脳性麻痺や重症心身障害児のような、神経筋疾患を持つお子さんは、ちょっとした風邪をきっかけに呼吸状態が悪化することがあり、小児科診療をしているうえで、とても慎重に評価・治療することが必要です。
当然ながら、COVID-19パンデミックが始まってから、保護者の方のご心配は強く、私の外来でも「もしこの子かコロナに感染したら、どうなるんですか?」という質問をよくいただきました。
これまでは、あまりエビデンスが無いものの、高リスクに分類されるので、重症化するリスクも高いかもしれないとお話していました。
今回紹介する論文は、スペインからの報告です。29例の神経筋疾患を有する小児COVID-19患者さんの臨床的な特徴です。比較的安心できるデータが出ました。
要点
・神経筋疾患があっても、若年者であれば、重症化しない可能性が高い。
・ただし、SMA I型と1−3歳は要注意
COVID-19 in children with neuromuscular disorders
J Neurol . 2021 Sep;268(9):3081-3085.
目的
神経筋疾患を有する小児患者は、COVID-19の流行当初から特に脆弱な集団であると想定されてきた。しかし、神経筋疾患患者のCOVID-19合併症や死亡率が一般集団より高いという証拠はない。本研究の目的は、神経筋疾患の小児患者におけるCOVID-19の臨床的特徴および転帰を明らかにすることである。
方法
スペイン小児神経学会(SENEP)の神経筋ワーキンググループにより、神経筋疾患と確定診断された患者を対象に、COVID-19症例レジストリ作られた。神経筋疾患の特徴、ベースラインの状態、COVID-19の経過に焦点を当て情報を収集した。
結果
SARS-CoV-2に感染した小児神経筋疾患患者29名のうち、重篤な合併症は1例も観察されなかった。臨床的に89%が無症状または軽症、10%が中等症例に分類された。COVID-19のが比較的重症となりうる患者は、SMA1型と、年齢が1歳から3歳であった。
結論
神経筋疾患のある小児におけるCOVID-19の経過は、予想されたほど重篤ではない可能性がある。若年者が重症化しにくいという特徴が、呼吸能力の低下や咳嗽反射が弱いなどの特徴を有する神経筋疾患の患者でも見られる。この知見が他の慢性疾患を持つ小児に一般化できるかどうかについては、さらなる研究が必要である。