小児感染症科医のお勉強ノート

群馬県立小児医療センターで感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

小児多系統炎症性症候群(MIS-C)COVID-19と神経学的症状

 新型コロナウイルスに感染後に、様々な神経学的症状を呈することが報告されています。味覚障害や嗅覚障害は有名ですが、脳症、ギラン・バレー症候群脳梗塞等です。小児の新型コロナウイルス感染に関わる神経学的症状をまとめた論文がありましたので、ご紹介します。
 
要点
・小児の新型コロナウイルス感染症全体の44%が、何らかの神経学的症状を訴える
・頭痛と急性脳症が多い症状
・神経学的症状を呈する症例は、もともと神経疾患を有している割合が高い、PICU入室率が高い
*個人的には多くのCOVID-19を見てきていますが急性脳症の経験はないので、急性脳症が2番目に多い症状とは思えません。今回、参加した施設は、全米の大学病院・小児病院が中心であり、重症例が集中していた可能性があります。
 
Prevalence and Risk Factors of Neurologic Manifestations in Hospitalized Children Diagnosed with Acute SARS-CoV-2 or MIS-C
Pediatr Neurol . 2021 Dec 28;128:33-44.
 
はじめに
 新型コロナウイルスSARS-CoV-2)感染症(COVID-19)または小児多系統炎症性症候群(MIS-C)で入院した小児における神経学的症状の頻度、初期の影響、および危険因子を明らかにすることを目的に、本研究を実施した。
 
方法
 2020年1月から2021年4月の間に、SARS-CoV-2検査陽性またはSARS-CoV-2関連疾患の臨床診断を受けて入院した18歳未満の小児を対象として、神経学的症状を呈した症例の多施設共同横断的研究である。神経学的症状のリスク因子を特定するための多変量ロジスティック回帰分析を行った。
 
結果
 1493人の患者のうち、1278人(86%)がCOVID-19、215人(14%)がMIS-Cと診断された。全体の44%(COVID-19の40%、MIS-Cの66%)が、1項目以上の神経学的症状を呈した。COVID-19と MIS-C の診断を受けた症例に最も多く見られた神経学的所見は、頭痛(16%、 47%)、急性脳症(15%、 22%)であった。神経学的症状を呈した症例は、集中治療室(ICU)での治療を必要とする傾向が強かった(51% vs. 22%)。多変量ロジスティック回帰では,神経症状を呈した症例は、年齢が高く(オッズ比[OR]1.1,95%信頼区間[CI]1.07~1.13)、MIS-CとCOVID-19の両方に罹患している割合が高かった(OR 2.16,95%CI 1.45~3. 24)。神経疾患および代謝疾患の既往症(OR 3.48、95%CI 2.37~5.15、OR 1.65、95%CI 1.04~2.66)、咽頭痛(OR 1.74、95%CI 1.16~2.64)、腹痛(OR 1.43、95%CI 1.03~2.00)を有する割合が高かった。
 
結論
今回の多施設共同研究では、SARS-CoV-2に関連する疾患で入院した小児の44%が神経学的症状を呈し、その症状はICU入室や既存の神経学的疾患と関連していた。
 
 
COVID-19
MIS-C
頭痛
16.4%
46.5%
急性脳症
15.1%
22.3%
痙攣
8.5%
3.3%
脱力
7.0%
9.3%
めまい
5.4%
12.1%
嗅覚障害
4.0%
3.7%
3.4%
5.1%
せん妄
3.0%
2.3%
視力障害
2.3%
3.7%
小脳失調
2.2%
1.4%
しびれ
2.0%
0.5%

 

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov