)
オミクロン株
 
 
ワクチン未接種
11
34.9 (17.4-62.4)
ワクチン接種済
1
3.7 (0.1-20.9)
デルタ株
 
 
ワクチン未接種
51
290.7 (216.4-382.2)
ワクチン接種済
1
101.5 (2.6-565.2)
野生株
 
 
ワクチン未接種
23
245.6 (155.7-368.5)

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov